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10話 罠?
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「失礼します」
ドアをノックしたイズカラは軽く頭を下げ中へと入った。この部屋の主に呼び出されていたのだ。一礼の後顔を上げるとそこには1人の男が座っていた。私はイズカラの後に続き部屋に入るとその男の背後に控えめに立つ。
「今日はどのような用件でしょうか?」
「うむ、ディビーノの様子を聞かせてもらいたい」
「はあ、そうですね…5歳にしてはずば抜けた身体能力だと思われます」
「ふむ、続けて…」
「こちらからは少し厳しく提示していたのですが、それをあっさりとこなし…むしろ…それ…以……」
会話の途中でイズカラがふらふらとしながら突然倒れこみ動かなくなった。そのままその場に崩れ落ち寝息を立て始めていたのだ。
「どうやら薬が効いたようです」
「そうか…」
背後にある大きな窓を開け私が呪文を唱えると室内の空気が渦巻き外へを流れ出す。室内にまかれていた薬を外へと追い出し効果をほとんど感じさせない状態へと室内を元に戻しているのだ。
男がパチンと指を鳴らすとその場に倒れていたイズカラが宙に浮いた。カーテンで仕切られた先へと運ぶようだ。そのカーテンの中には先に呼ばれていたリチルとミュゼも転がっている。その様子を眺めていた私は軽くため息をつきながら言葉を紡いだ。
「本当にこれでいいのでしょうか…」
「ん? どうであろうな…こればかりは王である私にも判断がつかん」
私ははそこに転がる3人を眺めながら再びため息をつくのだった。
「さて、始めるかね」
「はい、お手伝いします…」
寝ている3人の足元に魔方陣が現れ、ゆっくりと光が現れる。それはだんだん強くなりそしてゆっくりと消えていった。その光が消えたときにはすでに3人の姿は跡形もなくなっていたのだった。
***
今日の午後からは本当ならサリアが学問と教養を教えてくれることになっていた。だがサリアは急用ができたらしく別のメイドに呼ばれ姿を消した。仕方がないので私はここまでの出来事を日記にまとめておくことにする。
(時間があいちゃったな…どうしようかしら)
家族には悪いけどここから独り立ちすることでも私は考えている。5歳が独り立ちを考えるとか早すぎるかもしれないが、情報を搾り取られるようなことになったら目も当てられない。そのとき自分がどんな状態になっているか想像もつかないのだから…
(1人でどうやって生活すればいいのかしら…)
外に出たときにもっと他の人の生活方法を学べたらよかったのだろうけれど、なにぶん時間も足りなかったので情報が足りない。次に行く機会があればそのときにはぜひ見ておきたいものだと私は思った。
(そうだ空間扉をもっと練習しよう)
扉と扉の空間を繋げるから空間扉と勝手に呼んでいるのだけど、これがまだちゃんと成功していなかったことを思い出したのだ。同じように風呂場と自分の部屋を繋げるようにイメージをし練習をする。すると前よりイメージの仕方がよかったのが3回に2回は成功するようになってきた。
(ちょっと距離を伸ばしてみようかしら?)
今度は風呂場からいつも食事をしている部屋にでも…さらにイメージを固めてから扉を開けてみる。どうやら繋がったようだ。
「あれ…?」
室内には誰もいなかった。本来なら食事の準備や部屋を片付けたりとかで、必ずといってもいいほど誰かがいる部屋のはずである。
(変ね…まあ練習するのに都合はいいのだけど)
たまたまだろうと思いそのまま扉の開け閉めを繰り返す。少し距離が伸びても成功率は変わらないようで2,3回に一度失敗をした。
(成功率は距離に関係ないみたい)
まあ練習すればきっと成功率も上がるのだろうと私はいろんな扉に空間を繋げ、練習をたくさん続けた。
食事の時間になったようでサリアが呼びにきた。どうやらぼんやりと空間扉の練習を続けていたらいつの間にかこんな時間になっていたようだ。それにしてもやはりおかしい。あれから何度か食事の部屋へも繋いでいるのだが誰とも会うことはなかったのだ。それなのに食事だと呼ばれ今その部屋へと案内されている。そんなことを考えていると目的の部屋の前についていた。
「…?」
扉を開けて中に入るとすでにみんなそろって座っていた。おかしなことにテーブルの上にはお皿どころかナイフやフォークすら載っていないのだ。みんな首をかしげている。
「ディビーノ席につきなさい」
「はい…」
父様に声を掛けられ私はおとなしく席についた。これはいったいどういうことなのだろうか?疑問に思っても答えは出てこないのだけど、もちろん誰もその答えを知らず戸惑っているのが見える。ただ1人を除いてだが…
「準備が終わりました…」
「そうか…」
サリアが父様に向かって何かの準備が終わったことを告げる。どうみても食事の準備には見えない。どことなく2人は悲しそうな顔をしているような気もする。
「お父様、なんの準備が終わったんですの?」
疑問に思ったソニアが父様に尋ねた。だが父様は答えない。ただ黙ってじっとこちら…私を見ているのだ。
「うぅ~ん…なんか眠い…?」
ふらふらと頭を揺すりながらユリアが机に伏せて眠ってしまった。すると黙っていた母もそしてさっきまでしゃべっていたソニアもその場で眠ってしまう。あわてて私は立ち上がった。どう考えてもおかしい…だけど足元がふらつき思うように動けない。
「これは一体…?」
「ごめんなさいディビーノさま…」
