転性とか聞いてない!

れのひと

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6話 教えてリチル先生

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 今日も朝起きた後はいつものように家族で食事を済ませた。昨日自分がこの国の第一王子だと知り、少し家族の見え方が変わってくる。父様は王様ということになるわけだが…見た感じ普通の父親にしか見えないのはやはり息子の視線だからなんだろう。

「ん、顔に何かついているか?」
「顔には目と鼻と口がついていますが?」
「ごふっ…あたりまえじゃない~もぉ~」

 じっと見ていたことをごまかすために適当に答えたらユリアがむせてしまったみたいだ。後ろに控えているメイドが背中をさすったり水をあたえたりしている。

「行儀わるいわね…」

 その隣のソニアは呆れ顔をしているが実はむせかけていたのを私はきがついていたけれど、とりあえず黙っておいた。家族の様子を眺めているとどうやら『転生者』については聞いてくる感じはない。知られていないのかもしれない。もちろん相手から言われない限り言うつもりも無いので放置しておく。

「そういえば今日から本格的に家庭教師の先生方が教えてくださるそうね」
「はい、母様。今日は魔術と剣術を教えていただきます」
「そうか、基礎をしっかりと教えてもらいなさい」
「はい、父様」

(もちろんそのつもりよ。最低限出来ないとこれから自分の身を守るのに使えないものね)

「初めてのことなので楽しみです」

 これはもちろん本心からいっているので自然と笑みがこぼれる。そしてまた忘れていたが笑顔はオートチャームが発動しやすい。父様と母様の目がキラキラ輝いて見えるが…さすが王族というべきか飛び掛ってはこない。そんな感じに雑談をまぜつつ食事をすませ私は部屋に戻ってきた。

 今日は城の中にある訓練所で魔術と剣術の練習をする予定になっていて、サリアが用意してくれた服に着替えた私は初級者用の防具を教えられながら装備した。全部みにつけるとちょっとした冒険者に見えないことも無く、気持ちだけ強くなった気がしてしまう。

「どうサリア、こんな感じでいいのかな?」

 防具を全部装備したあとサリアに最終確認をお願いした。

「はい。問題なくちゃんと装備できてますよ」

 気持ちサリアの尻尾が右へ左へと揺れている。つい手が伸びそうになってしまったがそんな気持ちを抑え、前を歩くサリアについて訓練所に向かった。

 訓練所は中庭の右側にあった。右側といっても今入ってきた入り口から見てなので実際は別の入口から入れば左ともいえる。その中庭はかなり広く1/3を訓練所が占めていて、丸い弓道の的みたいなものや何に使うのかわからない道具などがいくつか設置されていた。

(今日からここで訓練なのね!剣術はともかく魔術は初めてだもの楽しみだわ。)

 きょろきょろと訓練所内を眺めているとどうやら先生達が来たようだ。今日は魔術と剣術なのでミュゼとリチルが教えることになっている。

「あ、先生今日はよろしくお願いします」

 嬉しさのあまり満面の笑みで先生達をむかえ早速後悔した。リチルに抱きつかれ「なにこれやばいめっちゃかわいいんだけど!」と頬ずりされまくり、ミュゼは頭をグリグリと撫で回してきた。

「一家に一台欲しいわ~」

(それは…無理ですよ?)

 そんな私をサリアが背後からにらみを利かせて見ている。「先生方仕事してくださいね?」といっているかのようだ。

「んじゃーまずは剣術というか武器の扱いからでいいですか?」
「それじゃあ私は隅の方で見学させていただきますわ」

 ミュゼとサリアが訓練所の隅へ移動したのを確認したあと、リチルの武器の扱い講座が始まった。まずは一通り触ってみるとこから始めるようだ。

「じゃあまずはこの細身の剣を振ってみて。振り方は縦横両手と片手と組み合わせて試してみて」

 言われたとおり両手で縦振りと横振り、片手で立て振りと横振りをしてみる。細身なだけあって小さな体でも簡単に振れた。櫻子だったころ学生時代に剣道を少しやっていたのでさすがにこのくらいの剣なら振れる。やっていたといっても大会とかに出たことがあるわけではない。自宅が道場をやっていたので運動がてら毎朝父親にくっついて素振りをしていた程度なので振るだけならなれたものだ。

