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城壁都市ですか?
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僕は今の状況になってしまったまでのことを簡単に説明する。自分の名前、年齢、そして気がついたら人々から拝まれるようになってシエル・ブランジットとともに馬車に乗っているところまで…
「ユウは15歳なのか…そうか日本人だから幼く見えるのだな」
まるで懐かしむようにシエル・ブランジットは目を細めた。彼にとって日本人だった記憶はすでに薄れ始めていたのかもしれない。
「そしてこれはウィッグ…と」
すっと右手を僕の髪…ウィッグへと伸ばす。その下からは黒髪のショートヘアが現れた。
「ああーこれはまずいな」
「まずい・・とは?」
「色だ。黒はめったにない色でかなり目立つ」
「わっ」
外されたウィッグが再びかぶせられた。
「それは付けたままにしたほうがいいだろう」
ちょっとまって…つまり僕はずっとこのウィッグを付けたまま過ごすことになるってこと?? え、うそだろう?
「さて、後は馬車でどこへいくのかだったかな」
シエル・ブランジットは再び窓の外へと視線を向けた。それにつられて僕も恐る恐る視線を向けた。またさっきみたいに生き物を殺すのを見せられるのはいやだからね。
「ほら見えて来たぞ」
馬車の前方にまだ少し遠いけれど塀…いや大きな壁? が見える。あの壁の向こうがどうやら目的地のようだ。僕が最初にいた場所からそれほど離れていなかったのか、馬車の移動が随分と早かったのか、長いこと会話をしていただけなのかもしれないけれど、僕はあそこに連れていかれるらしい。
「大きな壁だね…」
「城壁だな」
「じょう…え?」
壁の向こうにはお城があるってこと…だよね? なんで僕はそんなところへ連れていかれるんだ??
「なんだまた金魚の物真似か?」
「ちが…っ いや、あの…」
「ああ、あそこは城壁都市シルクエンロードっていうんだ。まあ王城もあの都市のなかにあるのだけどね」
そんなことは聞いていないっ なぜそんなところに僕を連れていくのかが問題なんだ! えーと…男爵ってあの都市に家でもあるのかな…もしそうならとても平和なんだけど。
「門が見えてきた。久しぶりに見るがやはり大きいな…」
「……」
久しぶりって…住んでいないことが確定じゃないか!
「ははは、ユウは金魚の物真似が好きだな~」
ち~が~う~~~っ
僕が一人で混乱している間に馬車は城門へとたどり着いていた。
僕が馬車の隅で縮こまって震えている間にも馬車は門を越え都市の中を移動していた。これからどうなってしまうのかという不安と初めて見る異世界の街並み…興味はあるのだけど不安が強すぎてじっくりとは見ていられない。もしかしたら人買いとかに売られてしまうのかもしれないと思うと怖くて仕方がないのだ。
とうとう馬車が足を止めた。目的地に着いたようだ。怖くて顔が上げられない…
カチャリと音がして外から馬車の扉が開かれる。窓よりも大きな空間が外へと開かれると流石に眩しくて顔をしかめた。どうやらまだ外は明るい…この外へ出たら僕はきっと売られてしまう。
「お嬢様お手をどうぞ?」
馬車の外へと出たシエル・ブランジットが僕へと手を差し出した。
「ようこそ僕の屋敷へ」
「え?」
「まあここはいわゆる別荘みたいなものなんだけど…ほら、助けがいるかって聞いただろう?」
「あ…」
暖かいのもがこみあげてきた。ポロポロポロポロと涙があふれてくる。男なのにこんなに泣いてとはずかしくなり僕は両手で顔を隠した。よほど怖かったのだと実感してしまう。
「ほら泣いている暇はないよ? これからこの世界のことを学ばなければいけないんだ」
あっさりと涙が引っこむ…わざとなのかわかってやっているのか本当によくわからない人だと再確認させられた。
「ユウは15歳なのか…そうか日本人だから幼く見えるのだな」
まるで懐かしむようにシエル・ブランジットは目を細めた。彼にとって日本人だった記憶はすでに薄れ始めていたのかもしれない。
「そしてこれはウィッグ…と」
すっと右手を僕の髪…ウィッグへと伸ばす。その下からは黒髪のショートヘアが現れた。
「ああーこれはまずいな」
「まずい・・とは?」
「色だ。黒はめったにない色でかなり目立つ」
「わっ」
外されたウィッグが再びかぶせられた。
「それは付けたままにしたほうがいいだろう」
ちょっとまって…つまり僕はずっとこのウィッグを付けたまま過ごすことになるってこと?? え、うそだろう?
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「大きな壁だね…」
「城壁だな」
「じょう…え?」
壁の向こうにはお城があるってこと…だよね? なんで僕はそんなところへ連れていかれるんだ??
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「ああ、あそこは城壁都市シルクエンロードっていうんだ。まあ王城もあの都市のなかにあるのだけどね」
そんなことは聞いていないっ なぜそんなところに僕を連れていくのかが問題なんだ! えーと…男爵ってあの都市に家でもあるのかな…もしそうならとても平和なんだけど。
「門が見えてきた。久しぶりに見るがやはり大きいな…」
「……」
久しぶりって…住んでいないことが確定じゃないか!
「ははは、ユウは金魚の物真似が好きだな~」
ち~が~う~~~っ
僕が一人で混乱している間に馬車は城門へとたどり着いていた。
僕が馬車の隅で縮こまって震えている間にも馬車は門を越え都市の中を移動していた。これからどうなってしまうのかという不安と初めて見る異世界の街並み…興味はあるのだけど不安が強すぎてじっくりとは見ていられない。もしかしたら人買いとかに売られてしまうのかもしれないと思うと怖くて仕方がないのだ。
とうとう馬車が足を止めた。目的地に着いたようだ。怖くて顔が上げられない…
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「え?」
「まあここはいわゆる別荘みたいなものなんだけど…ほら、助けがいるかって聞いただろう?」
「あ…」
暖かいのもがこみあげてきた。ポロポロポロポロと涙があふれてくる。男なのにこんなに泣いてとはずかしくなり僕は両手で顔を隠した。よほど怖かったのだと実感してしまう。
「ほら泣いている暇はないよ? これからこの世界のことを学ばなければいけないんだ」
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