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無常なる雨夜
第七話 張慧明、謝霊の頼みで手がかりを集めること
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翌日、私は外に使いに出たついでにフランス租界へと足を踏み入れた。クルグロフ宝石店のあるあたりはイギリス租界との境界が近いこともあってか通りの雰囲気はそう変わらないが、立ち並ぶ店の様子は一目で分かるほど違う。
謝霊には言わなかったが、その実私はクルグロフ宝石店に何度か来たことがある。というのも、今は亡きマダム・クリスティン・フォスターがサー・モリソンと結婚するにあたって上海に渡航することが決まったとき、サー・モリソンは結婚指輪を買う店を決めるために私に上海じゅうの宝石店を回らせたのだ。私は地図に全ての店の情報を書き込んで、その中からサー・モリソンが選んだ店のひとつにクルグロフ宝石店もあった—— 最終的には違う店に決まったものの、クルグロフ宝石店にはその後サー・モリソンとともに何度も足を運んだ。店主のアレクセイ・クルグロフは勤勉な職人だったし、ご夫人もご令嬢も好感の持てる人々だったのをよく覚えている。
私は足早に通りを進んでクルグロフ宝石店の前に来た。薄暗い路地と大通りとの角に立つ宝石店は、硝子張りの陳列窓に木の板で目張りされていた。いつもは精巧な作りの装飾品が並んでいるのに、なんとも異質な雰囲気だ。
あの大雨からすでに五日経っている今、宝石店の窃盗からは一週間以上が経っていることになる——そうぼんやり考えていると、私は後ろから声をかけられた。
しわがれた男の声だったが、何を言われたか全く分からなかった。私が訝しみながら振り返ると、声の主と腕を組んでいる若い女性が揃って目を丸くした。一方の私はこの二人に気付くなりさっさと頭を下げて挨拶した。私に声をかけた男こそがアレクセイ・クルグロフ、隣で腕を組んでいるのはその一人娘のイェヴァ嬢だったのだ。
「ミスター・チャン! お久しぶりですね」
イェヴァ嬢が訛りの強い英語で挨拶を返した——この一家ではイェヴァ嬢しか英語ができないらしく、私とサー・モリソンが指輪探しをしていたときもクルグロフや夫人の言葉を彼女が全て通訳していた。今日もクルグロフ本人は少し会釈をして娘を首で指したきり、私に対しては一言も言葉を発しない。
「フォスター様の件はとても残念でした。モリソン様には心からお悔やみを申し上げます」
「ありがとうございます、ミス・クルグロヴァ」
すると、クルグロフがしわがれた声でイェヴァ嬢に何やら話しかけた。彼女は頷いて私に向き直ると、父が中へどうぞと言っていますと言って私を店内に招き入れた。
表の様子とは裏腹に、店の中は変わらず綺麗に整えられている。クルグロフは奥のカウンターまでまっすぐ私を連れていくと、娘を呼び寄せて話しかけた。
「今日は何の用かと父が聞いています」
「用というほどの用もないないのですが……たまたま近くまで来たので、どうされているのかと思いまして。クルグロフさんも大変でしたね。犯人が早く捕まることを祈っています」
イェヴァ嬢が父親に向かって私の言葉を伝えると、クルグロフはため息とともにかぶりを振る。同時にこぼれたぼやきをイェヴァ嬢が拾い上げ、私に向かって言った。
「でも、もう死んでいるのだろうと。きっと新聞に出ていた人のことを言っているのです、あの川で死んでいた人……」
「范救ですね」
私が言葉を継ぐとイェヴァ嬢はこくこくと頷いた。
「そう、その人。実は私たち、さっきまで警察に行っていたんです、その人が持っていたものを確認してほしいと言われて。……たしかに父が作って、あの夜うちのショーウィンドウから盗まれたものでした。でも私たち、本当にショーウィンドウが割られる音しか聞いていないんです。通りに出たときには誰もいなくて」
