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いいことと悪いこと

290. 土を回収する

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 夜になった。土を混ぜる作業をしてくれることになった人数は15名。みんな御神木様のためだと知り張り切っているらしい。まあやってくるのは明日になる。しばらくこっちにいることになるのでその準備なんだとか。そして俺はまたブンナーへとやって来ていた。

 やはり夜は月の明かりしかないので暗い。だがそれがいい。スキルを持っている人ならある程度見えるが、それでも昼間に比べて視界は悪いから。外を歩く人も減り、見張りも昼間の半分もいない感じかな。それに夜ということもあり暇な見張りは眠そうに欠伸をしている始末だ。まあ普通に考えて夜にこっそりと御神木を植えるなんてやらないだろうからね。それだったら見張りを誘導してここから遠ざけその間に作業をする方がいいと思うだろう。出来ることなら俺だってそのほうがいいと思うさ。だけどこのまま植えるわけにはいかないのが現実。もしかするとそのことに気がついていないのかもしれない。ということはだ、土がいきなりなくなっても何のためなのかわからないし、そんな土をじっと見張る人もいないわけだ。

 見張りの隙から俺は回収したい地面の大体中央あたりにやってきた。視線を引くくし出来るだけ目立たないような姿勢を取り、地面に手を付ける。まずはこのあたりをどの深さまで回収すればいいのか確認をしながら回収する。

「…ここまでかな?」

 途中で回収される土の種類が変わったので手を止めた。上を見上げると結構深くまで土がだめになっていたのがわかる。

「広さも深さも結構あるとか…どんだけ時間かかるんだこれは」

 まあ文句を言っても始まらない。進めなければまたたけがこの世界へ記憶がない状態で呼ばれ続けてしまうかもしれないのだ。俺たちは帰れなくなるのかもしれないが、よくわからないまま何度も呼び出されることを繰り返すより、この世界で最後まで生きぬいたほうがいいはずだ。まあ…もしかしたら帰る方法も探せばあるかもしれないが、響子は巫女になることを選んだし、次の巫女を誰かに譲らなければ御神木様も困るだろう。それに雪乃が何を考えているのか全く分からない。何も考えていない可能性もあるけれども。そんなことを考えながら黙々と土をインベントリにしまい続けた。

 それにしても見張りは本当にやる気がないな。目立つ音がないとはいえだんだんと地面がえぐれていくのに誰も気がつかない。というかむしろ外側ばかり見ていて内側に視線が向かないんだよね。まあこっちは楽でいいんだが。

 あらかた回収が終わり地面の様子を眺める。中々にすごい光景だ。どうだろう…広さ的にはこの間王都で見た王城の敷地くらいはあるんじゃないだろうか? きっと明るくなってから見たら驚く人も多いだろうね。

「回収も終わったし帰るか」

 時間も9の時を過ぎている。早く戻らないと寝る時間が確保できなくて朝がつらくなるからね。俺はテレポートでエルフの里へ帰ることにした。

 寝泊まりするように用意された部屋から箱庭へと入ると流石に家の明かりが消えていた。

「リョータ様」
「ノノさん…」
「この中でも星空は変らないのですね」

 そういえばノノさんにも以前扉を繋いでもらっていたんだっけ。だけどこんな時間にやってくるのは初めてだ。というかノノさんはジルベスターさんの所のメイドだけど…もしかしてジルベスターさんの指示でやって来たのだろうか?
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