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「なんかいい匂いがするわね~」
厨房で女の人に教えながら一緒に調理していると俺を連れ出したメンバーの一人、たしかロザリと呼ばれていた人がカウンター越しに中を覗き込んできた。
「あれ、君こんなとこで何してんの??」
「…暇なので手伝い? ですかね」
「ふぅ~ん…ねえ今作ってるのもう食べられるのかな?」
「まだ完成していませんが…あのお姉さん? 料金っていくらになるんですか」
「え? ああ、そういえば作ったのはいいけど決めてなかったわね…材料費を考えて800ゼニカくらいかしら」
「…ちょっと高いわね。でも匂いが気になるし、いいわ! 食べたいから出来たら教えてっ」
言いたいことを言い終えたのかロザリさんはその場から姿を消した。何かを引きずるような音が聞こえたから多分椅子に座ったんだろう。
いくつかのパンケーキを焼き上げ、シチューも具材がいい感じに火がっ通ったのでこれで完成でいいだろう。客に出す前に味は見ておかないとね! と女の人…お姉さん? が言うので木の器にすくい出し差し出してあげた。
「シチューはたまに作るけど…香りが全然違うわね。あの振り回した瓶の中身のせいかしら? …ん! おいしいっ」
俺も少し味を確認したが、肉も入っていないしコショウも無いのでやっぱり物足りない味がすると思った。ないものは仕方がないし、あの謎の肉は使いたいと思えなかったからしかたがない。バターが作れただけでもいい方なんじゃないだろうか。
ロザリさんに出来上がったことを知らせに行くと、クラックと呼ばれていた人も一緒にいた。
「お、本当に厨房から出てきたな」
「ね? 言った通りでしょう??」
「お待たせしました~ 800ゼニカですよ」
「待ってました!」
お金を払った後、テーブルの上に置かれたシチューとパンケーキをまずはじっと眺めたロザリさんは、スプーンを手に取り口へと運んだ。
「わ…っ じゃあこっちは!?」
すかさずパンケーキをフォーク…ではなく素手でつかもうとしたので、俺は慌ててスキルを使用。よし、これで大丈夫…ん? パンケーキに手を伸ばしたロザリさんの動きが止まりじっと自分の手を見つめていた。
「またスキルね…」
「ああ、クリーンか…ということはやっぱり気のせいじゃなかったな」
クラックさんはそういうと宿の室内を見回している。ちゃんと綺麗にしたつもりなんだけどまだどこか汚れているのかな? そう思って俺も見上げるがパッと見たところ見当たらなかった。
「とりあえず俺も食事を頼む」
「お待ちください~」
お姉さんは厨房へ引っ込むとクラックさんの分も運んできた。クラックさんもお金を払い早速食べ始めた。
「色々とやべぇーな…」
えーと…食べた感想にしてはおかしい気がする。まあいいや俺も自分の分を運んでこようかな。
厨房に入り自分の分を器に盛ると、ちょっと運ぶのが難しそうなので一度収納にしまった。で、テーブルに向っていると何か話声が聞こえてくる。あーあの俺を抱えて歩いていた人が起きてきたのか。
「あ、起きたんですね。えーと同じもの作りましょうか?」
「は…? 作る??」
「あー違った運んできましょうか?」
もう調理は終わっているから運んでくるだけだった。しかもただじゃない。
「えーと…800ゼニカ? だそうです」
どうしたんだろう。じっと俺の方を見て動かなくなったんだが…あ、2人の方を交互に見始めた。
「まず食事じゃね?」
「そうよね、どんな話をするにしてもまず体調を整えるべきよね」
そういえば夕食の時に話がどうとか言ってたかもしれない。
「はいお待たせ! 多分いるんじゃないかと思って持ってきたわよ」
「お姉さん気が利きますね」
「だてに宿屋やってないわよ。まあこんな場所だしたまーにしか客はいないけど。それでも宿はないと困るだろうからね~」
へーそれはいいことだね。こういう人がいるから世の中は回っているのだろう。っと俺も食事にしよう。空いている椅子によじ登ると無言でみんななぜかこっちを見ていた。
「…?」
よくわからないけどとりあえず食べようか。首を傾げながらも俺は収納から自分の分を取り出しテーブルに置いた。なんかすごい視線を感じるんだけど…言いたいことがあるなら行って欲しいな。少しすると何事もなかったように食事が進む。
「それにしてもおいしいわね~ シチューもいいけど、こっちのパンも柔らかくて驚いたもの」
「それな~? 今までいろんな宿に泊まったことあるけどここまでうまいめしは初めてだよなトール」
「…そうだね」
ふぅ~ん…こっちの人はトールって言うのか。
食事が終わりお姉さんが食器を下げてくれると、なぜか3人はお互いの顔を見ながら何かを探りあっているような雰囲気をしていた。話が始まると思っているからここにいるんだけど…しないようなら俺がここにいる意味がないよな?
