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1章 由雄と健太の夏休み
第186話 とあるダンジョンマスターの記憶6
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とうとうここまで来てしまったな…どうしてこの少女はずっと一人でここまでやれるのだろうか。初級ダンジョン10階層、このダンジョンの最終階層、今そこで少女は少女と向き合っている。
「管理者さーんっ 本当にこのボスを倒したら願いが叶うんですかー?!」
少女は大きな声で俺に話しかけている。勿論その場にいるわけではないので返事は返せないのだが、少女は構わず言葉を続ける。
「私居場所がないんです。どんなところでも邪魔者扱いです…家はとっくに追いだされまして、こう…ダンジョンとか? こないと生きていくことも出来なかったんです」
少女は少女と向き合い爆発物を投げながらもそんなことを口にしていた。もしかしなくても結構重たい過去なのかもしれないのだが、少女の雰囲気がそれをぶち壊してくる。絶対に勝つぞという気迫と投げまくる爆発物。白いスク水に外套…もうね見ているこっちはどう反応していいのかわからん。
「ダンジョンはいくつか回ってきたんですけど、私には厳しくて。とてもじゃないけどクリアー出来そうもなかったんです。でもここなら…誰もが期待していないこのダンジョンなら私でもクリアー出来ますよね…?」
期待していないとか言うなよ…確かに誰もがつまらなそうに帰って行ってしまいろくに人が来ないんだけどもさ! それでもちゃんとこれでもダンジョンだよっ
「どんな形でも構わないの…私の願いが叶うのなら」
少女の投げた爆発物が少女に直撃した。少女がすーっと姿を消していく…残された少女もその場から消えていった。
「ふぅ…終わったな。これでこのダンジョンもランクアップだな」
「ダンジョンってランクアップするんですか?」
「ああ攻略されると初級は中級に強化されるんだ。まあそれでまたダンジョンを配置…」
「へー新事実ですっ」
願いを叶え消えたはずの少女がなぜか俺の目の前で今会話をしている。
「ところでここはどこですかねー?」
「なんでここにいる…」
「多分ですけど、私の願いが叶った結果…じゃないかなーと?」
どういうことだ…? 俺はわけがわからないのでタッチパネルを操作し情報を求めた。だが、情報が開示されない…
「…どういうことだ?」
《カンリシャ、レイノアールノケンゲンガヒツヨウデス》
「え、私?? えーと…こうかな」
《ゲンザイノダンジョンノジョウホウヲカイジシマス》
少女がタッチパネルを操作するとダンジョンの現在の情報が画面に表示された。その内容によると現在の管理者はこの少女、レイノアールに移動していることがわかる。ダンジョンの状態も初期化され現在外とは遮断されている状態だ。というかダンジョンの階層すらないので魔物もいない。
「うそだろう…? なあ、お前の願いはなんだったんだ」
俺は少女に願いを訪ねると少女はゆっくりと俺のほうを向いてとてもいい笑顔を向けてきた。
「私が私でいられる居場所、です」
「それが…ここの管理者ってことなのか」
「みたいですね…私だけの国というか世界というかが作れるんですよね。まあダンジョンですけども」
まいったねこれは…ダンジョンのランクも上げられぬまま俺はお役目ごめんとなってしまったらしい。つまり職をなくしてしまったわけだ。悔しいような残念なような気もするが、ある意味呪いのように過ごした長い時間から解放されることはきっと喜ばしいことだろう。
「まあ…しかたないのかな」
「えっと、私はどうしたらいいのですか?」
俺の顔を眺めながら少女が困った顔をした。そうだな…ここを去る前にやることだけはやらないとな。
「管理者としての仕事を教えてやる」
「は、はいっ ぜひお願いします! あ…でも私が管理者だとするとあなたはどうなるんでしょうか?」
「ここから出ていくしかないな。まあ教えてからだけども」
「居場所を奪ってしまってごめんなさい…」
「ここにも長くいたからね。外の世界を見に行くいい機会だったんだよ」
しょんぼりと落ち込んでいる少女の頭をポンポンと軽く叩く。少女は相変わらず困った顔のままだった。
それから俺は少女に管理者としての知識を与えた。少女は飲み込みが悪くよく間違ったりもした。仕方がないので俺はマニュアルを作ってやった。あくまでも基本的なことだけを書き出したものだ。それを扱うのはこの少女だ。一応わかりやすく作ったつもりだ。
そして教えることもなくなった日。俺はここを立ち去ることを決めた。
「じゃあな頑張ってやっていけよ」
「あの…ありがとうございました。完成したダンジョンを絶対に見せたいのでぜひ来てくださいね」
「あのなぁ…そのころには俺は生きていないかもだぞ?」
「私が絶対あなたのいる世界へダンジョンを繋げますから…っ」
「…わかった。覚えていたら見てやるよ」
「はい…ぜひ」
まだダンジョンは入り口すら完成していないので俺はこの管理者の部屋から直接外へと出ることになる。つまりこの先はどんな世界に繋がっているのかは誰も知らないのだ。
「あ…名前っ 私名前聞いていませんでした!!」
「名前か…長いこと呼ばれてなかったから忘れちまったな」
「えー…っ」
少女が残念そうな顔をしていたので頭をポンポンと軽く叩く。
「ダンジョンの完成楽しみにしてるよレイノアール」
「…っ」
少女の驚く顔を最後に俺は外の世界へと飛び出した。長く生き過ぎた俺は外へと出ると急激に体の限界を感じその場から動けなくなった。
「約束は守れない…かな」
