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歩いて村についた俺たちはその村で一つだけあった宿へと足を運んだ。誰もが厳しい顔をして歩くその姿は村人たちに不安を与えているのに気がついていない様子で、少し居心地が悪かった。それでもやはり客商売。宿の人は笑顔で俺たちを迎え入れてくれた。たまに訪れる客を逃すような愚かなことはしたくなかったんだろうね。
「話は全部夕食の時でな」
「そうだな」
「りょうか~い」
各自割り振られた部屋へと入っていく。そこに一人取り残された俺はどうすればいいのかわからずキョロキョロと室内を観察する。あまりきれいじゃない廊下と建物が古いのか歩くと床がギシギシと音を出す。
「あっ 君は僕と一緒の部屋ね」
部屋の扉を開けて俺を背負ってくれていた…そういえばまだ彼の名前も聞いていなかった。そんな彼が手招きをしているのでとりあえずそれに従い部屋の中へと入る。うん…部屋の中も綺麗とは言えない。一応洗ってあるであろうシーツは使われているが、床は汚いまま。天井には蜘蛛の巣も見られる。この調子だとシーツの下は見えないからと掃除されていない可能性もあるね。
「僕はちょっと寝るけど君はどうする?」
「クリーン。クリーンクリーンクリーン!」
「え、ちょっ…」
「ついでにクリーン!」
外から部屋に入ったままベッドで寝ようとしていたのでこの人もついでに綺麗にしておく。よし! 満足っ
「えーと…」
「なんですか??」
コテンと首を傾けじっと顔を見る。話しかけた人の目はちゃんと見ないといけないからね。
「僕は寝るからね…?」
「わかりました。静かにしていればいいです?」
「うん、それでいいよ…」
気のせいかちょっと困った顔をしていたけど、寝ると言っているのでこれ以上会話を伸ばすのはやめた。となるとあまりこの部屋にいない方がいいんじゃないだろうかと思えてくる。だけどまだ俺の年でうろつくにはハードルが高すぎるだろうか? いなくなったと騒がれても困るし。
(宿の中だけならいいかな?)
この世界に生れ落ちて初めて見る人が住んでいる建物だ。それを黙って見過ごすほど愚かではない。静かに扉を開き廊下へ出てまずは気になっていた汚れを落とす。
(クリーン)
うん、これで状態がよく見えるようになった。ここは宿の2階部分で3階はない。だから階段は降りるもののみある。
(部屋数は6部屋…)
廊下を歩いて一つ一つ扉の数を確認した。扉の間隔からしてさっきいた部屋と同じくらいの広さが6部屋あるらしいことがわかる。次に階段を下りながらここも綺麗にしておく。俺みたいに背が低いと階段を降りるのも一苦労で、手すりを使わないと厳しいのにそれが汚れているとかいやだからね。
1階部分に降りると先ほど宿を利用するときに行ったカウンターとテーブルと椅子がいくつか並んでいた。ここからだとよく見えないけどカウンターの奥は多分厨房だろうか? それとさらに奥にこの宿の人の部屋があるのかもしれないね。
(ここもクリーンクリーン!! …ふぅっ)
満足して出てもいない額の汗をぬぐうとカタンと背後で音がした。
「え、なにこれ綺麗になってる!」
宿泊の受付をしてた女の人だ。どうやらカウンターの奥の方にいたらしく、俺が1階に降りてきた音に気がついて顔をだしたみたい。
「あの~ 勝手にごめんなさい?」
あまりの汚さについ宿主の許可も得ずにやってしまったので念のため謝ってみた。これで怒られたらどうしようか…流石に元に戻すことはできない。俺が未熟なだけで戻すような魔法もあるかもしれないけども、普通に考えたら汚い状態は病気にもなりやすいから綺麗にするのは喜ばれるもの…
「これ君がやったの…? え、すごいっ どうやって!」
「おわっ?」
近いっ 顔が近いよおねーさん!! 喜んでくれてるみたいでよかったけどっ なんかいい匂いもするし、落ち着かないから離れて~~
「おおおお、おしっ 教えますから離れて!」
「あ、そうね…会話をする距離じゃないわ」
あー驚いた…周りが見えなくなるタイプの人なのかな。今後こういった人には気をつけないと。
「はぁ…えと、クリーンというスキルです」
「スキルか~…じゃあ私には無理かな」
「え? そんなことないですよ? スキルは人によってかかる時間は違いますけど、繰り返し使いたいスキルを思い浮かべて…例えば今回のだと掃除道具に魔力を込めながら掃除をするとかを繰り返していれば、いずれ覚えます」
「うーんそれはわかるんだけどね~ 根気が続かないというか」
そんなこと言われてもそこまでは俺も責任持てない。こればかりは本人が頑張るしかないことだと思うよ。
「まあ気が向いたらやってみるわ。それでなんだけどさ、ついでにこっちもお願いできないかな」
示されている指の先はカウンターの裏側…つまり厨房か。もしかして俺が綺麗にしないとその汚いままの厨房で食事が作られるってこと? でもこれは丁度いいかもしれない。綺麗にするついでにちょっと厨房を借りられないだろうか?