「あの~? みなさんの部屋も掃除してきていいですか?」
「あのさ…」
「はい?」
何もないテーブルを見つめながらクラックさんが口を開く。どうやら話とやらはちゃんとするらしい。
「お前は何者だ?」
…はい? えーとこれはどういった話なんだ?? クラックさんの言葉にトールさんが頭を抱えているし、ロザリさんはクラックさんにこいつバカなの? と言いたげな視線を送っている。
「何者…はあ…」
そう言われても困る。俺が知っていることといえば刃物で刺された記憶と川に落とされた記憶と、フェンリル母さんたちと過ごした記憶くらいだ。
「そうですね…生まれて間もなく川に落とされて流れ着いた先で生きてきた3歳児ですか?」
「「「普通におかしいわ!!」」」
えーーーー? そんなこと言われても前の記憶を話しても仕方ないし、俺が何者かだなんてそれ以上の情報ははっきり言って自分が知りたいくらいなのに~
クラックさんとロザリさんは叫んだ勢いでそのままテーブルに伏せてしまった。まあ俺でもこんなこと言われたら同じように困ってしまうかもしれないからちょっと気持ちはわからんでもない。だけどトールさんだけは頭を押さえつつも俺の方をじっと見ていた。
「その年でどうやってスキルを覚えたんだい?」
「どうって…特に変わったことは何も。俺の予想ですけど、命の危機だったのが原因じゃないかと思うんですがどうでしょう?」
「知識は? 妙に会話が丁寧だよね。僕たちが話していることちゃんと理解できるなんて3歳児にしては変だよ」
「え…」
「あとどうやって今まで1人で生きてき…」
「ううっ わあああああああああ~ん!!」
何が決壊したみたいだった。頭では理解出来ているのだが、3歳児の精神はここまで一度に質問されることに耐えられないらしい。違うとわかっているのにまるで怒られているかのように感じて、泣きたいわけじゃないのに止まらなくなった。
「こっちだって全部わかっているわけじゃないし! こんな世界にいつの間にいて、しかも親に捨てられる!? 川だったから一歩間違えば死んでいたっ フェンリル母さんが助けてくれなければこの場にだっていなかったよ!! さらに母さんと別れる事になったそんな俺に…っ なんで…!」
泣き叫ぶ俺。だんだん何を言っているのかもわからなくなってきた。ふわりと目の前に影が落ち、俺は暖かいものに包まれた。
「トール、わからないでもないけど流石に攻めすぎよ?」
気がついた時にはロザリさんが俺を抱きしめていた。埃っぽくて少しだけ汗の匂いもして、ほんのりと女の人の香もする…俺を連れ出すために頑張った人の匂い。
だんだんと落ち着いてきた俺は、
「クリーン…」
無意識にスキルを使用した後意識が闇へと落ちていく感覚がして、
「…は? ちょっと! 私が臭いって言いたいのかなこの子はっ」
何か声が聞こえた気もするけどそのまま多分力尽きた。
厨房で女の人に教えながら一緒に調理していると俺を連れ出したメンバーの一人、たしかロザリと呼ばれていた人がカウンター越しに中を覗き込んできた。
「あれ、君こんなとこで何してんの??」
「…暇なので手伝い? ですかね」
「ふぅ~ん…ねえ今作ってるのもう食べられるのかな?」
「まだ完成していませんが…あのお姉さん? 料金っていくらになるんですか」
「え? ああ、そういえば作ったのはいいけど決めてなかったわね…材料費を考えて800ゼニカくらいかしら」
「…ちょっと高いわね。でも匂いが気になるし、いいわ! 食べたいから出来たら教えてっ」
言いたいことを言い終えたのかロザリさんはその場から姿を消した。何かを引きずるような音が聞こえたから多分椅子に座ったんだろう。
いくつかのパンケーキを焼き上げ、シチューも具材がいい感じに火がっ通ったのでこれで完成でいいだろう。客に出す前に味は見ておかないとね! と女の人…お姉さん? が言うので木の器にすくい出し差し出してあげた。