手のひらを見るとまるで砂が崩れるようにボロボロと形が崩れてゆく。痛みを感じないのがせめてもの救いだろうか。顔を上げるとすでに目も見えなくなっていたのか辺りは真っ白だった。ただその先に光が見えるだけだ。そのまま俺の意識も遠くなり何も考えられなくなったころ、多分だが俺の体もすべて崩れ落ちたのだろう
「管理者さーんっ 本当にこのボスを倒したら願いが叶うんですかー?!」
少女は大きな声で俺に話しかけている。勿論その場にいるわけではないので返事は返せないのだが、少女は構わず言葉を続ける。
「私居場所がないんです。どんなところでも邪魔者扱いです…家はとっくに追いだされまして、こう…ダンジョンとか? こないと生きていくことも出来なかったんです」
少女は少女と向き合い爆発物を投げながらもそんなことを口にしていた。もしかしなくても結構重たい過去なのかもしれないのだが、少女の雰囲気がそれをぶち壊してくる。絶対に勝つぞという気迫と投げまくる爆発物。白いスク水に外套…もうね見ているこっちはどう反応していいのかわからん。
「ダンジョンはいくつか回ってきたんですけど、私には厳しくて。とてもじゃないけどクリアー出来そうもなかったんです。でもここなら…誰もが期待していないこのダンジョンなら私でもクリアー出来ますよね…?」
期待していないとか言うなよ…確かに誰もがつまらなそうに帰って行ってしまいろくに人が来ないんだけどもさ! それでもちゃんとこれでもダンジョンだよっ
「どんな形でも構わないの…私の願いが叶うのなら」
少女の投げた爆発物が少女に直撃した。少女がすーっと姿を消していく…残された少女もその場から消えていった。
「ふぅ…終わったな。これでこのダンジョンもランクアップだな」
「ダンジョンってランクアップするんですか?」
「ああ攻略されると初級は中級に強化されるんだ。まあそれでまたダンジョンを配置…」
「へー新事実ですっ」
願いを叶え消えたはずの少女がなぜか俺の目の前で今会話をしている。
「ところでここはどこですかねー?」
「なんでここにいる…」
「多分ですけど、私の願いが叶った結果…じゃないかなーと?」
どういうことだ…? 俺はわけがわからないのでタッチパネルを操作し情報を求めた。だが、情報が開示されない…
「…どういうことだ?」
《カンリシャ、レイノアールノケンゲンガヒツヨウデス》
「え、私?? えーと…こうかな」
《ゲンザイノダンジョンノジョウホウヲカイジシマス》
少女がタッチパネルを操作するとダンジョンの現在の情報が画面に表示された。その内容によると現在の管理者はこの少女、レイノアールに移動していることがわかる。ダンジョンの状態も初期化され現在外とは遮断されている状態だ。というかダンジョンの階層すらないので魔物もいない。
「うそだろう…? なあ、お前の願いはなんだったんだ」
俺は少女に願いを訪ねると少女はゆっくりと俺のほうを向いてとてもいい笑顔を向けてきた。
「私が私でいられる居場所、です」
「それが…ここの管理者ってことなのか」
「みたいですね…私だけの国というか世界というかが作れるんですよね。まあダンジョンですけども」
まいったねこれは…ダンジョンのランクも上げられぬまま俺はお役目ごめんとなってしまったらしい。つまり職をなくしてしまったわけだ。悔しいような残念なような気もするが、ある意味呪いのように過ごした長い時間から解放されることはきっと喜ばしいことだろう。
「まあ…しかたないのかな」
「えっと、私はどうしたらいいのですか?」
俺の顔を眺めながら少女が困った顔をした。そうだな…ここを去る前にやることだけはやらないとな。
「管理者としての仕事を教えてやる」
「は、はいっ ぜひお願いします! あ…でも私が管理者だとするとあなたはどうなるんでしょうか?」
「ここから出ていくしかないな。まあ教えてからだけども」
「居場所を奪ってしまってごめんなさい…」
「ここにも長くいたからね。外の世界を見に行くいい機会だったんだよ」
しょんぼりと落ち込んでいる少女の頭をポンポンと軽く叩く。少女は相変わらず困った顔のままだった。
それから俺は少女に管理者としての知識を与えた。少女は飲み込みが悪くよく間違ったりもした。仕方がないので俺はマニュアルを作ってやった。あくまでも基本的なことだけを書き出したものだ。それを扱うのはこの少女だ。一応わかりやすく作ったつもりだ。
そして教えることもなくなった日。俺はここを立ち去ることを決めた。
「じゃあな頑張ってやっていけよ」
「あの…ありがとうございました。完成したダンジョンを絶対に見せたいのでぜひ来てくださいね」
「あのなぁ…そのころには俺は生きていないかもだぞ?」
「私が絶対あなたのいる世界へダンジョンを繋げますから…っ」
「…わかった。覚えていたら見てやるよ」
「はい…ぜひ」
まだダンジョンは入り口すら完成していないので俺はこの管理者の部屋から直接外へと出ることになる。つまりこの先はどんな世界に繋がっているのかは誰も知らないのだ。
「あ…名前っ 私名前聞いていませんでした!!」
「名前か…長いこと呼ばれてなかったから忘れちまったな」
「えー…っ」
少女が残念そうな顔をしていたので頭をポンポンと軽く叩く。
「ダンジョンの完成楽しみにしてるよレイノアール」
「…っ」
少女の驚く顔を最後に俺は外の世界へと飛び出した。長く生き過ぎた俺は外へと出ると急激に体の限界を感じその場から動けなくなった。
「約束は守れない…かな」
手のひらを見るとまるで砂が崩れるようにボロボロと形が崩れてゆく。痛みを感じないのがせめてもの救いだろうか。顔を上げるとすでに目も見えなくなっていたのか辺りは真っ白だった。ただその先に光が見えるだけだ。そのまま俺の意識も遠くなり何も考えられなくなったころ、多分だが俺の体もすべて崩れ落ちたのだろう
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