「そうでしたか」
私はそう答えると、ふとあることを思いついた——真似事といえば真似事だが、謝霊が私に求めているのだろうという気のする真似事だ。
「……ちなみに、つかぬことをお聞きしますが」
私が意を決して言葉を発すると、イェヴァ嬢は首をかしげて空色の瞳を瞬かせた。
「その前後で見慣れない人物を見たりはしませんでしたか? 誰か、この近辺では見たことのない人物がうろついていたということは?」
クルグロフが娘を見やり、イェヴァ嬢が私の言葉を通訳する。クルグロフ親子はそのまま二人で話し始め、私は早口のロシア語が飛び交うのを聞いていなければならなかった。二人は首をかしげ、縦や横に振り、手ぶりも使って互いの言葉を肯定したり否定したりしてからようやく私に向き直った。
「私も父も見ていません……それに、使用人のような格好の中国人は上海じゅうをうろついています。それこそあなたのように」
そう言われては私も立つ瀬がない。私は「そうですね」と返すと、代わりに盗まれた品々になにか共通点があるかと聞いた。
この問いには親子は揃って顔を見合わせた。クルグロフは息せき切って娘に話しかけ、イェヴァ嬢はそれに食らいつくように内容を教えてくれた。
「盗まれたのはどれも小さいものばかりだったと。ショーウィンドウに飾っていたもの……割られたところに飾っている中には大ぶりな首飾りなんかもあったけど、それは盗まれていなかった。泥棒が持って行ったのはどれも指輪とか、控えめな首飾りとか、そんなものばかりだった。たしかに今日警部さんが見せてくれたものも、派手なものはひとつもありませんでした」
私は帰る道すがら、クルグロフ親子の話と宝石店の様子、それに実際にレスター警部に見せられた盗品を思い返していた。盗まれた装飾品は泥こそ被ってはいたが、意匠や雰囲気はクルグロフ宝石店にあった他の品々とたしかに同じだった。それに、盗まれたものと盗まれなかったものがあるという話――私は女性用の装飾品について詳しいわけではないが、それでも指輪や耳飾りはどれも片手で鷲掴みにできそうな大きさだったし、首飾りも言われてみれば細めのものだった。なにより盗っ人は小ぶりなものは盗ったのに大ぶりなものには目もくれなかったという。宝石泥棒というと大きくて派手なものほど目を付けていそうなものだが、硝子が割られてからクルグロフ一家が降りてくるまでという短い時間で盗みを遂行するために細々したものを盗むに留めたのだろうか?
この時間の短さも気になるところだった。おそらく一家が硝子の割れる音を聞いて目を覚まし、そこから蝋燭に火をつけて階下に降りるまで五分とかかっていないはずだ。陳列窓を割ってから物色していたのでは絶対に一家と鉢合わせていただろうし、どれを盗むかあらかじめ決めていない限り、この速さでの盗みは難しいのではないか。
その後の仕事の間、私は隙あらばこの二件について考えていた――仕事が終わると私は謝霊の事務所に飛んでいき、クルグロフ父子の話とともにこの疑問をぶつけてみた。
謝霊は煙管を口から離してふうと煙を細く吐くと、
「良い線ですね。たしかに今の話を聞く限りでは、范救――あるいは范救と逼安はかなり周到に準備して犯行に及んだのでしょう。それも素早く逃げるという目的のために盗む品を決めて」
謝霊はそこで言葉を切り、煙管を吸ってまた煙を吐いた。
「実は私もアレクセイ・クルグロフとそのご令嬢を見かけましてね。午前中は李舵に掛け合って、盗品のリストと范救が持っていたものを照らし合わさせてもらったのですよ」
私は少しばかり驚いた。彼ら父子とまったく同じ時間帯に謝霊が工部警察に居合わせたとは思いもしなかったのだ。
「では、私に行かせなくてもその場で話を聞けたのでは……」
私が言いかけると、謝霊は首を横に振って煙管を咥える。
