転性とか聞いてない!

れのひと

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2話 ケモミミは正義

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 何やら周りから騒がしい音が聞こえ始める。何人ものひとが行き来する足音も聞こえているみたい。ぼんやりとしつつも目をこすり周りを見渡す。その視界に入ったのは覗き込んでいる3人の大人。

「お、目が覚めたみたいですね。私は医師です。なんともないですか?」

 別に体調はおかしく感じないので頷いた。すると残りの2人が安堵の溜息をもらす。それから私の体調を医師が確認すると部屋から出て行った。
 手を見る。やっぱり小さい。自分の手を見る事によりさっきまでのことを思い出してきた。

「大丈夫か?」

 これは覗き込んでいた男性。小さすぎる私から見るとかなり大きな人。

「目を覚ましてよかったわ…」

 こちらは女性。先ほどの男性よりは小柄だけど私よりは全然大きい大人だ。

(誰だろう?)

 服装はかなり上等なものを着ているようだ。男の方は金髪の短髪で緑色の目をしている。女のほうは銀髪ストレートロングで青い目をしていた。2人ともどこかしらディビーノ…というか私に似ていた。つまりは両親という事なのかな。記憶を探ってみる。両親をなんと呼んでいたかである。

「父様、母様…」
「ん、どうした?」
「ごめんなさい。大きな声を出してしまって…」
「構わないよ。どうしたんだね?」
「えーと、怖い夢を見てしまってつい」

 という事にしておいた。まさか自分の性別に驚いて声を上げただとか言えないでしょう。

「そうか。では体調は大丈夫なんだな?」
「はい…」
「わかった…もうじき食事の時間になるから着替えておきなさい」

 両親は揃って部屋から出て行った。残ったのはメイド服を着た人が1人…なんでいるのだろうと首をかしげると、どこからか着替えを持って戻ってきた。どうやらディビーノの専属メイドらしい。
 そのメイドにされるがまま着替えを済ませる。さすが慣れていらっしゃる…こっちがよくわかっていないのにあっという間に着替えが終わる。

「えっと、ありがとう…んーと?」
「サリアです。ディビーノ様」
「サリアありがとう」

 私の言葉にメイドは優しく微笑んだ。まだ10代のように見え、身長もそれほどはない。ただひとつ気になるものがついている。毛足の長い尻尾がついていてしかも動いているときた。そっと手を伸ばしつかんでみる…だってすごく気になるもの。

「いけません…っ むやみにレディの尻尾をつかんでは!」
「…女の人には尻尾がついてるの?」

 首をかしげつつ捕らえ方によっては微妙な感じになってしまうが気になったので子供らしく(?)聞いてみることにした。

「いえ…あの私獣人なので……」

 サリアは顔を赤らめながら目をそらした。

(獣人!人間以外もいるのね。ということは髪の毛が一部少し色が違うようにみえるけど…)

 手を伸ばし少しだけ色が違う髪の毛をつかんでみる。

「ああああっ いけません~~~それは耳ですぅ…」

 垂れた犬の耳だったようだ。さわるとふわふわしていた。ふわふわが気持ちよくついがしがしとさわりまくってしまった。頬も緩む。

(犬耳ふわふわ~)

「ひどいですぅ~~耳と尻尾は敏感なんでかんべんしてください~」

 サリアは座り込み耳をおさえている。顔は赤く目は潤んで上目づかいになっていた。私が立っているのでそうみえるだけなのかもだけど…

(うん、気をつけよう周りから見たらただのエロガキに見えてしまうわね)

「ごめんねサリア。かわいかったのでつい…」

 すこしだけ首を傾け両手をあわせあやまる。そんな私の様子を見ていたサリアはますます顔を赤らめ目線を少しそらした。これはきらわれてしまったのかもしれないと少しだけ不安になる。

「これから食事なのでその後でしたら……」

(よく聞き取れなかったけど後でならもっともふもふしていいってこと?)

