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何が起こったの??

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 森へやってきた。私はいつもより慎重にだけど歩く足取りは早く、そして視線は鋭く薬草を見極めながらいつもよりも奥へと進んでいく。視界の端にはちらちらと映る人間の影…うん、違うのよ? たまたま私が進んでいる方向に薬草が生えている方向にダイスがいるだけなのよ。

 おっといけない…ダイスがちらりと振り返ったわ。私はただ薬草を採取しているだけですよーと。中々よさそうなものが取れたわっ さて、次へ進みましょうか…あれ?

 私は軽く走り出す。

 さっきまで前を歩いていたのにダイスの姿が見えない。もしかして気がつかれたのかしら…だとしたら気を付けないといきなり驚かせてきて大きな声をあげたりしないようにしないと。だってここはいつもよりも森の深い場所。今のところは魔物は見かけないけれど、いつ何に遭遇するかわからない。もしもの時は逃げるか戦うしかないのだから…

 もう少しだけ先へと進む。少し目を離したすきに進んでしまっただけなのかもしれないから。あ…ほら音が聞こえる。草をかき分ける音と走ったりぶつかったりする音が。

「このっ 中々すばしっこいなっと!」

 ダイスだ。ほらやっぱり苦戦しているわっ 武器もないしまだ駆け出しなんだものランクの高い魔物なんて無理なのよ。

「それならっ」

 …え? 何が起こったの?? ほんとに一瞬…瞬きの間に、目を開けた次の瞬間には魔物が倒れていた。急な展開についていけない私はちょっとだけ怖くなる。

 手には汗が…心臓の音が早くなる…視線は魔物に釘付けだ…

「何してんだ?」
「ひゃああああああああっっ」

 突然背後から肩を叩かれ思わず声をあげる。

「わ…ばかっ 大きな声はだめだろうがっ」
「ふぎゅっ」

 ダイスが両手で私の口を塞いだ。これじゃ何も言えないじゃないの!

「…ちっ 気がつかれたか」

 なんで? さっきまで前にいたのにっ というか手をどかしてよ~

「とりあえず落ちつけ…三匹か? 狙われてるぞ」
「…っ」

 狙われてる? 何に?? 手をどけてくれたのでゆっくりと周りを見てみるけど…姿は見えない。

「魔物に決まってるだろう? 名前は…フォレストウルフか」
「な、なっ 三匹も…?」
「ほら姿を現しだした」

 ガサガサと音を立てなが四つ足の魔物が姿を現す…フォレストウルフ。彼らは駆け出しの冒険者にとっては素早くて厳しい相手だ。戦ったことがない私とついさっき初めてフォレストウルフを倒したダイス。この二人で三匹を相手にするのはどう考えても難しいこと…ここで死んでしまうかもしれないっ

「や…やだ…」

 怖くて怖くて足の震えが止まらない。
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