「レスター警部がいればそれも叶ったでしょうね。ですが生憎李舵しかいなかった上、私をよく思っていない警察官の方が多いのであまり出過ぎた真似もできないと思いまして」
謝霊は煙をくゆらせながら袖の中をまさぐり、一枚の紙を取り出した――黄味がかった薄っぺらなそれは人の形に切り取られている。謝霊は反対の手で煙管を外して机に置くと、指を二本立てて意識を紙に集中させた。すると不思議なことに、紙がふわりと謝霊の手から飛び出して、古風な事務所をたちどころに少しばかり殺風景な工部警察の一室に変えてしまった。
「父から教わった中でもこれは実に便利な術です。式神に一時的に魂を与えて出来事を記憶させる――短い時間に起きたことならば、こちらが乗り移らなくても疑似的なもので十分記憶してくれます。女人のいる部屋だけは覗くなと脅されましたが、今回は公共の空間ですし、仕事のためなので致し方なしといったところですね」
謝霊が語る間にも、私たちをすり抜けるようにアレクセイ・クルグロフとイェヴァ嬢が見知らぬ警部に導かれて部屋の奥へと歩いていく。私たちが見ている前で、二人は透明な小袋に分けられた装飾品をひとつひとつ観察し、全て自分たちから盗まれたものだと断言した。
『……でも、指輪がひとつ足りないわ』
イェヴァ嬢がふと気づいたように口走り、ロシア語で何か言いながら父親を振り返った。クルグロフは頷いて二言三言発し、イェヴァ嬢がそれを英語に直す。
『ヒスイを使った指輪がここにはないと、父も言っています。たしかにあの晩盗まれたはずなのに、と……』
イェヴァ嬢たちはその後も話を続けていたが、ここで景色が揺らぎ始めた。炉に投げ込まれた紙切れが燃えるように工部警察の風景が消え、謝霊の事務所が姿を現した。
式神が空中で燃え尽きてしまったらしく、私たちの頭上からは焦げた臭いとともに黒焦げになった紙切れがぱらぱらと降ってきた――謝霊はにやりと笑うと、再び煙管を咥えて一息ついた。
謝霊には言わなかったが、その実私はクルグロフ宝石店に何度か来たことがある。というのも、今は亡きマダム・クリスティン・フォスターがサー・モリソンと結婚するにあたって上海に渡航することが決まったとき、サー・モリソンは結婚指輪を買う店を決めるために私に上海じゅうの宝石店を回らせたのだ。私は地図に全ての店の情報を書き込んで、その中からサー・モリソンが選んだ店のひとつにクルグロフ宝石店もあった—— 最終的には違う店に決まったものの、クルグロフ宝石店にはその後サー・モリソンとともに何度も足を運んだ。店主のアレクセイ・クルグロフは勤勉な職人だったし、ご夫人もご令嬢も好感の持てる人々だったのをよく覚えている。
私は足早に通りを進んでクルグロフ宝石店の前に来た。薄暗い路地と大通りとの角に立つ宝石店は、硝子張りの陳列窓に木の板で目張りされていた。いつもは精巧な作りの装飾品が並んでいるのに、なんとも異質な雰囲気だ。
あの大雨からすでに五日経っている今、宝石店の窃盗からは一週間以上が経っていることになる——そうぼんやり考えていると、私は後ろから声をかけられた。
しわがれた男の声だったが、何を言われたか全く分からなかった。私が訝しみながら振り返ると、声の主と腕を組んでいる若い女性が揃って目を丸くした。一方の私はこの二人に気付くなりさっさと頭を下げて挨拶した。私に声をかけた男こそがアレクセイ・クルグロフ、隣で腕を組んでいるのはその一人娘のイェヴァ嬢だったのだ。
「ミスター・チャン! お久しぶりですね」
イェヴァ嬢が訛りの強い英語で挨拶を返した——この一家ではイェヴァ嬢しか英語ができないらしく、私とサー・モリソンが指輪探しをしていたときもクルグロフや夫人の言葉を彼女が全て通訳していた。今日もクルグロフ本人は少し会釈をして娘を首で指したきり、私に対しては一言も言葉を発しない。
「フォスター様の件はとても残念でした。モリソン様には心からお悔やみを申し上げます」
