上 下
44 / 243
1章 由雄と健太の夏休み

第44話 2階層ボス遭遇?

しおりを挟む
 もうもうと上がる砂埃。少し悪い視界を眺めていると段々その姿が見えてきた。それはどう見ても大きな毛玉で、2本の長い耳が生えているでっかいコロンだった。

「よかったなリトルウルフじゃなくて」
「いや、その前にもうボスに遭遇とかそのほうがやばいって!!」
「コロンなら大きくても大丈夫じゃないかな?近すぎると体当たりしてこないし」

 たしかに今までコロンは転がってくるところしか見たことがない。大きさが違うだけで1階層と同じくこれももしかしたらコロンの集合体なんだろうか。
 何をしてくるかわからずじっと3人ででっかいコロンを眺める。見られている当のコロンも体の向きを変えこちらをじっと見ているようだ。

「きゅうううぅぅ~~?」

 でっかいコロンが鳴き声を上げ首を傾げた。なんていうか…ボスだよな?その様子に気が緩みファーナさんと健太の目はかわいいものを見つけたみたいな雰囲気になっている。
 ふらふらとした足取りで2人はでっかいコロンに近づいていく。なんか変じゃないか…確かにかわいいがダンジョンの中で意味もなく魔物に近づいていくなんて。不審に思った俺はその仲間には入らず後ろから様子を眺めていた。

「ああ~ふわふわ~」
「もっふもふだなっ」

 2人はでっかいコロンの正面から抱きついた。視線を上に向けるとかわいらしいコロンの目が…目が?気のせいじゃなければ人を馬鹿にしたような目つきをしていた。いやいやいや…これかわいくないだろうっ

 次の瞬間ゆっくりとでっかいコロンが両手を上げ前のめりに倒れだした。そうか、これは罠だったんだな。かわいい鳴き声で獲物をおびき寄せ油断したところで大きな体でのしかかる。
 それに気がついた俺は慌てて健太とファーナさんの腕を引っ張る。

「おいっ潰されるぞ!」

 すこしづつのしかかってくる重みに気がついて2人は急いででっかいコロンから横へと離れる。その後勢いを増したでっかいコロンがズズーンッと大きな音を立て再び砂埃を上げた。

「……」
「……」

 その重量感のある音にさっきまでかわいいと張り付いていた健太とファーナさんの顔は引きつっている。

 少しづつ晴れていく砂埃を眺めているとすぐに起き上がれないのかでっかいコロンがじたばたとしていた。

「これってチャンスなんじゃないか?」
「やっぱりそう思う??」
「一斉攻撃だーーっ!!」

 早速合成したばかりの魔石に健太は魔力を込め背中に乗り首があると思われるあたりを背後から突き刺しまくる。ファーナさんも弓で確実に急所だと思う箇所、額、目、首、起き上がれないように手足に矢を打ち込んでいく。

 俺?そんな2人の急激な態度の変化についていけずその様子を眺めていたよ。
 血だらけになり身動きが取れなくなったでっかいコロンは次第に動かなくなって、すーっと姿が消えていった。

 なんてあっけない2階層のボスだったんだろう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

僕と精霊〜The last magic〜

一般人
ファンタジー
 ジャン・バーン(17)と相棒の精霊カーバンクルのパンプ。2人の最後の戦いが今始まろうとしている。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

妹の結婚を邪魔するために姉は婚約破棄される

こうやさい
ファンタジー
 お姉ちゃんは妹が大好きですよ。  今更ですが妹の出番がほとんどなかったためタイトルを変更しました。  旧題『婚約破棄された姉と姉に結婚を邪魔された妹』  元は『我が罪への供物』内の一話だったんだけど、アレンジしたらどうなるかなとやってみた。それとカテゴリから内容は察してください(おい)。元の方も近いうちに出します。『我が罪~』はなかなか出すタイミングがとれないからちょうどよかった。  そういう理由なので互い同士がネタバレと言えなくもないですから、細切れで短いシロモノなのにあれですがあまり需要がないようなら中断して向こうを優先する予定です。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

処理中です...