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<アラン視点>
俺は生まれた時から勇者だった。母さんは、すぐに俺が勇者だと気がついたという。なぜなら、俺の胸元には、勇者の証である剣のような痣があったからだ。
でも、勇者に生まれたからといって両親は俺のことを厳しく育てたりもせず、小さいが穏やかな村で愛情たっぷりに育ててくれた。
「この子が自分から言い出すまで、勇者であることは話さなくても良いでしょう」
母さんと父さんは、そう話し合ったらしい。運命に囚われず、俺が何になりたいかを優先してくれたのだ。
俺は、小さい頃から魔法能力も戦闘能力も高く、他の子とは違うと薄々感じていた。両親は俺に、強い力があるのはそれだけ人を助けられるということで、その力は決して暴力に使わないよう教えてくれた。
そのおかげで、俺は伸び伸び成長できたし、この力のことを嫌いにならなくて済んだ。
大きくなったら、この力を使って人を助けたい。
勇者であると知らなくても、俺は自然とそう考えるようになった。
…しかし、この思いを両親に伝える前に、その事件は起こった。
俺の住んでいた村がモンスターに襲われ、全滅したのだ。
生き残ったのは、俺と妹だけ。でも、その妹とも、生き別れてしまい、今もちゃんと生きているのか分からない。その時のことは、ずっと忘れることができない。俺が、俺があの時、村を離れていなければ──
──
その日は、村で風邪が流行っていたため、よく効く珍しい薬草を取りに、俺はちょっと遠い所まで1人で出かけていた。
喜ぶ村の人の顔が思い浮かび、俄然やる気が出た。…これから起こることも知らずに。
帰ってきて目にしたのは、村だったはずの所に広がる真っ赤な火の海だった。
「…そんな…!父さん母さん!アンナ!」
俺は必死に水魔法を唱え続けた。しかし、そんなものでは火の勢いは収まらない。
その時、微かに声がしたのだ。俺の家の方からだった。アンナ…!
急いで向かうと、崩れた家のちょうど空いた隙間に、アンナがいた。周りが濡れていて、まるで今まで水に守られていたように、アンナだけは無事なようだった。アンナは魔法をまだ使えない。でもなぜアンナの周りには水があったのか。この疑問は、頭の隅にずっと残ることとなった。
「…!お、お兄ちゃん!」
アンナはずっと泣いていたようだった。俺は、すぐアンナを安全な所まで運ぶと抱きしめた。
「何があったんだ?父さんと母さんは?」
「…みんな、みんな倒れちゃったの。たくさん、モンスターが襲ってきて…それで…ひっく」
…村で生き残ったのは、アンナだけだった。
俺は、目の前が真っ赤になって、初めて自分の中から湧き出る激しい怒りを感じた。
誰かが、モンスターを差し向けたのがすぐ分かった。モンスターは、普通集団で襲うようなことはしない。暴走して操られたモンスターだけがそのような行動をする。
「アンナ、ここで少し待っていて。他に人が居ないか探してくる」
他にも助けられる人がいないか、一縷の望みをかけ、俺は妹をそこに残したまま、また村に戻ってしまった。それがいけなかった。
…全壊してしまった村で他に人が居ないことを悟った後戻ると、妹はこつぜんと姿を消していたのだ。
それからのことは、記憶が曖昧だ。気づくと、旅の途中で通りかかり助けに来た人たちがそばにいて、昔会ったことがある、友達のジャックが、俺を抱きしめて泣いていた。全てがなくなった村の中で、俺はずっと立ち尽くしていたらしい。
「アラン、俺と一緒に『ミッドシティ』へ行こう。そんで、いつか冒険者になって、魔王を倒し、アンナのことも探すんだ!」
「魔王…?これは…魔王がやったことなのか…?」
ジャックは、いつも朗らかだったアランの虚な表情を見て、苦しそうな顔をした。
「…そういう噂が出てる。最近、モンスターが凶暴になってきたらしくて、各地で被害があるんだ。それが魔王の仕業なんじゃないかって」
「…そうか」
アランは、渦巻く苦しいほどの思いを胸に、顔を上げた。
「俺、冒険者になる。もうこんな思いをする人がいなくなるように、平和のために戦うよ」
「うん」
こうして、俺はジャックと共に、『ミッドシティ』へ行った。14歳の時だった。