「ありがとうございます、ミス・クルグロヴァ」
すると、クルグロフがしわがれた声でイェヴァ嬢に何やら話しかけた。彼女は頷いて私に向き直ると、父が中へどうぞと言っていますと言って私を店内に招き入れた。
表の様子とは裏腹に、店の中は変わらず綺麗に整えられている。クルグロフは奥のカウンターまでまっすぐ私を連れていくと、娘を呼び寄せて話しかけた。
「今日は何の用かと父が聞いています」
「用というほどの用もないないのですが……たまたま近くまで来たので、どうされているのかと思いまして。クルグロフさんも大変でしたね。犯人が早く捕まることを祈っています」
イェヴァ嬢が父親に向かって私の言葉を伝えると、クルグロフはため息とともにかぶりを振る。同時にこぼれたぼやきをイェヴァ嬢が拾い上げ、私に向かって言った。
「でも、もう死んでいるのだろうと。きっと新聞に出ていた人のことを言っているのです、あの川で死んでいた人……」
「范救ですね」
私が言葉を継ぐとイェヴァ嬢はこくこくと頷いた。
「そう、その人。実は私たち、さっきまで警察に行っていたんです、その人が持っていたものを確認してほしいと言われて。……たしかに父が作って、あの夜うちのショーウィンドウから盗まれたものでした。でも私たち、本当にショーウィンドウが割られる音しか聞いていないんです。通りに出たときには誰もいなくて」
「そうでしたか」
私はそう答えると、ふとあることを思いついた——真似事といえば真似事だが、謝霊が私に求めているのだろうという気のする真似事だ。
「……ちなみに、つかぬことをお聞きしますが」
私が意を決して言葉を発すると、イェヴァ嬢は首をかしげて空色の瞳を瞬かせた。
「その前後で見慣れない人物を見たりはしませんでしたか? 誰か、この近辺では見たことのない人物がうろついていたということは?」
クルグロフが娘を見やり、イェヴァ嬢が私の言葉を通訳する。クルグロフ親子はそのまま二人で話し始め、私は早口のロシア語が飛び交うのを聞いていなければならなかった。二人は首をかしげ、縦や横に振り、手ぶりも使って互いの言葉を肯定したり否定したりしてからようやく私に向き直った。
「私も父も見ていません……それに、使用人のような格好の中国人は上海じゅうをうろついています。それこそあなたのように」
そう言われては私も立つ瀬がない。私は「そうですね」と返すと、代わりに盗まれた品々になにか共通点があるかと聞いた。
この問いには親子は揃って顔を見合わせた。クルグロフは息せき切って娘に話しかけ、イェヴァ嬢はそれに食らいつくように内容を教えてくれた。
「盗まれたのはどれも小さいものばかりだったと。ショーウィンドウに飾っていたもの……割られたところに飾っている中には大ぶりな首飾りなんかもあったけど、それは盗まれていなかった。泥棒が持って行ったのはどれも指輪とか、控えめな首飾りとか、そんなものばかりだった。たしかに今日警部さんが見せてくれたものも、派手なものはひとつもありませんでした」
私は帰る道すがら、クルグロフ親子の話と宝石店の様子、それに実際にレスター警部に見せられた盗品を思い返していた。盗まれた装飾品は泥こそ被ってはいたが、意匠や雰囲気はクルグロフ宝石店にあった他の品々とたしかに同じだった。それに、盗まれたものと盗まれなかったものがあるという話――私は女性用の装飾品について詳しいわけではないが、それでも指輪や耳飾りはどれも片手で鷲掴みにできそうな大きさだったし、首飾りも言われてみれば細めのものだった。なにより盗っ人は小ぶりなものは盗ったのに大ぶりなものには目もくれなかったという。宝石泥棒というと大きくて派手なものほど目を付けていそうなものだが、硝子が割られてからクルグロフ一家が降りてくるまでという短い時間で盗みを遂行するために細々したものを盗むに留めたのだろうか?
