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きっと1話

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それは突然のことだ。いきなり目の前に光があふれると俺は見知らぬ場所へと飛ばされていたのだ。

「ま、まさか…っ」

あたりを見回し状況を確認しようとする…が目の前も周りも足元でさえ真っ白で何もない。ごくりと自分の喉が鳴るのが響く…

「異世界…召喚か?」
「ピンポンピンポンピンポーーーン。大正解!!!」

まるでその俺の言葉を待っていたかのように俺の目の前に女の人が現れた。両手を目の前で合わせにこやかに言葉を続ける。

「最近の人たちって理解早くて助かるわ~」
「ま…まじか…っ」
「はい、なのでまずは簡単に説明を……」

俺は思わず両手を握りしめガッツポーズをとる。現代の面倒ごとから抜け出し異世界で自由になるのだ。喜ばずにはいられない。

「もしもーし。聞いていますかぁ~~」
「ん、ああ聞きますともっ」
「ではまずこの世界のことから─────」

目の前の女の人の説明は簡単に言うとこうだった。魔法が使える世界で多種族が共存しているらしい。でもやはり人間の住む町が一番多いんだとか。まあ細かいことはおいおい知っていけばいいだろうというか実はあまり話は聞いていなかった。この世界に呼ばれた理由とか? まあ興味ないしな? 

今一番興味があるのはこれから貰える能力のみだ。魔法でもスキルでもなんでも一つだけ希望するものをくれるそうだ。後なんか色々入っている袋と後なんかまだくれるって言ってたけどもちろん聞いてなかった。貰える能力を今必死に考えているところだから仕方がないだろう?

「時間はたっぷりあるのでじっくり考えてくださいね~」
「いや…決めたぞっ 俺の選んだ能力はこれだ!!」

目の前に表示されているリストの一点を俺は指で示す。そう…この能力があれば異世界できっと快適に過ごせるはずだ。

「ああ~…ではこの能力の説明を─────」

ふふふ…勝った…これで人生勝ち組だ!! なんかまだ目の前の女の人が説明しているみたいだけど、後で能力確認すればすぐわかるから問題ないだろう。俺はこれからのことが楽しみで仕方がないのだ。

「説明終わりますけど…話聞いていましたか??」
「問題ない」
「はあ…そうですか。ではまああちらで合流してくださいね?」
「…ん? いや待て合流っていったい誰と…」

どうやら遅かったらしい…来た時と同じように目の前がまぶしくて見えなくなると、次に目を開けた時には再び見知らぬ場所…というか森っぽいところで俺は立ち尽くしていた。

「森とか聞いてないわ…」

でもまあもうどうしようもない。まずは貰った荷物の確認から始めますか。

「えーと…?」

袋は見た目とは違う量が入っていたみたいだ。あれか、魔法の袋的な? どのくらいものが入るのかはわからないけどな? んで中身は…まずはナイフ。そうだな刃物はないと困るな。次は水袋…って出ている。そうさっきから持ち物の名前がなぜかわかる不思議だ。そしてフード付きの黒っぽいマントに…干し肉。なんかジャーキーみたいなの硬い。

「…え、これだけ??」

水は見たままの量なのかはわからないが、最悪どこか水場でも見つけたときに補充すればいいだろう。干し肉はそれほど量がない…節約しながら食べて早いうちに食糧を探さないといけない。欲を言えばもっといろいろ欲しかったところだが…まあ俺にはこの能力あるから問題ないだろう。

「さて…」

とりあえずどうするかだが…なんか誰かと合流しろとか言ってたっけ。まあ誰なのか知らないんだけどそのうち会えるだろう。となるといつまでもここにいても仕方ないよな。

「いいもんみっけ」

ジャーンその辺に落ちていた木の棒。まあただの枝だ。これをこう縦に持って支えて…放すっ もちろんぱたりと倒れるんだが。

「じゃあこっちでいいか」

その棒が倒れたほうへと俺は進む。もちろん棒はまた使うので拾っておいた。どこに進めばいいかわからんからな運任せでもいいだろう。こんな森の中の知識なんてないし? …とまた分かれ道ですよと。同じように棒を立てて手を放す。今度も右らしい。というか若干右のほうに倒れた。右手で持ってやるからもしかしたら右にしか倒れないのかもしれない。次は左手で持ってやろうと思う。

気のせいか辺りが暗くなっていた。もしかするとそろそろ夜になるのかもしれない。こうなると寝場所を作らないといけないだろう。いよいよ出番か…?

