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11話 誕生日
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外で駆け回り騒ぐ子供たちの声。俺もその中に混ざり一緒に走り回る。
「そっちいったぞーっ」
俺がその子供たちに追い回されていた猫の進路を塞いだ。俺たちは猫を捕まえようと追い回していたのだ。すっと俺ががしゃがみこみ手を出すと警戒していた猫がおとなしくなった。そればかりか近寄り体をこすりつけ喉をごろごろと鳴らし始める。
「あー…またディビにもってかれたよ…」
「やっぱり動物はかわいいね~」
猫の喉を撫でていた俺ははひょいっと猫を抱き上げた。猫を追い回していた子供達はいじめていたわけではなく、ただ純粋に猫に触れたかっただけなのだ。俺にに抱かれた猫を横から手を出し撫で回している。
「ほんとディビは動物にすかれるよねー」
「いや、動物だけじゃないみたいだぜっ」
ひとしきり猫を子供達が撫で回していると流石にイヤになったのか猫は逃げ出し、どこかへと去っていった。その様子を眺めた後俺たちは空が赤くなるまで遊ぶ。子供達は時間が来るとそれぞれの家へと帰っていった。1人残された俺だけはその場で木にもたれ座り込んだ。まだ俺にとっては帰る時間ではないのだ。
「あら、今日も遅くまで遊んでいたのね」
「お帰りサリア姉」
丁度そこへ女性が通りかかった。もちろん分かったうえでの行動だが。
「待ってたんだよ。だって今日は俺の10歳の誕生日だぜ?」
サリア姉はあきれた顔をしてため息をついた。確かに今日は俺の10歳の誕生日だがその買出しの帰りに待ち伏せをしているなんて思いもしなかったのだろう。そんな様子がそのまま顔に出ていた。
「ほら、荷物持つからかして」
「普通自分のためのものを手伝いますか…?」
「え…普通じゃないのか」
俺がサリア姉のほうをじっと見るとあわてて目を伏せた。軽く息を吐き呼吸を整えている。これは昔からのサリア姉の癖だ。俺がじっと見たりするとまず視線を外される。理由があるらしいのだが…いやでもそのうち知ることになるから今は知らなくていいといわれた。
「普通はおとなしくまってるもんですよ?」
「でもこの方が早いじゃないかっ」
「もぉ~…」
ひょいと俺は荷物を取り上げる。するとサリア姉はため息をついた。あきれつつもどこか嬉しそうだ。2人は肩を並べそのまま家へと帰っていった。建物の中へ入るとサリア姉は早速支度を始めるらしく奥の部屋へと向かった。それを横目で見つつ部屋にいるもう1人の人物へと声をかける。
「じいちゃんじいちゃん俺今日で10歳だぞ」
「おーそうだったな~」
じいちゃんはどこか遠くを見ているかのように俺と視線が合わなくなった。昔を思い出しているのかもしれないな。
「もうここにきて5年だものな」
「うん、ここの生活楽しかったよ」
俺は素直にニコニコと男に笑顔を振りまいた。
「ほんとこんな大きくなって…」
すると瞳をうるうるさせじいちゃんは俺に抱きついてくる。
「ちょっじいちゃんっあつくるしい…」
「いいじゃないかへるものでもないし…」
じいちゃんに抱きつかれ逃げるに逃げれない状態俺はかなり困っていた。何かあるとすぐこの状態になる。なんでみんな自分に抱きついてくるのだろうといつも不思議に思っているくらいよくあることなんだ。嫌われているよりはいいけども毎回だとさすがに暑苦しい。
「ちょっとおじいちゃんまたなの…」
にぎやかな声に反応してサリア姉が奥から出てきた。いつものことなのでそれだけ言うとまた奥へともどってしまう。まだ準備が終わってないようだ。
「もぉーサリア姉たまには助けてくれてもいいのに~」
「10歳になったんだしばらく家を出るんだろう?」
「え、うん…」
「じゃあちぃーとばかりじいちゃんに甘えておいておくれよ…」
仕方ないとばかりに俺は食事の時間までおとなしくいい様に遊ばれるのだった…
