異世界でかけあがれ!!

れのひと

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 昼食が終わったので、午後からの予定を確認する。受付で受け取った紙に午後からは戦闘技能と魔法技能と書かれていた。どうやら番号で振り分けて最初に受ける方が俺は戦闘技能らしい。第3訓練室ね。どういった振り分け方なのかわからないけれど、第3は100人ほどいるみたいだ。戦闘と魔法で半分に分けたとしても第1と第2に比べて多い。ちょっと時間がかかりそうだけどこればかりは仕方がないのだろうね。

 紙に書かれていた地図に従って第3訓練室へ。そもそも昼食を食べている人はまだ少なかったくらいなので、ここにもまた人がいない。ちょうどいいので少し体をほぐしておこうかな。といっても何をやらされるのかわからないので軽いストレッチをするくらい。体を伸ばしたり縮めたり手足などを回しておく。

「あっ 一番のりさんね!」

 俺が体をほぐしていると女の子がやってきた。少しだけ俺より年上だと思うからここの生徒だろうか? 金色の髪の毛を二つに分け編み込み後ろで束ねている。瞳の色は青くてこの世界でよく見る色だ。服装は膝くらいのスカートにマントを肩で留めていた。もしかするとここの制服なのかもしれない。

「私はアンネ・フォン・マキシマータ。あなたは?」
「シオンです」
「そうシオン君ね。私は初等部2年…あっ 今度3年なのでこの試験の対戦相手の一人なのよ」
「対戦…?」
「あ! 今のは内緒でっ 受験者には全員そろってからの説明だったわ」
「わかりました」

 名前からして貴族っぽいけど気安く話しかけてきてくれてちょっと好印象。今まで貴族はすれ違ったことはあったかもしれないけど、こうやって会話をするのは初めてだ。勝手なイメージだけど遺族って偉そうな態度の人が多そうな気がしてたから。

「私の弟も今回の試験受けているのよ~ どうせなら弟のいる部屋へ行きたかったのだけど…身内同士では甘えが出るからダメなのですって」
「まあそうなのかもしれ…あ」
「あら、人が来始めましたね。では私は少し離れたところにいますので。さっきのことは内緒でね?」

 訓練所の入り口からちらほらと人が入ってくる。中には制服と思われるさっき会ったアンネさんと同じ服装の人もいた。その人たちはアンネさんの方へと向かうと親しげに会話を始める。

 …会話相手はいないしもうちょっと体ほぐしておくか。

 俺は一人ストレッチを再開した。

 第3訓練所に人がかなり増えたころ、聞き覚えのある声が聞こえ始めた。

<午後の試験が間もなく始まります。各訓練所にて説明が行われますので時間になりましたら開始してください>

 今回はこの声の人が説明をするわけじゃないらしい。少しすると訓練所の扉が閉められた。

「どうやら時間のようですので説明に入ります。私はアンネ・フォン・マキシマータ。この学園初等部の今年の3年生です。今回の戦闘技能の試験は私達新初等部3年生10名が受験生と1対1の対戦を行います」

 アンネさんがここまで行ったところで周りがざわつき始めた。やっぱり対戦というのに誰もが驚きを隠せずにいるみたいだ。不安そうな顔をしている人が結構いる。

「対戦は1人5分間。この場所を10に区切って同時に行います。ちなみに勝つ必要は全くありません。思う存分自分の力を示してください。評価をするのは私達ではなく、ここでの対戦記録を後程先生方が確認しますので安心してくださいね?」

 なるほど…生徒が評価するとなったら後でもめ事になりそうだもんね。このあたりは安心だ。

「それでは始めたいと思いますので、あちらを見てください」

 上の方に手をあげ示す先にあるのも…やっぱり仕組みがわからないけど、何か半透明状態の板のようなものが浮いている。そこにはマスがに区切られていて数字が書かれている。

「この番号の方から始めますので書かれている配置と同じ場所へお願いします。他の方はあちらの観客席でお待ちください」

 俺の番号はまだないみたいだ。まあ一番最後の数字だもんね…もしかすると表示されるのは本当に最後の方かもしれない。まあその間他の人の対戦を眺めていようか。

 対戦が始まり少し離れた観客席からその様子を眺める。こうやって一度の行うとどこを見たらいいのか迷ってしまうな。お…あそこにいるのはアンネさん。アンネさんは木剣で相手をしている。対する受験者は刃のついた槍。なるほどね、確かに自分が使っている武器を持ってくるようにあったし、それを使ているんだろう。それにしてもたった2年の差しかないのにアンネさんは相手の攻撃を軽々とさばいているね。ある程度戦える人が相手として選ばれているのかもしれない。となると俺が当たる相手が誰になるかわからないし、他の人も見ておいたほうがいいだろうか。

 剣が4、槍が1、短剣が2、棍が1,弓が2か…

 どれも木で出来た武器なので怪我をしても打ち身程度だろう。弓は…なるほど、矢じりがなくなり代わりに綿か何かが詰められていて色がついている。あれが当たったらわかるってことだね。中々よく出来ている。だけどあの色が当たったら後で取れるのかどうかが気になるところだ。
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