「シチューはたまに作るけど…香りが全然違うわね。あの振り回した瓶の中身のせいかしら? …ん! おいしいっ」
俺も少し味を確認したが、肉も入っていないしコショウも無いのでやっぱり物足りない味がすると思った。ないものは仕方がないし、あの謎の肉は使いたいと思えなかったからしかたがない。バターが作れただけでもいい方なんじゃないだろうか。
ロザリさんに出来上がったことを知らせに行くと、クラックと呼ばれていた人も一緒にいた。
「お、本当に厨房から出てきたな」
「ね? 言った通りでしょう??」
「お待たせしました~ 800ゼニカですよ」
「待ってました!」
お金を払った後、テーブルの上に置かれたシチューとパンケーキをまずはじっと眺めたロザリさんは、スプーンを手に取り口へと運んだ。
「わ…っ じゃあこっちは!?」
すかさずパンケーキをフォーク…ではなく素手でつかもうとしたので、俺は慌ててスキルを使用。よし、これで大丈夫…ん? パンケーキに手を伸ばしたロザリさんの動きが止まりじっと自分の手を見つめていた。
「またスキルね…」
「ああ、クリーンか…ということはやっぱり気のせいじゃなかったな」
クラックさんはそういうと宿の室内を見回している。ちゃんと綺麗にしたつもりなんだけどまだどこか汚れているのかな? そう思って俺も見上げるがパッと見たところ見当たらなかった。
「とりあえず俺も食事を頼む」
「お待ちください~」
お姉さんは厨房へ引っ込むとクラックさんの分も運んできた。クラックさんもお金を払い早速食べ始めた。
「色々とやべぇーな…」
えーと…食べた感想にしてはおかしい気がする。まあいいや俺も自分の分を運んでこようかな。
厨房に入り自分の分を器に盛ると、ちょっと運ぶのが難しそうなので一度収納にしまった。で、テーブルに向っていると何か話声が聞こえてくる。あーあの俺を抱えて歩いていた人が起きてきたのか。
「あ、起きたんですね。えーと同じもの作りましょうか?」
「は…? 作る??」
「あー違った運んできましょうか?」
もう調理は終わっているから運んでくるだけだった。しかもただじゃない。
「えーと…800ゼニカ? だそうです」
どうしたんだろう。じっと俺の方を見て動かなくなったんだが…あ、2人の方を交互に見始めた。
「まず食事じゃね?」
「そうよね、どんな話をするにしてもまず体調を整えるべきよね」
そういえば夕食の時に話がどうとか言ってたかもしれない。
「はいお待たせ! 多分いるんじゃないかと思って持ってきたわよ」
「お姉さん気が利きますね」
「だてに宿屋やってないわよ。まあこんな場所だしたまーにしか客はいないけど。それでも宿はないと困るだろうからね~」
へーそれはいいことだね。こういう人がいるから世の中は回っているのだろう。っと俺も食事にしよう。空いている椅子によじ登ると無言でみんななぜかこっちを見ていた。
「…?」
よくわからないけどとりあえず食べようか。首を傾げながらも俺は収納から自分の分を取り出しテーブルに置いた。なんかすごい視線を感じるんだけど…言いたいことがあるなら行って欲しいな。少しすると何事もなかったように食事が進む。
「それにしてもおいしいわね~ シチューもいいけど、こっちのパンも柔らかくて驚いたもの」
「それな~? 今までいろんな宿に泊まったことあるけどここまでうまいめしは初めてだよなトール」
「…そうだね」
ふぅ~ん…こっちの人はトールって言うのか。
食事が終わりお姉さんが食器を下げてくれると、なぜか3人はお互いの顔を見ながら何かを探りあっているような雰囲気をしていた。話が始まると思っているからここにいるんだけど…しないようなら俺がここにいる意味がないよな?
