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序章
宙の彼方より 2
しおりを挟む「次は何処へ」
光速で移動しながら、青年は少女に尋ねる。
「ふふふ」
灰色の星を離れ、宇宙の闇を彷徨いながら、ふたりは次の星を探していた。少女には何かアテがあるようだが、エフワーはどの星へ向かおうが一向に構わなかった。炎の海に包まれた星も、朝の来ない氷獄のような星も、金色の花が咲き誇る楽園のような星も、彼にとっては全て等しく只の星ひとつであったからだ。
「着いたよ」
そんな時、少女が急に移動をやめた。釣られて青年も立ち止まる。ふたりの眼前には、ひとつの星がゆっくりと自転していた。
「ずっとこの眼で見たかった。青と緑のこの星を」
少女は続ける。
「終着点だ。私の旅、そして数多の命の」
青年は話さない。
「彼等も我々を望んでいる。私の麻酔と、君の執刀」
矢継ぎ早に言葉を重ねていく少女。青年は相槌も忘れ、ひたすら星を見つめ続けた。
「地球」
「チキュウ…」
少女が呟いたその星の名を、そのままエフワーが反芻する。
「さて、長旅で疲れただろう」
「また、私のバイタルの話ですか」
星から向き直った青年の額に、少女は掌をかざして言った。
「おやすみ…」
その日、彗星が降った。月と太陽を除けば星を見たのは何年ぶりだろう。煩く輝くネオンよりも明らかに鮮烈な一線が、静かに夜空へ引かれていった。
「なんだ、あれ…」
どこかに墜落するだろうか。墜落するとしたら、彗星との距離的に日本ではないだろう。
「まあ、なら、問題ないか」
西暦2048年現在、ニューシンジュク。永久エネルギー機関、エターナルサイクラーの発明により日本は著しい経済発展を遂げていた。そして。
世界の大半が死に絶えた『今』。
日本は地球の、唯一残存する国家であった。
序章 完
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