 どうやら嫌われたわけではなかったようなので、気を取り直し服装をただしたサリアの後について部屋をでる。長くて立派は廊下だ。装飾や美術品なども置いてあり、どう見ても高そうだ。

(結構いいとこの子供なのかな…メイドがいる時点でそんな気はしてたんだけどね)

 周りを物色しつつ何個か扉を通過し一つの扉の前でサリアは足を止めた。扉を開け中に入るように手で案内をしてくれる。
 私がが部屋に入るとその後から入り扉を閉める。どうやらここが食事のための部屋のようである。大きな長机にテーブルクロスがかけられ、椅子の数が多い。その上座ともいわれる場所に先ほどあった父、その斜め横手に母が座っていた。母の正面がわの席にサリアが椅子を引き待っている。どうやらそこが私の席のようだ。父側は壁で通れないので大きく回って席に着いた。
 それから少しするとさらに女の子が2人部屋に入ってきた。2人は同じ顔をしてて走って私のもとへやってくる。

「ディビ~」
「あ、ずるい~」

 2人は私に抱きつき撫で回した。同じ顔あ2つ私の少し上両側からこちらを見つめている。

「2人とも席に着きなさい」

 母の声で開放される。2人はしかたないといった顔をして大人しく椅子に座った。そのあとサリアがもみくちゃになった私を整えたのはいうまでもない。
 どうやらこれで全員そろったようで食事が順番にでてきた。正しいマナーはよくわからないが父や母の真似をしつつ食べることにした。ときおり横からサリアが手助けをしてくれる。どうやら基本的なことは櫻子のころと変わらないみたいで助かった。記憶があやふやな箇所だけがサリアが何とかしてくれた箇所だ。

「ソニア、ユリア学校はどうですか?」
「はい、難しくてまだよくわかりませんが学友とは楽しくやっているつもりです。」
「えー母様ソニアはこのあい…むぐっ」
「問題ありません。」

 どうやらこの隣に座って口を塞がれてるほうがユリアでその隣の手で口を塞いでいるほうがソニアというらしい。2人は学校へ通っているようだ。

「姉さま達は学校へいっているのですね。僕もいつか行ってみたいです」

(まあ年齢的にそのうちいくのだろうけど無言よりはましよね??)

「はははっ デビィーノはまだ5歳になったばかりじゃないか。10歳になればいくことになるしそれまでは家庭教師とかで…どうだ?」
「父様それはなんの家庭教師になるんでしょうか??」
「そうだな…学問、武術、剣術、魔術、一般教養といった辺りか?」

(魔術…そんなものがある世界なのね)

「沢山あるのですね。何がいいのかよくわかりませんが…」
「ん?迷うくらいなら全部やってみたらいいじゃないか」
「ぜ、全部ですか…」

 後日家庭教師の先生が順番に来てくれることが決定した。そんな話をしながら食事は楽しく終わったと思う。途中「父様も母様もデビィにはあまいんだから~」という声も聞こえていたがまあいいよね。どうやら家族そろって末っ子には甘いらしいし、折角なので甘えておくことにした。もちろん少しだけ戸惑っているのは必死に隠して。

 食事も終わり一度部屋に戻ることになった。サリアが忙しそうに動いている。どうやら入浴の準備をしているらしい。各部屋に風呂とトイレがついいて食事だけはみんなでということだとか。
 お風呂の準備が終わるまでにトイレをすますように言われ、私は1人便器の前で悩む。

「……」

 見たことも無い作りの便器が中央にあった。とりあえず思い出そうと努力してみる。

(うん…覚えていないみたい無意識につかってたのかしら…)

 覚えていないものはしかたない。一度トイレからでてサリアに教えてもらうしかない。多少首を傾げられたが答えられることには必ず答えてくれるらしくて教えてくれた。座って用を足し横についているパネルを触るだけでいいようだ。仕組みはわからないけど使い方は簡単ね。だからきっと覚えていなかったんでしょう。

(これならこの見慣れないものを見たり触ったりする必要もないわね)

