女の子を拾ったら毎日楽しくなりました。

山中波音

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5話

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カランカラン………

 扉の音がしたのでエルザは「いらっしゃいませ」っと挨拶をした。来店したのはエルザと同い年ぐらいの女性が1人。女性は店内をざっとみた後、目的の物があったのだろうかある一角で止まりジッと商品を見ている。
 また、来客の訪れる音が度々しそこからは少し慌ただしくなった。




 そろそろお昼時だからだろう。エルザの隣からお腹の音がしたので見ると耳まで真っ赤になり俯いていた。店内はほっこりした雰囲気になった。

「ゴメンね、もうお昼の時間帯ね……お金を使ったことは……あまりないかんじかな…?」

 こっそりと話し掛けたエルザの質問に女の子は真っ赤のお耳からすぐにいつもの色に戻ったので、あまりない、もしくは見たことしか無いのかも知れない…。そう思ったエルザは女の子に銀貨を1枚渡した。

「これで外の露店で食べ物買ってきてくれるかな?銀貨1枚あれば2人分は充分足りるからね?」

 女の子はお金とエルザを交互に見て最後に手を見てぎゅっと握りしめエルザに詰まりながらも「分かった」と返事をしカウンターから出て入り口の扉を開け、チラリとエルザを見てきたので手を振ると女の子はそっと扉を閉めた。
 エルサは一つ小さく息を吐き出しまた作業に戻った。


「ねぇ、エルザ、さっきの女の子誰?」

 麦色の髪を横に三つ編みをし肩からたらして、そばかすが少しある茶色いワンピースを着た女性が話し掛けていた。

「あら、リリカこんにちは。んーそうね、私が(昨日道で拾ってとりあえず)見ている子?」

「……何か重要な事を言ってないセリフね…」

 っと胡散臭そうな顔をして、腰に手を当てちょいちょいっとジェスチャーをしたので耳を向けた。

「昨日エルザが孤児を連れてるのを見たってママが言ってたんだけどその子?」

 っとこそっと聞いてきたので頷いた。

「……ふぅ…どうするの?」

「んー…どうしようかしら?」

「え?何それ、あんたそれ駄目でしょ?……面倒見られないなら孤児院に預けに行きなさいよ」

 っとまたこそっと話すので、首を横に振った。

「あの子が私の元にいたいなら面倒見るわ」

「…何でそこまでエルザがするの?」

「何かね…気になっちゃったのよね」

 っと言ってエルザは微笑んだ。その顔を見たリリカは一つため息をついて呆れた顔で笑った。その後は他のお客さんの会計をしたり、リリカと談話した。その時扉が思い切り開き中にいた人間は入り口を見た。

「はぁはぁ……ねぇ、これ凄いんだけど!!本当に効果あったよ!え、凄いんだけど!!!」

 先ほど2人が話していた女の子はそう言ってエルザの元に走った。手には食べ物を持ち服は汚れていた。

「な、何があったの!?大丈夫!!?怪我は無い?服も破れてるし!!何が……痛いところないの!?」

 エルザは女の子の体を怪我がないか触りつつ服の汚れを払っていく。

「だから凄いんじゃない!?私さっき馬車にひかれたのよ?それなのに怪我がないの!凄いわあんた!!」

「「馬車に!!!?」」

「そうよ、ほら」

 そういってその場でクルリとまわりジャンプしたりした。「ね?」っていって頭を傾けたが2人は開いた口が塞がらない。エルザが作るアクセサリーはお呪い程度でそこまでの効果も無い。高い効果が出るのは魔石の状態が良いか、身につけている者との相性が良いかだ。

「と、とにかく着替えた方が良いわね…リリカ、私、服買ってくるからお店とこの子お願い!」

「え、ちょっと…」

 「待って」と言う言葉を言う前にエルザは扉を開けて出て行った。リリカはため息ひとつついて女の子に向き合った。

「ねぇ、貴方名前はなんて言うの?」

「……」

 女の子は黙って床を見た後手に持っていた食べ物をエルザが作業していた机に置き、女の子が出かけるまで座っていた椅子に座り机にうつ伏せになった。
 リリカまたため息をひとつ付きエルザの代わりにカウンターに入り買い物客の相手を始めた。


「ただいま!!ごめんなさい、遅くなっちゃったかしら?急いだんだけど…あ、リリカありがとう!」

 バタバタとエルザはカウンターに入ってきてカウンター後ろにある扉を開けた。そこにはキッチンとテーブルと机があり、壁面収納にはアクセサリーを作る材料が所狭しと置かれていた。エルザは両手に持っていた鞄をテーブルに置きまたカウンターに戻ってきた。

「リリカ本当にありがとう、助かったわ」

「いいえー、ま、帰るわ、じゃぁね?」

「ええ、ありがとう、じゃあね」

 リリカは女の子を一瞥したのちエルザに手を振って店から出て行き家のある方向に歩いて行った。エルザは女の子と視線を合わせるためにしゃがみ話しかけた。

「本当に痛いところはない?」

 そう聞くと女の子はおずおずと視線を合わしコクリと頷いた。

「そう、よかったわ、昼食買ってきてくれてありがとう。さ、向こうの部屋で着替えてきてくれるかな?鞄に服が何着か入っているから好きなの着てね?」

 女の子はまたコクリと頷き隣の部屋に行き、エルザは「着替え終わったら出てきて?それまで閉めとくわね?」っといい扉を閉めた。

 エルザは店内を見渡し減っているものがないか確認し、在庫を出して並べ、減っているものをリストアップしてカウンターに戻り、机に散らばったアクセサリーの材料を片付けた。
 ちょうど片付け終えた時、隣の部屋の扉が開き女の子が出てきた。女の子が選んだ服は襟元にはレースが付き縦にヒダのついたお花の柄のブラウスに腰で紐を編んで結ぶタイプの茶色いロングスカートは裾にレースがあしらわれている。

「あら、似合ってるね?良かったわ」

 そうエルザが褒めると女の子は顔を赤くして「ありがとう…」っとお礼を言った。エルザは一瞬驚くも笑顔で「どういたしまして」っといい、昼食を摂ろうと女の子を誘った。
 女の子は足早に椅子に座り下を向いた。よく見ると手をぎゅっと握りしめていたので、気に入らなかったのかと思ったが、テーブルにお皿とカトラリーを置き向かいの椅子に座ると、女の子が百面そうしてたまに口角が上がっているので「悪くはなさそうね」っと心で呟き女の子が買ってきた昼食のパンと肉を味付けし焼いてスライスしたものに朝食べた赤い実の食べ物。

 エルザは皿にそれぞれ取り分け食べようとした時、朝に女の子が「いただきます」といって食べ始めたのを思い出し女の子を見ると、女の子はカトラリーに入っていたナイフでパンを半分に切り半分切った上に、肉を置き赤い実をナイフで切り肉の上に置き残り半分のパンを上に置いて「いただきます」と言って食べ始めた。エルザはポカンとした顔で女の子を見て「美味しい?」と聞くと女の子はビクッとした後「…お、美味しいよ」っというのでエルザも女の子の真似をして作り「いただきます」と言って一口食べてみた。

「あら、、本当に美味しいわね!貴方凄いわね!」

 っと笑顔で女の子に言うと、女の子は頬を染め少し口角をあげそれを隠すためかパンを口に頬張った。女の子の反応を見てエルザは微笑んでまたパンを食べ始めた。


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