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変態がいた

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 女の人は息が荒く顔色も悪い。それなのになぜか笑みを浮かべどことなく楽しそうにも見える不思議。もしかするとここの毒の耐性がないんじゃないだろうか? そう思ったので声をかけたのだ。

「ふふっ 問題ないわ…ほら、毒消し持ってる」

 …いやそれなら飲もうよ。そして早くここから出たほうがいい。

「苦しそうですが」
「【猛毒耐性】は持っているのよ? だから【猛毒無効】を手に入れるために猛毒を…浴びているのっ」
「そう…なんですか」
「ええ、それに…ふふっ この苦しい感じ…いいわ~ 少しづつ無効へと近づいている!」

 ああ…なんだ。ただの変態さんだった。かかわったらいけない人種ってやつだ。私はこれ以上会話をする意味もないと思い立ち去ろうとした。

「ねえ! あなたは無効を持っているんでしょう? どうだったのっ そこにたどり着くまでの道筋は!!」
「し、知りませんっ」

 この人怖い! 恍惚とした顔でおかしなことを聞いてくる。ただの変態さんじゃない…すごい変態さんだった!! 周囲を見ながら私は走って昨日見た右へと曲がるところまで走り抜けた。運よくスライムには合わなかったことを感謝する。右へと曲がると息を整えそっと元来た道の方を覗き込む。とりあえず変態さんは追いかけてきていないようだ。

 ほっとしたがよく考えたらあの変態さんの視界に入るから真っすぐの道を進めない。予定と違うけど今回はこの右へと入った道の先を進んでみよう。

シュッ…カッ 

 緑色のスライムがいたので短剣を投げる。今回も液体の入った瓶が落ちた。通り掛けに短剣を拾い、瓶をリュックにしまう。天井にも視線を送りながら見かけたスライムは近づく前に片っ端から短剣で仕留めた。酸のせいで痛い思いはしたくないし、リュックに穴が開いたら勿体ない。

「おっと…」

 驚いた。突然スライムが目の前に現れた。『迷宮』の仕様か何かだろうか? とりあえずすぐにスライムに短剣を突き刺す。ぼーっとしてて間近で酸を…とかあほすぎるしね。モンスターのことを少し調べたけど、『迷宮』のことも調べたほうがよさそうだ。

 ぽつぽつといるスライムを倒しながら30分ほど歩いただろうか? 今度は左へと道は曲がっている。脇道はないので大人しくこのまま進む。

 それにしてもさっきから見かけるのは緑色のスライムばかりだ。モンスターってもっと種類がいるって話だけど、全然他のモンスターに遭遇しない。となるとここは緑色のスライムしかいないってことなのかな。それならそれで楽だからね。

 お…道は真っすぐ続いているが、途中左側の壁に扉があるのを見つけた。いきなり扉を開けるのは危ない…かな? こういうのって、どういったパターンがあるんだろうか。『迷宮』のことを調べてこなかったことが悔やまれる。そうなってくると選択肢は2つ。このまま素通りするか、思い切って開けるか。

「考えて見たけど、選択肢は1つだったわ」

 さっさと『迷宮』を壊したい私にとってはこの部屋の先がどうなっていようが関係なかった。今この『迷宮』がいくつ階層があるかもわからない。この扉の中に下への階段があるかもしれない。もしかすると『迷宮』を壊す手段があるかもしれない…となると開けて確認するしかないわけで。

「あ…そういえば壊し方知らない」

 たまに耳に入る内容で『迷宮』を壊すことが出来るという話は聞いた事があるが、その手段までは耳に入ってきていない。やっぱり早々に『迷宮』については調べておいた方がよさそうだ。

 そっと扉を開いて中を覗き込む…そしてすぐに閉めた。これは1人で入るような部屋じゃない。中の状態は想像もしていない状態だったよ…

「キモイ…」

 緑色のプルプルがたくさん。すし詰め。扉を閉めたら数匹転がってきたレベル。攻撃される前にちゃんと仕留めた。

「どうしようか」

 もしここの部屋に階段があるんだったら放置するわけにはいかない。だけど今はどうすることも出来ないので後まわしにして、そのまま真っすぐ道を進んでいくことにした。

 …困った。まっすぐ歩いてしばらく行くと道が左右に分かれているのを見つけた。もちろんその間も出てきたのは緑色のスライムだけ。早く進みたい気持ちもあるけど安全の確保が大事。一度外へ出て落ち着いて考えて見よう。

 来た道を戻り、そっと角から入り口の方を覗き込む。よかった…変態さんはもう帰ったみたい。長々と居座られたらたまったもんじゃない。だけどよく考えて見ると、猛毒無効を手に入れたら普通に奥へ入ってくるんだよね? それはそれで厄介だ。

 坂道を上がりゲートに差し掛かると、何やらもめている声が聞こえてきた。

「ですからここはCランクないと許可できないんですよ」
「嘘を言うな!! 出来たばかりの『迷宮』がそんなに高ランクなわけがないだろうっ」

 知らなかった…『迷宮』ってランクがあるんだ。話をしている人の手を見ると冒険者カードがある。つまりこのカードに書かれているランクがCないとだめってことか…私Fだけど?

「ねぇ~ のぼるのかっこいいとこまだ見れないのぉ~?」
「もうちょっと待ってくれ真由…ん? ほら、あんな子ですら中にいるじゃないか!」
「あーあの子は…」

 逃げるタイミングを逃した。というか私を巻き込まないで欲しい…というかこれはいわゆるバカップルとか言うやつですか? 話には聞いた事があったけど実在したんだ…女の子の方が男の子の方に張り付いていて、男の子は門番に文句を言っている光景が目の前にあった。服装だけはちょっと冒険者っぽい。

「はあ…管理者として言いますが、最初の階層が猛毒フィールドで、緑色のスライムが出ます。猛毒の対処が出来ない方はお勧めしていません」

 多分そう言うことだ。私はランクが関係ない。そもそも管理者だから中へ入って調査も必要になる。他の『迷宮』へ入るのならちゃんとランクにあった所じゃないと同じように止められるだろう。

 すると男の子が女の子をくっつけたまま、まだゲートをくぐっていない私の方へと近づいてきた。
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