「リチル先生、こんな感じでいいですか?」

 リチルはポカーンと口を開けていた。

「リチル先生?」
「うそ…初めてのはずですよね。細身とはいえそんな軽がると…」
「重くないですよ?」

(ん~?竹刀より軽いきがするんだけどなぁ)

「ま、まあいいわ。じゃあ次はいわゆる大剣といわれる大きな剣がどこまで振れるか見せてもらうわね」
「初めて見ます。大きいですね~。僕の身長よりありませんか??」

 渡された剣は僕だけじゃなくリチルよりも大きかった。身長のある人が持つと絵になりそうである。とりあえず両手で持つがかなり重く力を込めないと地面から離れてくれそうもない。

「ん~~~しょっ」

 ドガッ

 どうにか少しだけ持ち上げ落とすかのような勢いで縦に一振り…というか落とすと地面が少し削れてしまったようだ。

「大剣はさすがに重いですね~」

 さすがに重いものを持ったのでうっすらと額に汗が浮かぶ。汗をぬぐいながらリチルのほうに視線を送る。

「……」
「?」

 するとリチルが固まっていた。訓練所の隅のほうでミュゼとサリアも固まっていたのは言うまでもない。

「さすが身体能力A…」

 5歳でこの大剣が振れたことに引かれてしまったようだ。実際はなんとか持ち上げて落とした程度だったのだが、それでも十分すごいことなんだとか。

「えーと…まあ一応短剣も振っとく?」
「はい。同じように縦横、両手片手ですか?」
「ん~…両手は無しで、今から私が投げるものをどんどん切ってみてっ!」
「!!」

 次の瞬間何処に持っていたのか次々と丸いものを投げ始めた。目の前に飛んできたのを短剣を横に振り切る。すると中からブワッと何やら粉が舞あがる。

「……けふっなにこれっ」

 視界が粉で見にくくなる中丸いものは飛びつづけた。切るとあるものはびちゃっと音をだし。あるものはさらに粉がでてきたりもした。途中からは色が違うことに気がつき粉が入ってるものは避けて水分があるものを切り落としていく。すると粉のほうは避けても結局割れるんだが下のほうで割れるためその後水分の入ったほうを切ると舞い上がるのを阻止してくれていた。

「終わり…かな?」

 見にくくなっていた視界がクリアになった。シュッと後ろで音がする。あわてて振り向きそれが同じような丸いものだとわかり切ろうとした。…がさっきまでの2つと違う色だった。

「…え?」

 とっさに短剣を持ってないほうの手で掴み投げ返す。切ったらいけない気がしたのだ。

「ふぎゃっ」

 リチルは寸でのところで避け丸いものは地面に落ちて破裂した。

「よよよく気がつきましたね!」
「…何が入っていたんですが?」

 足元を見ると風船の残骸がたくさん落ちていた。投げられていたのは水風船だったようだ。そして最後に投げられたものの残骸は赤い血のような染みを作っていた。

「特性スパイス入りだよっ これを食らうと目が開かず涙が止まらなくなるんですよ!」

 気のせいかリチルの目にはうっすらと涙がたまっている。有効範囲内で割れたということだろう。自分で投げて反撃を食らうとかあきれてしまう。

「さすが身体能力A…」
「最後のだけ殺気? を感じたので…」
「ま、まあなんにせよ実力はよくわかったわ」

 腰に手を当て目を彷徨わせあくまでも実力を見るためだったとリチルは言い張った。その後弓も少し試してみたが引くので精一杯で的にはまったく当たらないという結果になった。

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