──
俺は生まれた時から勇者だった。母さんは、すぐに俺が勇者だと気がついたという。なぜなら、俺の胸元には、勇者の証である剣のような痣があったからだ。
でも、勇者に生まれたからといって両親は俺のことを厳しく育てたりもせず、小さいが穏やかな村で愛情たっぷりに育ててくれた。
「この子が自分から言い出すまで、勇者であることは話さなくても良いでしょう」
母さんと父さんは、そう話し合ったらしい。運命に囚われず、俺が何になりたいかを優先してくれたのだ。
俺は、小さい頃から魔法能力も戦闘能力も高く、他の子とは違うと薄々感じていた。両親は俺に、強い力があるのはそれだけ人を助けられるということで、その力は決して暴力に使わないよう教えてくれた。
そのおかげで、俺は伸び伸び成長できたし、この力のことを嫌いにならなくて済んだ。
大きくなったら、この力を使って人を助けたい。
勇者であると知らなくても、俺は自然とそう考えるようになった。
…しかし、この思いを両親に伝える前に、その事件は起こった。
俺の住んでいた村がモンスターに襲われ、全滅したのだ。
生き残ったのは、俺と妹だけ。でも、その妹とも、生き別れてしまい、今もちゃんと生きているのか分からない。その時のことは、ずっと忘れることができない。俺が、俺があの時、村を離れていなければ──
──
その日は、村で風邪が流行っていたため、よく効く珍しい薬草を取りに、俺はちょっと遠い所まで1人で出かけていた。
喜ぶ村の人の顔が思い浮かび、俄然やる気が出た。…これから起こることも知らずに。
帰ってきて目にしたのは、村だったはずの所に広がる真っ赤な火の海だった。
「…そんな…!父さん母さん!アンナ!」
俺は必死に水魔法を唱え続けた。しかし、そんなものでは火の勢いは収まらない。
その時、微かに声がしたのだ。俺の家の方からだった。アンナ…!
急いで向かうと、崩れた家のちょうど空いた隙間に、アンナがいた。周りが濡れていて、まるで今まで水に守られていたように、アンナだけは無事なようだった。アンナは魔法をまだ使えない。でもなぜアンナの周りには水があったのか。この疑問は、頭の隅にずっと残ることとなった。
「…!お、お兄ちゃん!」
アンナはずっと泣いていたようだった。俺は、すぐアンナを安全な所まで運ぶと抱きしめた。
「何があったんだ?父さんと母さんは?」
「…みんな、みんな倒れちゃったの。たくさん、モンスターが襲ってきて…それで…ひっく」
…村で生き残ったのは、アンナだけだった。
俺は、目の前が真っ赤になって、初めて自分の中から湧き出る激しい怒りを感じた。
誰かが、モンスターを差し向けたのがすぐ分かった。モンスターは、普通集団で襲うようなことはしない。暴走して操られたモンスターだけがそのような行動をする。
「アンナ、ここで少し待っていて。他に人が居ないか探してくる」
他にも助けられる人がいないか、一縷の望みをかけ、俺は妹をそこに残したまま、また村に戻ってしまった。それがいけなかった。
…全壊してしまった村で他に人が居ないことを悟った後戻ると、妹はこつぜんと姿を消していたのだ。
それからのことは、記憶が曖昧だ。気づくと、旅の途中で通りかかり助けに来た人たちがそばにいて、昔会ったことがある、友達のジャックが、俺を抱きしめて泣いていた。全てがなくなった村の中で、俺はずっと立ち尽くしていたらしい。
「アラン、俺と一緒に『ミッドシティ』へ行こう。そんで、いつか冒険者になって、魔王を倒し、アンナのことも探すんだ!」
「魔王…?これは…魔王がやったことなのか…?」
ジャックは、いつも朗らかだったアランの虚な表情を見て、苦しそうな顔をした。
「…そういう噂が出てる。最近、モンスターが凶暴になってきたらしくて、各地で被害があるんだ。それが魔王の仕業なんじゃないかって」
「…そうか」
アランは、渦巻く苦しいほどの思いを胸に、顔を上げた。
「俺、冒険者になる。もうこんな思いをする人がいなくなるように、平和のために戦うよ」
「うん」
こうして、俺はジャックと共に、『ミッドシティ』へ行った。14歳の時だった。
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