そのままだんだんと瞼が重くなり、最後に目に入ったのは涙を流すサリアの顔と視線をそらした父様の横顔だった……
ドアをノックしたイズカラは軽く頭を下げ中へと入った。この部屋の主に呼び出されていたのだ。一礼の後顔を上げるとそこには1人の男が座っていた。私はイズカラの後に続き部屋に入るとその男の背後に控えめに立つ。
「今日はどのような用件でしょうか?」
「うむ、ディビーノの様子を聞かせてもらいたい」
「はあ、そうですね…5歳にしてはずば抜けた身体能力だと思われます」
「ふむ、続けて…」
「こちらからは少し厳しく提示していたのですが、それをあっさりとこなし…むしろ…それ…以……」
会話の途中でイズカラがふらふらとしながら突然倒れこみ動かなくなった。そのままその場に崩れ落ち寝息を立て始めていたのだ。
「どうやら薬が効いたようです」
「そうか…」
背後にある大きな窓を開け私が呪文を唱えると室内の空気が渦巻き外へを流れ出す。室内にまかれていた薬を外へと追い出し効果をほとんど感じさせない状態へと室内を元に戻しているのだ。
男がパチンと指を鳴らすとその場に倒れていたイズカラが宙に浮いた。カーテンで仕切られた先へと運ぶようだ。そのカーテンの中には先に呼ばれていたリチルとミュゼも転がっている。その様子を眺めていた私は軽くため息をつきながら言葉を紡いだ。
「本当にこれでいいのでしょうか…」
「ん? どうであろうな…こればかりは王である私にも判断がつかん」
私ははそこに転がる3人を眺めながら再びため息をつくのだった。
「さて、始めるかね」
「はい、お手伝いします…」
寝ている3人の足元に魔方陣が現れ、ゆっくりと光が現れる。それはだんだん強くなりそしてゆっくりと消えていった。その光が消えたときにはすでに3人の姿は跡形もなくなっていたのだった。
***
今日の午後からは本当ならサリアが学問と教養を教えてくれることになっていた。だがサリアは急用ができたらしく別のメイドに呼ばれ姿を消した。仕方がないので私はここまでの出来事を日記にまとめておくことにする。
(時間があいちゃったな…どうしようかしら)
家族には悪いけどここから独り立ちすることでも私は考えている。5歳が独り立ちを考えるとか早すぎるかもしれないが、情報を搾り取られるようなことになったら目も当てられない。そのとき自分がどんな状態になっているか想像もつかないのだから…
(1人でどうやって生活すればいいのかしら…)
外に出たときにもっと他の人の生活方法を学べたらよかったのだろうけれど、なにぶん時間も足りなかったので情報が足りない。次に行く機会があればそのときにはぜひ見ておきたいものだと私は思った。
(そうだ空間扉をもっと練習しよう)
扉と扉の空間を繋げるから空間扉と勝手に呼んでいるのだけど、これがまだちゃんと成功していなかったことを思い出したのだ。同じように風呂場と自分の部屋を繋げるようにイメージをし練習をする。すると前よりイメージの仕方がよかったのが3回に2回は成功するようになってきた。
(ちょっと距離を伸ばしてみようかしら?)
今度は風呂場からいつも食事をしている部屋にでも…さらにイメージを固めてから扉を開けてみる。どうやら繋がったようだ。
「あれ…?」
室内には誰もいなかった。本来なら食事の準備や部屋を片付けたりとかで、必ずといってもいいほど誰かがいる部屋のはずである。
(変ね…まあ練習するのに都合はいいのだけど)
たまたまだろうと思いそのまま扉の開け閉めを繰り返す。少し距離が伸びても成功率は変わらないようで2,3回に一度失敗をした。
(成功率は距離に関係ないみたい)
まあ練習すればきっと成功率も上がるのだろうと私はいろんな扉に空間を繋げ、練習をたくさん続けた。
食事の時間になったようでサリアが呼びにきた。どうやらぼんやりと空間扉の練習を続けていたらいつの間にかこんな時間になっていたようだ。それにしてもやはりおかしい。あれから何度か食事の部屋へも繋いでいるのだが誰とも会うことはなかったのだ。それなのに食事だと呼ばれ今その部屋へと案内されている。そんなことを考えていると目的の部屋の前についていた。
「…?」
扉を開けて中に入るとすでにみんなそろって座っていた。おかしなことにテーブルの上にはお皿どころかナイフやフォークすら載っていないのだ。みんな首をかしげている。
「ディビーノ席につきなさい」
「はい…」
父様に声を掛けられ私はおとなしく席についた。これはいったいどういうことなのだろうか?疑問に思っても答えは出てこないのだけど、もちろん誰もその答えを知らず戸惑っているのが見える。ただ1人を除いてだが…
「準備が終わりました…」
「そうか…」
サリアが父様に向かって何かの準備が終わったことを告げる。どうみても食事の準備には見えない。どことなく2人は悲しそうな顔をしているような気もする。
「お父様、なんの準備が終わったんですの?」
疑問に思ったソニアが父様に尋ねた。だが父様は答えない。ただ黙ってじっとこちら…私を見ているのだ。
「うぅ~ん…なんか眠い…?」
ふらふらと頭を揺すりながらユリアが机に伏せて眠ってしまった。すると黙っていた母もそしてさっきまでしゃべっていたソニアもその場で眠ってしまう。あわてて私は立ち上がった。どう考えてもおかしい…だけど足元がふらつき思うように動けない。
「これは一体…?」
「ごめんなさいディビーノさま…」
そのままだんだんと瞼が重くなり、最後に目に入ったのは涙を流すサリアの顔と視線をそらした父様の横顔だった……
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