「この辺でいいかな…」

程よくデコボコが少ない地面を探し俺はそこに立つ。そして使うは一つだけもらえた能力ってやつだ。こういったやつはイメージってもんが大事だとよくラノベで言ってたよな。しっかりとイメージを固めるように俺は目を閉じその形状などを細かく思い浮かべた。

「出てこい……布団!!」

目の前にかけ布団とセットになった布団一式が現れた!! もちろん俺の能力で出したものだ。気のせいか…若干イメージしたものと違うみたいだが…まあいいだろう。早速靴を脱ぎぬいた靴は袋にしまって布団の上に寝転んだ。

「…かたい」

ふかふかの羽毛布団とか希望したんだけどなんでこんなせんべい布団なんだよ!! イメージが足りなかったのか? まあ次回に期待…的な。まあもちろんただの布団ではない。こっちが問題ないならいいだろう。とりあえず干し肉でも食うか硬いけど。しょっぱいけど…

お…やっぱりじっとしていたらやってきたな。あれだ、森に住んでいる生き物だ。獣的な魔獣的なやつ。見た感じネズミっぽいが…ただのネズミは襲ってこないだろう。草むらに隠れてガサゴソとしながらたまに頭を出しこっちを見ている。つまり魔獣ってやつなんだろう。
俺は気が付かないふりをしつつネズミが近づいてくるのを待つ。実際は横手にいるんだからちらりと横目で見ているんだがな。

ネズミが草むらから飛び出して俺に向かって一直線に走ってきた。少しだけ緊張してゴクリと喉がなる。大丈夫なはずと頭ではわかっているのだがやはり俺には無理だっ ネズミのほうをきっと睨みつけ襲われる寸前に俺はかわすことを選んだ…そうかわそうと体を動かしたんだ。

「ギュウウウウ~~~~!!」

だがネズミは俺の手前で何かにぶつかったみたいに弾き飛ばされた。どうやら予定通りの布団だったらしい。そうこの布団は俺に敵意を向けると中に入れない布団なのだ!! 敵意を向けなければ入ることは出来るんだがすぐに追い出されてしまう。この布団に朝まで入っていられるのは俺に好意を持った相手だけということだっ まあそんな相手はいないんだが…これから出来る予定だ。多分。

「よしっ」

安全を確認出来たらもうこっちのものだ。これで安心して寝ることが出来る…がその前に少しこの『召喚魔法』をもう少し試しておくか。そうだな…干し肉まずかったしなんか食べ物にでもするか。

「ラーメン!」

…出ないな。

「ハンバーガー!!」

…出ないな。

「かつ丼っ」

…おい。麺もパンもご飯も出ないぞ!! なんでだっ

「布団…」

出たよ…2組目の布団が。いったいどうなっているんだ? とりあえず布団は一組あればいいんだが…って消えたわ。どっかに帰っていったわ。もしかして食べ物は出ないのか? 一体何なら出せるんだろうか。

まあ考えてもわからんのでいろんなものを試してみたんだが結局布団以外は出なかった。『召喚魔法』を選択したのは失敗だったんだろうか…まさか布団しか出ないなんて知らなかったしな!

「はぁ~…寝よ」

とりあえず布団しか召喚出来なかったが…まあまだ始まったばかりだきっとどうにか出来る手段もあるだろう。最悪寝る場所だけはあるし? 例えばほら異世界と言ったら冒険者とかがあるかもだろうし? …なんか面倒くさい? でもどうにかやっていく方法探さないとな。いきなりバッドエンドとかかんべんしてくれ。

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