転性とか聞いてない!

れのひと

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19話 ユリア・バレ・マールブランシュ

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「さて…」

 目の前には本が1冊…俺のペンダンドが形を変えたものだ。今日の学校での授業が終わって俺は寮へ戻ってきている。しばらく見るつもりはなかったのだが今日のステータスボード作りで本当の自分の名前を知ってしまい、流石に気になってしまったのでこの説明書とやらを見てみることにした。前回は目次を確認しただけでやめてしまったが今回は必要な内容だけ確認しようと思う。


   ―――― 目次 ――――

 この国の名前 …3
 王族について …5
 貴族について …6
 平民について …7
 家族について …8
 本人の情報  …10
 最後に    …14
 日記     …16

   ――――――――――――


 やはりここは家族についてみておくべきだろうか。8ページ目、家族についてを開く。そこには父と母の名前、2人の姉妹の名前が書かれていた。父はこの国の王様。姉が2人で、ソニアとユリア。

(ユリア・バレ・マールブランシュ…5年前には10歳だったみたいだから今は15歳か…)

 どうやら姉であるユリアと同じクラスになってしまったみたいだ。つまりこれからしばらく一緒に勉強することになる。記憶がないからどんな人だったのかはわからないし、それに向こうの俺に対する記憶がどうなっているのかも不明なので少し慎重に動くべきだろうか。そもそもなぜ俺は記憶をなくしサリア姉と暮らしていたのか…

(まあユリアは知らないふりしてクラスメイトとして付き合っていけばいいだろうが…サリア姉にはそのうち少し話を聞いてみるほうがいいかな)

 目次に書かれている他の項目は学校で習うことかもしれないので、ひとまず放置でいいだろう。問題はこの日記になるわけだが…これにはきっとこのペンダントに気がついてからのことが書かれていると思われる。これを読むべきかどうかが問題である。知ることは出来るが思い出すのとは違う。その内容を受け入れられるかどうか…もしかすると記憶がなくなった原因もわかるかも知れないが、わかったところで思い出せるわけでもないだろうし解決するかも不明。

(日記はまだ保留かな。では次に考えなければならないのは…)

 そのとき丁度おなかがなった。寮に戻ってから食事を済ませていないことに気がつく。俺は立ち上がると入り口にある魔方陣を起動させ食堂へ繋いだ。幸いなことにまだ食堂のしまる時間ではなかったようで滑り込みで食事にありつけそうだ。まだ人も少しいるようでそれを眺めていると1人の女の子に視線が釘付けになった。

(ユリア・バレ・マールブランシュ…)

 彼女は1人で食事をしていた。どうやら他に知り合いはいないようだ。厨房にいるおばちゃんに注文して食事を受け取ると、俺は彼女の目の前の席についた。

「…誰? 他に空いてるじゃない」

 どうやらユリアは俺がクラスメイトだということに気がついていないようだ。というかこの様子だと弟だと言うことも知らないとみて間違いないだろう。

「同じクラスのディビって言うんだけど…流石にあったばかりじゃみんなも名前を覚えるのは無理だよね」
「なんで私に声かけたのよ…」
「クラスメイトを見かけたからかな? 折角だから話してみようかと思って」

(まあ、姉がどんな人物なのか興味があるってのが本音なんだけどね。)

「変な人…」

 あきれた顔をしつつも律儀に返事を返してくるユリアに俺は好感を持てた。無視することも出来たはずなのにそうしないのは俺と交流をしようとする表れでもあるだろう。

「えーと…ユリアさん?」
「ユリアでいいわ面倒でしょ。私もディビって呼ぶから」
「じゃあユリア」
「なに?」
「ユリアって何年1年生やってるの?」
「……いきなりその質問? まあいいけど…5年よ。魔法は出来るんだけど他が全然だめでさ、どうにか頑張って食いついているところよ」

 ユリアの話によると1教科だけ出来てもやはり上には中々上がれないらしい。半年後の試験で落とされるということなんだろう。

「同い年の姉がいるんだけど、魔法は私より出来ないくせに他が普通より少し出来て、今3年生なの。なんか釈然としないわ…」
「そっか程よく全部出来たほうが上に上がれるんだね」
「あれよ、多分明日決めると思うけどグループ。これによってはまだ可能性が見えてくるの」
「グループ?」
「そ。実技試験用のグループ分け。筆記試験は自分で何とかしなければならないけど、実技は別。ここで1/3ほど落とされる。バランスの取れたグループに入れないと終わるわね」

(中々厳しい試験のようだ…メンバーは吟味しないといけないってことか)

「ちなみにディビは何が出来るの? 私が得意なのは攻撃魔法なんだけど」
「んー…まあ武器の扱いはほどほどかな…魔法は……今日訓練所壊して起こられた。まあ魔法自体普段使ったこともなかったからよくわかっていないんだけどね」
「……あなただったの、あの騒ぎは」

 どうやらユリアは他のテストをしているときに騒ぎだけは耳に入ってきていたようだ。俺の言葉に驚いて食事をしていた手が止まっている。

「ふぅ~ん…」

 ユリアが俺をじろじろと値踏みするかの如く眺める。何かを考えているようにも見えるが実際はわからない。

「ねえ、もし空きがあったら明日私もグループに入れてよ」
「それはいいけど…実際まだ誰と組もうとか何も考えてないし…」
「じゃあ約束っ」

 ユリアは嬉しそうに微笑むと食べ終わった食器を片付け食堂から出て行った。1人残された俺は明日のグループ分けのこととユリアのことを考えつつ残っていた目の前の食事を片付けた。
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