「綺麗にしたら厨房ちょっと使わせてもらってもいい??」
「え…それはいいけども、誰が使うの?」
誰って今ここに俺に強いないじゃん…だから俺は自分に指を向ける。すると俺のことを足元から頭のてっぺんまでじっくりと視線を向けられた。おおう…これって目の前でやられると中々不快なことだったんだね。あまりいい気分がしない。
「ダメならこの場で…」
「え、あっ だめじゃないよ! ただね君の身長だと色々手が届かないんじゃないかと思ってね」
「大丈夫」
「そう?」
許可を貰えたので早速厨房へと足を踏み入れた。離れたところから見ただけだったけどやっぱりあまりきれいじゃない。道具とかはきれいみたいだけど床とか壁とか結構汚い。早速スキルで片っ端から綺麗にしていった。
「これでよし…っ」
「おーもとはこんなに綺麗だったのね~」
普段から綺麗にしろよという視線を送りつつ俺は早速厨房を使わせてもらうことにした。
「ところで何をするのかな~?」
「え、お腹空いたから自分の食事用意するだけだけど?」
「あらそうなの? だったら綺麗にしてもらったしパンとスープでよければ出せるわよ」
「パンとスープ!」
「ちょっと待ってね温めなおすから、そっちで座って待ってて」
ずっと森で過ごしていたからパンもスープも食べていなかった。大体魚か果物あとはたまに肉くらい。体を維持するのに必要なものはフェンリル母さんからの魔素の受け取りだったから。
テーブルが並んでいるところに行って椅子によじ登り座って大人しく待つ。だけどおかしいいな…スープを温めているはずなのに匂いがしない。普通温かい物って温めると匂いが漂ってくるはずのものだけど…
「は~いお待たせ!」
テーブルの上には木の器に温められたと思われるスープと木のお皿にパンが2つ。ひとまずスープを飲んでみることにする。あー…予想通り。煮た野菜の味がするにはするがそれとほんのり塩味だけしかしない。野菜は何かの芋っぽい。あまり火が通っていないのかシャリシャリする…いったんスプーンから手を放し今度はパンを手にする。持った瞬間顔をしかめた。
「ふんっ」
スプーンを手に取り柄の部分をパンに突き刺すように叩きつけた。どうにか半分に割れ周りには細かなパンくずが散らばる。こうでもしないとパンが割れないなんてどんな硬さだよと…まあ硬くてもパンはパンだしと一応食べてみる。なんだろう…なんか酸っぱい。この世界で初めて食べるパンとスープの出来にすごくがっかりしてしまった。
「話は全部夕食の時でな」
「そうだな」
「りょうか~い」
各自割り振られた部屋へと入っていく。そこに一人取り残された俺はどうすればいいのかわからずキョロキョロと室内を観察する。あまりきれいじゃない廊下と建物が古いのか歩くと床がギシギシと音を出す。
「あっ 君は僕と一緒の部屋ね」
部屋の扉を開けて俺を背負ってくれていた…そういえばまだ彼の名前も聞いていなかった。そんな彼が手招きをしているのでとりあえずそれに従い部屋の中へと入る。うん…部屋の中も綺麗とは言えない。一応洗ってあるであろうシーツは使われているが、床は汚いまま。天井には蜘蛛の巣も見られる。この調子だとシーツの下は見えないからと掃除されていない可能性もあるね。
「僕はちょっと寝るけど君はどうする?」
「クリーン。クリーンクリーンクリーン!」
「え、ちょっ…」
「ついでにクリーン!」
外から部屋に入ったままベッドで寝ようとしていたのでこの人もついでに綺麗にしておく。よし! 満足っ
「えーと…」
「なんですか??」
コテンと首を傾けじっと顔を見る。話しかけた人の目はちゃんと見ないといけないからね。
「僕は寝るからね…?」
「わかりました。静かにしていればいいです?」
「うん、それでいいよ…」
気のせいかちょっと困った顔をしていたけど、寝ると言っているのでこれ以上会話を伸ばすのはやめた。となるとあまりこの部屋にいない方がいいんじゃないだろうかと思えてくる。だけどまだ俺の年でうろつくにはハードルが高すぎるだろうか? いなくなったと騒がれても困るし。
(宿の中だけならいいかな?)