***
「じいちゃん…これじゃ女の子だよ」
「うむ…ちとやりすぎたか?」
食事を待つ間俺は誕生日なんだから着飾れといわれ着せ替え人形のようにされていた。今着ている服はサリア姉の小さいときのものだ。質素だがかわいらしいワンピースだ。それにあわせ髪の毛もポニーテールにされている。
「髪はいいけど服はないわ…じいちゃんボケたの?」
「似合うとおもったんだがな~」
「それよりほら、いつもより豪華な食事だよーっ」
サリア姉に言われテーブルを見ると普段食べているものより少しだけランクの高いものがたくさん並んでいた。
「サリア姉奮発したねー」
「そりゃー10歳のお祝いだもの。それに3日後には学校の寮に入るし、一緒に食事するのもあと少し。ここで出さなければいつだせというのかしら?」
「ほんと一時はどうなるかと思ったが…なんとかなってよかったわい」
5年前この家にサリア姉が帰ってきた時、5歳になる俺を抱えていた。城でメイドとして勤めていたはずだったらしいのだが、どうやら解雇されて自宅へ帰ってきたらしい。その帰り道1人でいた記憶を失ったらしい男の子を拾ったらしく連れてきた。10歳になったらどうせ学校に行きその後独り立ちするのだから、それまでここにおいて欲しいとサリア姉がじいちゃんに頼み込んだ。幸いサリア姉が最後にもらってきた給金が多めにもらえたらしく、しばらくの生活も問題なさそうだと判断され俺はこの家で一緒に暮らすことになった。今ではサリア姉も学校の先生として再スタートをしており、俺も家族同然として今まで過ごしてきたわけだ。
「それでどうだ記憶は少しくらい思い出したのか?」
「う~~ん…それがさっぱり?」
「もういいじゃない思い出せないなら…このままディビとして生きていけば」
「そうだね。思い出したらその時はその時で…かな」
俺たちは楽しくいろんなことを話しながら食事をした。今までのこと、これからのこと…色んな楽しかったことや大変だったこと、それらすべてが俺にとっては宝物のようだった。
そして3日後、学校への入学の日がやってきたのだった───
「そっちいったぞーっ」
俺がその子供たちに追い回されていた猫の進路を塞いだ。俺たちは猫を捕まえようと追い回していたのだ。すっと俺ががしゃがみこみ手を出すと警戒していた猫がおとなしくなった。そればかりか近寄り体をこすりつけ喉をごろごろと鳴らし始める。
「あー…またディビにもってかれたよ…」
「やっぱり動物はかわいいね~」
猫の喉を撫でていた俺ははひょいっと猫を抱き上げた。猫を追い回していた子供達はいじめていたわけではなく、ただ純粋に猫に触れたかっただけなのだ。俺にに抱かれた猫を横から手を出し撫で回している。
「ほんとディビは動物にすかれるよねー」
「いや、動物だけじゃないみたいだぜっ」
ひとしきり猫を子供達が撫で回していると流石にイヤになったのか猫は逃げ出し、どこかへと去っていった。その様子を眺めた後俺たちは空が赤くなるまで遊ぶ。子供達は時間が来るとそれぞれの家へと帰っていった。1人残された俺だけはその場で木にもたれ座り込んだ。まだ俺にとっては帰る時間ではないのだ。
「あら、今日も遅くまで遊んでいたのね」
「お帰りサリア姉」
丁度そこへ女性が通りかかった。もちろん分かったうえでの行動だが。
「待ってたんだよ。だって今日は俺の10歳の誕生日だぜ?」
サリア姉はあきれた顔をしてため息をついた。確かに今日は俺の10歳の誕生日だがその買出しの帰りに待ち伏せをしているなんて思いもしなかったのだろう。そんな様子がそのまま顔に出ていた。
「ほら、荷物持つからかして」
「普通自分のためのものを手伝いますか…?」
「え…普通じゃないのか」
俺がサリア姉のほうをじっと見るとあわてて目を伏せた。軽く息を吐き呼吸を整えている。これは昔からのサリア姉の癖だ。俺がじっと見たりするとまず視線を外される。理由があるらしいのだが…いやでもそのうち知ることになるから今は知らなくていいといわれた。
