惑星麻酔師 トランペッター

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序章

自転始め運命

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灰色の星を見下ろしながら、白髪の少女は静かに呟いた。
「エフワー君、調子はどうだね」
目配せした先、少女の隣に佇む青年がぽつりと答える。
「破局噴火数 0.16 星表面温度 アベレージ 42   酸素飽和度 16%」
「違う違う、麻酔モニターの調子じゃあないよ」
見た目相応にケラケラと笑う少女。
「疲れてないかい」
「私のバイタルのことでしたか、問題ありません」
純白のワンピースを着ている可憐な少女とは対照的に、青年は傷だらけだ。纏うコートは傷からの鮮血で赤黒く染まっており、元が何色か分からない。青年は自身の背ほどもある巨大なメスをチキと翻し、刃を灰色の星に向けた。
「流石だエフワー君」
少女は、まるで見えない足場があるかのように、宇宙の闇を裸足で歩いていく。
「では、執刀といこう」
「了解しました」
瞬間、少女と青年は一気に星へ加速していく。瞬きをすれば、最早視界に黒は無い。
「我が名はトランペッター!」
突入に伴う衝撃など感じないかのように、少女は高らかに叫んだ。続いて背負う巨大な喇叭を取り出してそれを吹き鳴らす。少女の吐息は鈍い爆音となり、星に大きく響き渡った。

 彼女の喇叭は時間を止める。音が響いた空間の、あらゆる事象が静止する。
「執刀」
彼のメスは心に切り込む。星に生きる人の心、その中に巣食う負の感情…ノイズを消し去り、星の人々の心を浄化していくのだ。彼にとって、それは唯一の生きる意味だった。
「いやあ、面白いなあエフワー君は」
空に浮かんだ少女が笑う。
「本当、彼を雇って良かった」





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