この世界に生れ落ちて初めて見る人が住んでいる建物だ。それを黙って見過ごすほど愚かではない。静かに扉を開き廊下へ出てまずは気になっていた汚れを落とす。
(クリーン)
うん、これで状態がよく見えるようになった。ここは宿の2階部分で3階はない。だから階段は降りるもののみある。
(部屋数は6部屋…)
廊下を歩いて一つ一つ扉の数を確認した。扉の間隔からしてさっきいた部屋と同じくらいの広さが6部屋あるらしいことがわかる。次に階段を下りながらここも綺麗にしておく。俺みたいに背が低いと階段を降りるのも一苦労で、手すりを使わないと厳しいのにそれが汚れているとかいやだからね。
1階部分に降りると先ほど宿を利用するときに行ったカウンターとテーブルと椅子がいくつか並んでいた。ここからだとよく見えないけどカウンターの奥は多分厨房だろうか? それとさらに奥にこの宿の人の部屋があるのかもしれないね。
(ここもクリーンクリーン!! …ふぅっ)
満足して出てもいない額の汗をぬぐうとカタンと背後で音がした。
「え、なにこれ綺麗になってる!」
宿泊の受付をしてた女の人だ。どうやらカウンターの奥の方にいたらしく、俺が1階に降りてきた音に気がついて顔をだしたみたい。
「あの~ 勝手にごめんなさい?」
あまりの汚さについ宿主の許可も得ずにやってしまったので念のため謝ってみた。これで怒られたらどうしようか…流石に元に戻すことはできない。俺が未熟なだけで戻すような魔法もあるかもしれないけども、普通に考えたら汚い状態は病気にもなりやすいから綺麗にするのは喜ばれるもの…
「これ君がやったの…? え、すごいっ どうやって!」
「おわっ?」
近いっ 顔が近いよおねーさん!! 喜んでくれてるみたいでよかったけどっ なんかいい匂いもするし、落ち着かないから離れて~~
「おおおお、おしっ 教えますから離れて!」
「あ、そうね…会話をする距離じゃないわ」
あー驚いた…周りが見えなくなるタイプの人なのかな。今後こういった人には気をつけないと。
「はぁ…えと、クリーンというスキルです」
「スキルか~…じゃあ私には無理かな」
「え? そんなことないですよ? スキルは人によってかかる時間は違いますけど、繰り返し使いたいスキルを思い浮かべて…例えば今回のだと掃除道具に魔力を込めながら掃除をするとかを繰り返していれば、いずれ覚えます」
「うーんそれはわかるんだけどね~ 根気が続かないというか」
そんなこと言われてもそこまでは俺も責任持てない。こればかりは本人が頑張るしかないことだと思うよ。
「まあ気が向いたらやってみるわ。それでなんだけどさ、ついでにこっちもお願いできないかな」
示されている指の先はカウンターの裏側…つまり厨房か。もしかして俺が綺麗にしないとその汚いままの厨房で食事が作られるってこと? でもこれは丁度いいかもしれない。綺麗にするついでにちょっと厨房を借りられないだろうか?
「綺麗にしたら厨房ちょっと使わせてもらってもいい??」
「え…それはいいけども、誰が使うの?」
誰って今ここに俺に強いないじゃん…だから俺は自分に指を向ける。すると俺のことを足元から頭のてっぺんまでじっくりと視線を向けられた。おおう…これって目の前でやられると中々不快なことだったんだね。あまりいい気分がしない。
「ダメならこの場で…」
「え、あっ だめじゃないよ! ただね君の身長だと色々手が届かないんじゃないかと思ってね」
「大丈夫」
「そう?」
許可を貰えたので早速厨房へと足を踏み入れた。離れたところから見ただけだったけどやっぱりあまりきれいじゃない。道具とかはきれいみたいだけど床とか壁とか結構汚い。早速スキルで片っ端から綺麗にしていった。
「これでよし…っ」
「おーもとはこんなに綺麗だったのね~」
普段から綺麗にしろよという視線を送りつつ俺は早速厨房を使わせてもらうことにした。
「ところで何をするのかな~?」
「え、お腹空いたから自分の食事用意するだけだけど?」
「あらそうなの? だったら綺麗にしてもらったしパンとスープでよければ出せるわよ」
「パンとスープ!」
「ちょっと待ってね温めなおすから、そっちで座って待ってて」
ずっと森で過ごしていたからパンもスープも食べていなかった。大体魚か果物あとはたまに肉くらい。体を維持するのに必要なものはフェンリル母さんからの魔素の受け取りだったから。
テーブルが並んでいるところに行って椅子によじ登り座って大人しく待つ。だけどおかしいいな…スープを温めているはずなのに匂いがしない。普通温かい物って温めると匂いが漂ってくるはずのものだけど…
「は~いお待たせ!」
テーブルの上には木の器に温められたと思われるスープと木のお皿にパンが2つ。ひとまずスープを飲んでみることにする。あー…予想通り。煮た野菜の味がするにはするがそれとほんのり塩味だけしかしない。野菜は何かの芋っぽい。あまり火が通っていないのかシャリシャリする…いったんスプーンから手を放し今度はパンを手にする。持った瞬間顔をしかめた。
「ふんっ」
スプーンを手に取り柄の部分をパンに突き刺すように叩きつけた。どうにか半分に割れ周りには細かなパンくずが散らばる。こうでもしないとパンが割れないなんてどんな硬さだよと…まあ硬くてもパンはパンだしと一応食べてみる。なんだろう…なんか酸っぱい。この世界で初めて食べるパンとスープの出来にすごくがっかりしてしまった。
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