女神さまの尻ぬぐい

プロローグ

巻き込まれた事故

高坂 徹こうさか とおるは急いでいた。
定時になると同時に会社を後にし、娘と約束したホテルへと。

5月17日
55歳の誕生日を迎える徹を食事に誘ったのは娘の瑞貴みずきだった。

1週間前の夜
珍しく娘から電話がかかってきた。

「お父さんもうすぐ誕生日だよね。話したいこともあるから一緒に食事しない？」

高校卒業後、大学受験で家をでてそのまま他県で就職
お盆だとか正月だとか、あまり家に寄り付かずそろそろ30歳を迎えようという娘の今後を少し心配し始めた頃だったし、二つ返事で了承した。

約束したホテルは徹の勤める会社から1時間程
19時までには余裕で間に合うはずであったが、移動中に妻から娘へ今日渡してほしいからと買い物を頼まれたのだ。

前日に言ってくれていればいいものを…

つい、愚痴もでてくるというものだが、ホテルへ向かう途中で買えばいいかと向かった交差点


信号待ちをしていたところに、交差点内で左折指示がでて左折を始めた車と直進車が衝突
はずみで飛ばされた車が自分の方へ向かってくるのが見えた。

「危ない!!!!」

とっさに、同じように信号待ちをしていた目の前の少女をかばった時
全身に強い衝撃を受けた。


その後は、意識を失ったのだと思う。
痛くもなければ、体が重いということも無かった。