「あの~? みなさんの部屋も掃除してきていいですか?」
「あのさ…」
「はい?」
何もないテーブルを見つめながらクラックさんが口を開く。どうやら話とやらはちゃんとするらしい。
「お前は何者だ?」
…はい? えーとこれはどういった話なんだ?? クラックさんの言葉にトールさんが頭を抱えているし、ロザリさんはクラックさんにこいつバカなの? と言いたげな視線を送っている。
「何者…はあ…」
そう言われても困る。俺が知っていることといえば刃物で刺された記憶と川に落とされた記憶と、フェンリル母さんたちと過ごした記憶くらいだ。
「そうですね…生まれて間もなく川に落とされて流れ着いた先で生きてきた3歳児ですか?」
「「「普通におかしいわ!!」」」
えーーーー? そんなこと言われても前の記憶を話しても仕方ないし、俺が何者かだなんてそれ以上の情報ははっきり言って自分が知りたいくらいなのに~
クラックさんとロザリさんは叫んだ勢いでそのままテーブルに伏せてしまった。まあ俺でもこんなこと言われたら同じように困ってしまうかもしれないからちょっと気持ちはわからんでもない。だけどトールさんだけは頭を押さえつつも俺の方をじっと見ていた。
「その年でどうやってスキルを覚えたんだい?」
「どうって…特に変わったことは何も。俺の予想ですけど、命の危機だったのが原因じゃないかと思うんですがどうでしょう?」
「知識は? 妙に会話が丁寧だよね。僕たちが話していることちゃんと理解できるなんて3歳児にしては変だよ」
「え…」
「あとどうやって今まで1人で生きてき…」
「ううっ わあああああああああ~ん!!」
何が決壊したみたいだった。頭では理解出来ているのだが、3歳児の精神はここまで一度に質問されることに耐えられないらしい。違うとわかっているのにまるで怒られているかのように感じて、泣きたいわけじゃないのに止まらなくなった。
「こっちだって全部わかっているわけじゃないし! こんな世界にいつの間にいて、しかも親に捨てられる!? 川だったから一歩間違えば死んでいたっ フェンリル母さんが助けてくれなければこの場にだっていなかったよ!! さらに母さんと別れる事になったそんな俺に…っ なんで…!」
泣き叫ぶ俺。だんだん何を言っているのかもわからなくなってきた。ふわりと目の前に影が落ち、俺は暖かいものに包まれた。
「トール、わからないでもないけど流石に攻めすぎよ?」
気がついた時にはロザリさんが俺を抱きしめていた。埃っぽくて少しだけ汗の匂いもして、ほんのりと女の人の香もする…俺を連れ出すために頑張った人の匂い。
だんだんと落ち着いてきた俺は、
「クリーン…」
無意識にスキルを使用した後意識が闇へと落ちていく感覚がして、
「…は? ちょっと! 私が臭いって言いたいのかなこの子はっ」
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