上 下
168 / 356
港町トリィ

152. ジャンプジャンプジャンプ

しおりを挟む
 外が暗くなり船を予約していることになっている時間にまもなくなる。俺とジエル(セブンシ―)、ルー(ミリエル)は宿を抜け出し人目を避けるように船着き場へと足を運んだ。索敵を展開し周囲を警戒してみるとところどころに隠れるように何かがいるのがわかった。まあこれが護衛なのかダルシア男爵の手の物かわからないのがちょっと問題だね。確認する手段はないこともないけれど、わざわざ自分から危険なことをする必要はないだろう。

 さて…船着き場についたが周りはどう動くのか。船の所にいる船員に俺は話しかけた。もちろん本物じゃなくて護衛の一人。すると物陰に隠れていた人たちの一部が俺の方へと近づいてくる。

「おうおう兄ちゃん…こんな時間に船を出すとかなんかやましいことでもあるのか~?」

 にやにや顔の男たちが俺たちを囲むように並び始める。ごろつき…ん-それともダルシア男爵の手の者だろうか。流石に今は判断できない。ジエル(セブンシ―)とルー(ミリエル)をかばうように前に出る俺。焦ったふりをする船員。男たちはただニヤニヤとしながらじりじりと囲みを狭くするように近づいてくる。何をするつもりだ? ぎりぎりまでこちらから手を出してはいけないと言われている。とういか相手が悪いという形が必要なんだとか。まだ今はただ声をかけられただけで何もされてはいない。ただ問題は…セブンシ―が大人しくしていてくれるかどうかだよね…

「…!」

 男の一人がセブンシ―の腕をとった。すごいハラハラする! 心配しているのはセブンシ―じゃなく男の方。頼むから過剰に攻撃しませんように。

「何するのよ…っ」

 グイっと腕を引いた男の腕を思いっきり払いのけた。するとその男はなぜか後ろの海の方へと飛ばされ落ちた。えー…払いのけただけでそれとかないわ~

「このっ」
「結界!」

 怒った他の男たちが一斉に武器を構えたので俺はすぐに結界を張った。結界にはじかれる攻撃達…文句を叫びながらもひたすら男たちは攻撃を続ける。一度通らなかった攻撃が通るはずがないんだけどね…結界を上回る威力がないと解除出来ないよ。さて、こちらは問題なさそうなのでちょっと索敵中におかしな動きをしていた人を追いかけようか。ここにいる男たちは次々とセブンシ―とミリエルに倒されていく。護衛いらなかったんじゃないかな…

 おかしな動きをしていたのは男たちが俺たちを囲んだ後、近づいて来ようとしていた人がいたんだけど…一人海に投げ込まれたところで近づくのをやめて逃げ出したんだ。そいつをジャンプで屋根に上り屋根から屋根へとジャンプをして追いかける。ちょっとジャンプをするのが楽しい。まあ危なかったら浮遊を使えば落ちても地面に叩きつけられることがないことに気がついたので好き放題ジャンプする。いた…小太りの男が必死に走る後姿が。

「ダークネス」

 杖を取り出しその小太りの男を縛り上げた。逃げられないように1本でぐるぐるっとね。立っていられなくなった小太りの男はその場に倒れこむ…

「くそっ なんだこれは…! この…」
「やっぱりダルシア男爵でしたか」

 転がっているダルシア男爵の前に飛び降りた俺は地面に転がる男をじっと見つめた。一人…こっちに近づいて来ている人がいるみたいなので警戒は忘れない。動けないダルシア男爵のうるさい口もついでに塞いでおこうか。魔法を使われるとやっかいだしね。

「むぐーっ むー!」

 余計うるさくなった…

「あなたという人は…まあ怒るのは後にしましょうか。ダルシア男爵も捕まえたようですし」

 近づいて来ていたのはアルバトロスだった。一人逃げ出したことに気がついて追ってきたんだろう。

「まずは魔法やスキルが使えないように拘束してしまいましょう」

 なにそれっ アルバトロスが取り出したのは両腕にはめる腕輪状のもの。それを付けられるとスキルや魔法が使えなくなるらしい。主に犯罪者に使用するものなんだそうだ。

「これでいいでしょう」

 さらに頑丈そうな縄で体も縛り上げられているダルシア男爵。その垂れ下がった縄をぐいぐいとアルバトロスが引っ張るが抵抗して歩こうとしない。

「連れていきたいんですが…」
「あーじゃあ…浮遊」

 ダルシア男爵にスキルをかける。自分にしか使えないって書いてなかったからね。試してみたら使えるみたいだし。少し浮き上がったダルシア男爵は踏ん張りがきかなくなりそのまま連れていかれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

処理中です...