 自分の体なのでいずれは慣れなければいけないであろうが、ひとまず後回しにすることが出来胸をなでおろす。トイレから出るとすでにお風呂の準備が整ったサリアが待っていた。
 風呂は見た感じ10畳くらいの広さがあり私の部屋より少し狭いくらいだ。前の世界のお風呂よりはかなり広い。一応脱衣場もある。服を脱ごうと脱衣場に入るとどうやらサリアが脱がせてくれるようで、着替えのときと同じように服をひん剥かれる。5歳は十分自分で着脱くらい出来ると思うのだけどされるがままである。体の小ささのせいで抵抗という抵抗も叶わないのだ。
 サリアに手伝われ服を脱ぎ終わったので風呂場へ足を踏み入れた。

(広いお風呂ーっちょっと嬉しくなっちゃうね)

 腰に手をあて一人でうなずいてしまう。

(…あ、体洗うってことは触らないといけないのか)

 チラリと自分の下半身を見る。流石にまだ見慣れない…そんなことを考えていると背後から声をかけられた。

「お待たせしました。こちらへ。」
「………」

 サリアがタオルを一枚体に巻きつけ、籠に入れた風呂用品らしきものを持って立っていた。どうやら背中を流してくれるようだ。

「あの、サリアさん?僕1人で出来ますよ…」
「これも仕事なので10歳まではお世話させてください。」

(10歳…あと5年も?)

 その後全身くまなくサリアに丸洗いされたのは言うまでもない。抵抗…?小さい私には以下略。

(もうお婿にいけない……っ)

 もとからいけるのかは別としてそんな気分になってしまった。櫻子の記憶があるままなので自分で性別が不安になる。

「あの…」

 ベッドで身悶えていると風呂を片付け終わったサリアが戻ってきていた。またメイド服を着込んでいた。気のせいか少し顔が赤い。

「このあとは仕事もほとんどないので、その…触ってもいいですよ?」

(触る?)

 もう一度サリアを見てみる獣人メイドだ。耳と尻尾がはえていてメイド服を着ている。

「耳と尻尾を触ってもいいってことかな?」
「はい、突然じゃなければ構いません。」

(もふもふし放題?)

 これは私にとっては嬉しいことであった。むしろご褒美ともいえる。動物は割りと好きなのだ。

「じゃあ…」

 許可をもらって触るのはさすがに少し緊張してしまう。手が少し震えてしまった。そっと耳に触れた。やはりふわふわだ。これはたまらない。そのままひたすら耳をなでまくる。途中で気がついたのだがどうやら髪の毛も耳と同じ毛並みをしているらしい。ついでに頭も撫で回す。

(昔犬を飼ってたときもこうやってよく撫でたな~)

 よく見るとサリアは目をぎゅっと閉じ耐えているようだった。気のせいじゃなく顔が赤くなっていた。

(恥ずかしいのかな…?それともくすぐったいのかも?)

 年下に撫でられるという行為はきっと恥ずかしいのだろうと思う。が、本人に許可をもらってる以上少しならいいであろうと今度は尻尾に手を伸ばした。尻尾はさらにふわふわだ。両手で包み揉んでいるかのような触り方をしたり毛並みにそって撫でまくる。よほどくすぐったいのか床に手を着き少し逃げ腰になっていた。息も荒く顔は真っ赤でうっすらと涙も浮かべている。

(…お姉さんがなんかエロイことになっている)

 ちょっとどきりとしてしまった。再び自分の性別、それと年齢が不安になってくるんだけど…

「あ…そろそろ、手を離していただけますか……?」
「はい、やりすぎましたごめんなさい。」
「いえ、大丈夫です…」

 サリアは服装を整えると明かりを消して部屋から出て行った。
 メイドも両親も姉達も妙に私に甘い気がするがなんでだろうと少し疑問に思いつつベッドで横になった。それはそれとしてこれから家庭教師がいろいろくるらしい。多少不安はあるけれど、これでここでの生活もなんとかなるかもしれないと思いつつ眠りについた。 

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