「普通はおとなしくまってるもんですよ?」
「でもこの方が早いじゃないかっ」
「もぉ~…」
ひょいと俺は荷物を取り上げる。するとサリア姉はため息をついた。あきれつつもどこか嬉しそうだ。2人は肩を並べそのまま家へと帰っていった。建物の中へ入るとサリア姉は早速支度を始めるらしく奥の部屋へと向かった。それを横目で見つつ部屋にいるもう1人の人物へと声をかける。
「じいちゃんじいちゃん俺今日で10歳だぞ」
「おーそうだったな~」
じいちゃんはどこか遠くを見ているかのように俺と視線が合わなくなった。昔を思い出しているのかもしれないな。
「もうここにきて5年だものな」
「うん、ここの生活楽しかったよ」
俺は素直にニコニコと男に笑顔を振りまいた。
「ほんとこんな大きくなって…」
すると瞳をうるうるさせじいちゃんは俺に抱きついてくる。
「ちょっじいちゃんっあつくるしい…」
「いいじゃないかへるものでもないし…」
じいちゃんに抱きつかれ逃げるに逃げれない状態俺はかなり困っていた。何かあるとすぐこの状態になる。なんでみんな自分に抱きついてくるのだろうといつも不思議に思っているくらいよくあることなんだ。嫌われているよりはいいけども毎回だとさすがに暑苦しい。
「ちょっとおじいちゃんまたなの…」
にぎやかな声に反応してサリア姉が奥から出てきた。いつものことなのでそれだけ言うとまた奥へともどってしまう。まだ準備が終わってないようだ。
「もぉーサリア姉たまには助けてくれてもいいのに~」
「10歳になったんだしばらく家を出るんだろう?」
「え、うん…」
「じゃあちぃーとばかりじいちゃんに甘えておいておくれよ…」
仕方ないとばかりに俺は食事の時間までおとなしくいい様に遊ばれるのだった…
***
「じいちゃん…これじゃ女の子だよ」
「うむ…ちとやりすぎたか?」
食事を待つ間俺は誕生日なんだから着飾れといわれ着せ替え人形のようにされていた。今着ている服はサリア姉の小さいときのものだ。質素だがかわいらしいワンピースだ。それにあわせ髪の毛もポニーテールにされている。
「髪はいいけど服はないわ…じいちゃんボケたの?」
「似合うとおもったんだがな~」
「それよりほら、いつもより豪華な食事だよーっ」
サリア姉に言われテーブルを見ると普段食べているものより少しだけランクの高いものがたくさん並んでいた。
「サリア姉奮発したねー」
「そりゃー10歳のお祝いだもの。それに3日後には学校の寮に入るし、一緒に食事するのもあと少し。ここで出さなければいつだせというのかしら?」
「ほんと一時はどうなるかと思ったが…なんとかなってよかったわい」
5年前この家にサリア姉が帰ってきた時、5歳になる俺を抱えていた。城でメイドとして勤めていたはずだったらしいのだが、どうやら解雇されて自宅へ帰ってきたらしい。その帰り道1人でいた記憶を失ったらしい男の子を拾ったらしく連れてきた。10歳になったらどうせ学校に行きその後独り立ちするのだから、それまでここにおいて欲しいとサリア姉がじいちゃんに頼み込んだ。幸いサリア姉が最後にもらってきた給金が多めにもらえたらしく、しばらくの生活も問題なさそうだと判断され俺はこの家で一緒に暮らすことになった。今ではサリア姉も学校の先生として再スタートをしており、俺も家族同然として今まで過ごしてきたわけだ。
「それでどうだ記憶は少しくらい思い出したのか?」
「う~~ん…それがさっぱり?」
「もういいじゃない思い出せないなら…このままディビとして生きていけば」
「そうだね。思い出したらその時はその時で…かな」
俺たちは楽しくいろんなことを話しながら食事をした。今までのこと、これからのこと…色んな楽しかったことや大変だったこと、それらすべてが俺にとっては宝物のようだった。
そして3日後、学校への入学の日がやってきたのだった───
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