この時間の短さも気になるところだった。おそらく一家が硝子の割れる音を聞いて目を覚まし、そこから蝋燭に火をつけて階下に降りるまで五分とかかっていないはずだ。陳列窓を割ってから物色していたのでは絶対に一家と鉢合わせていただろうし、どれを盗むかあらかじめ決めていない限り、この速さでの盗みは難しいのではないか。
その後の仕事の間、私は隙あらばこの二件について考えていた――仕事が終わると私は謝霊の事務所に飛んでいき、クルグロフ父子の話とともにこの疑問をぶつけてみた。
謝霊は煙管を口から離してふうと煙を細く吐くと、
「良い線ですね。たしかに今の話を聞く限りでは、范救――あるいは范救と逼安はかなり周到に準備して犯行に及んだのでしょう。それも素早く逃げるという目的のために盗む品を決めて」
謝霊はそこで言葉を切り、煙管を吸ってまた煙を吐いた。
「実は私もアレクセイ・クルグロフとそのご令嬢を見かけましてね。午前中は李舵に掛け合って、盗品のリストと范救が持っていたものを照らし合わさせてもらったのですよ」
私は少しばかり驚いた。彼ら父子とまったく同じ時間帯に謝霊が工部警察に居合わせたとは思いもしなかったのだ。
「では、私に行かせなくてもその場で話を聞けたのでは……」
私が言いかけると、謝霊は首を横に振って煙管を咥える。
「レスター警部がいればそれも叶ったでしょうね。ですが生憎李舵しかいなかった上、私をよく思っていない警察官の方が多いのであまり出過ぎた真似もできないと思いまして」
謝霊は煙をくゆらせながら袖の中をまさぐり、一枚の紙を取り出した――黄味がかった薄っぺらなそれは人の形に切り取られている。謝霊は反対の手で煙管を外して机に置くと、指を二本立てて意識を紙に集中させた。すると不思議なことに、紙がふわりと謝霊の手から飛び出して、古風な事務所をたちどころに少しばかり殺風景な工部警察の一室に変えてしまった。
「父から教わった中でもこれは実に便利な術です。式神に一時的に魂を与えて出来事を記憶させる――短い時間に起きたことならば、こちらが乗り移らなくても疑似的なもので十分記憶してくれます。女人のいる部屋だけは覗くなと脅されましたが、今回は公共の空間ですし、仕事のためなので致し方なしといったところですね」
謝霊が語る間にも、私たちをすり抜けるようにアレクセイ・クルグロフとイェヴァ嬢が見知らぬ警部に導かれて部屋の奥へと歩いていく。私たちが見ている前で、二人は透明な小袋に分けられた装飾品をひとつひとつ観察し、全て自分たちから盗まれたものだと断言した。
『……でも、指輪がひとつ足りないわ』
イェヴァ嬢がふと気づいたように口走り、ロシア語で何か言いながら父親を振り返った。クルグロフは頷いて二言三言発し、イェヴァ嬢がそれを英語に直す。
『ヒスイを使った指輪がここにはないと、父も言っています。たしかにあの晩盗まれたはずなのに、と……』
イェヴァ嬢たちはその後も話を続けていたが、ここで景色が揺らぎ始めた。炉に投げ込まれた紙切れが燃えるように工部警察の風景が消え、謝霊の事務所が姿を現した。
式神が空中で燃え尽きてしまったらしく、私たちの頭上からは焦げた臭いとともに黒焦げになった紙切れがぱらぱらと降ってきた――謝霊はにやりと笑うと、再び煙管を咥えて一息ついた。
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