燦々と灯る

姫萩

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法被の魔法使いと死にたがりの王子

ねぇ!!!

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 ジルバードとの会話を終えてレネを追いかけると、ここらでは目立つ金髪がずっと先にあってシュルガットは慌てた。
「おう、ちょっとまてこんにゃろーめ! オレ様を置いていくな!」
 猛ダッシュで追いついたシュルガットが噛みつくように言うと、レネがハッとした顔で振り返る。
「・・・どうした?」
「なんだ、シュルガットか」
「おめぇ、顔色真っ青だぞ。どうした? 」
「なんか・・・肌がピリピリする。そんなわけないのに」
「どういうことだ?」
 レネは首を振った。
「なんでもない。とっととこれ渡して早く帰ろう」
「お、おう・・・?」
 レネが辛そうに一歩踏み出したところで、背後から声をかけられた。
「こんにちは」
 シュルガットが振り向くと、黒いローブ姿の男が立っていた。深く被ったローブから一瞬覗いた瞳は明るい緑色だった。現代離れしている服装に無意識に後ずさると、何かに勢いよく体を持ち上げられた。
「うえええ?! なんだ! どうしたレネ!」
 シュルガットを掴んだままレネが飛び退くと、2人が立っていたその場所に炎が踊った。
「は、はあああああ?!」
「おや、残念。仕留められませんでしたか」
「ちょ、てんめぇ何しやがるこんにゃろばっきゃろーめ! あぶねぇだろうが!」
「あなたたちを燃やそうとしてるのだから、あぶないのは当たり前ですよ 」
「はあ?!」
「・・・王命で牢屋に入れられたって聞いた」
「ええ、そうです」
「・・・出したのは、王妃か」
 男がにっこりと微笑む。よく出来ましたというように。
「どうやってここまで来た? お前だけの力では渡れな・・・」
 レネがそこで言葉を切った。くしゃりと顔を歪める。
「こっちの魔法使いの力を借りたのか」
「ご名答!」
 ローブ男の言葉と同時に炎の玉が放たれる。それを避けると、炎の玉が電信柱を溶かした。通りがかった民間人が悲鳴をあげた。シュルガットが叫んだ。
「レネ! ここはダメだ! もっと広いところにいかねぇと・・・!」
「裏切り者の言うことを信じろって言うの?」
「裏切ってねぇ!」
 キッとシュルガットがレネを睨む。冷えた目でレネも見返す。
「・・・証拠は?」
「ねぇ!!!」
 レネとシュルガットの間で火花が散った。先に目をそらしたのはレネだった。
「お話は終わりましたか?」
 再び放たれた炎の玉を間一髪で避けて、レネは走り出した。
「レネ! どうする気だ?!」
 レネの真横を疾走しながらシュルガットが尋ねる。それには答えずレネはひたすら足を動かす。
 目の前の四角い建造物・・・幕の内学園へと。


 昌也の執拗なマークから逃れることに成功した優希は、中等部と高等部をつなぐ中庭にいた。普段智やみちると昼食を食べている場所だ。陽当たりのよい場所なのに、意外と生徒がいない知る人ぞ知る隠れスポットである。
「や、やっと逃げられた・・・」
 ホッとした途端、ぐうと腹の音が鳴る。
「・・・お腹すいたあ」
 アモンの弁当を忘れて出て来てしまったことに気づいたのは先程。マンモス校なので学内に学食もコンビニもあるのだが、こちらの手落ちなのでなんとなく買いに行きづらい。どうしたものかと思っていると、よく知った声が耳に飛び込んできた。
「ゆーうーきー!!!」
 茶色い毛を逆立てシュルガットが走ってくる。名を呼ぶ前に、ひしりと優希の足にすがりついてきた。
「ど、どうしたの?! シュー!」
「てぇへんなんだ! レネが!レネが!!」
 慌てて周囲を見回したが幸運なことに生徒はいなかった。念のため、自身の体でシュルガットが隠れるようにして、続きを促した。
「落ち着いて。レネ王子がどうしたの?」
「優希が弁当忘れたから・・・届けようって・・・そしたら、変なやつが・・・火を・・・」
「・・・火?」
「レネのこと知ってるみたいだった・・・」
 シュルガットがそこまで言ったところで爆発音が轟いた。
 音がした方角を見れば、建物から煙がのぼっていた。現在は倉庫として使われている旧校舎だった。

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