258 / 264
6年生 1学期 4月
学校の怪談
しおりを挟む
僕、能勢圭司は、この小学校に赴任して3日目の放課後、ある生徒に呼び止められた。
「先生、ちょっといい?」
「……ん? 何だい、栗栖君」
この子は栗栖和也君。おとなしくて優しい生徒だ。
「えっとね。ちょっと〝良くない物〟が居るんだよ」
この子は何を言ってるんだ? そう思った方も居るんじゃないかな。うんうん。普通はそう思うだろう。
……だがしかし。実をいうと彼は、普通じゃない。
地球を守るために結成された〝救星戦隊プラネット・アース〟の一員なんだ。
「最近、その〝良くない物〟が、スゴく悪くて大きくなって来ているんだよ。恐いよね! だから、今夜ちょっと様子を見に行きたいんだけど……」
今夜って。そんなに急がなきゃマズいのか?
「ごめんね。明日には〝良くない物〟が出て来るよ。きっと手遅れになっちゃうから……」
ちょっとストップ。
……お気付きだろうか。さっきから、僕の〝思考〟に対して、ジャストミートな返事が返って来る。コレだよコレ。こういう所が普通じゃないんだ。
コホン。それで肝心な事なんだけど……〝良くない物〟って何なんだよ?!
「うーん。言葉とか絵では表現できない物だから……」
……って言うか、それ以前にどうして僕に言うんだ?
「えっと、それはね。旧校舎の中だからだよ? 先生が一緒じゃなきゃ、入っちゃダメなんでしょ?」
なるほど、そう言う事か……ん? おいおいおい! この学校の旧校舎って確かあの!
「さすが先生。やっぱり知ってたんだ! あの旧校舎は、夜になると〝良くない物〟が、ウロウロ動き回っているみたい。早くしないと、新校舎にまで来ちゃうかもしれないよ?」
この学校には、全国どこの学校でも聞く〝七不思議〟がある。
……ただ、ここの場合は少々、他とは毛色が違うんだよなあ。
「だよね! だって、七つの不思議がぜーんぶ、旧校舎の中だけの事だもん!」
そうそう。七つもある怪奇現象が、立入禁止になっている旧校舎での話なんだ。
どちらかと言うと、七不思議のせいで新校舎が建てられて、旧校舎が立入禁止になったって噂もある位だし。
「旧校舎は取り壊せないし、困っちゃうよね!」
取り壊せない? 旧校舎が? ……それで新校舎を不自然な感じに建ててあるのか。邪魔そうに旧校舎を避ける形で。
あらら? でも、何で壊せないんだ?
「たぶん、あの校舎をどうにかしようとすると、関わった人はみんな、とても恐い目に遭っちゃうから……」
ガチじゃないか! よくあるガチなパターンのヤツ!
え? え? もしかしてこの学校の〝七不思議〟って、結構ヤバいんじゃ……
「ちょっと恐いよね。本当は僕だけじゃなくて、たっちゃんと彩歌さんも一緒に行って欲しかったんだけど、急な用事が出来ちゃったみたいだから仕方ないよね」
まさか本物の〝学校の七不思議〟に関わることになるとは……
あ。さて置き、ここまで僕がほとんど喋っていないのも、この学校の不思議に追加していいかな?
「えへへ。ダ~メ!」
……だよね。
>>>
「……という事で田所さん。〝武器庫〟を開けて下さい」
「おいおい能勢。ここじゃ校長と呼べ、校長と!」
おっと、またやってしまった。気を付けないと。
生徒はもちろん他の先生方にも、僕と田所さんが刑事なのは秘密だからね。
「すみません……」
まあ念のため秘密裏に、この校長室と、僕の担任している6年3組は完全防音に改装して貰ったから、ある程度は平気だと思うんだけど。
「しっかし、七不思議なあ。そりゃお前、俺たちゃ管轄外じゃねえか?」
まあ実際〝魔界関連の何か〟が〝心霊スポット〟扱いされる事は多いけど、今回のは本当に〝心霊〟っぽい。そして〝魔界〟が関わらなければ、僕たち〝魔特課〟は動けない。そういう組織なんだ。だけど……
「今回の任務は〝魔界〟に深く関わってしまった河西千夏さんの警護です」
僕の言葉に、田所さんが少し考えてから頭をボリボリと掻く。
「なるほどなぁ。この学校に影響が出る事象には対処しなきゃあならんって事か……で? いつ行くんだ?」
「今夜です」
田所さんは、やれやれと首を横に振った後、ニッと笑った。
「……ったく、急な話だな」
そう言って、田所さんは懐から鍵を取り出す。
「ほらよ。上には言っといてやる」
「有難うございます! それではちょっと行ってきます!」
僕は、田所さんが放り投げた鍵を受け取り、ポケットに仕舞うと、敬礼してから校長室を出た。
「コラあ! 敬礼もダメだって言っただろ!」
背後から怒声が聞こえてきた。
あーあー。校長先生。廊下で大声もダメなんですよ。
>>>
通常の銃火器や近接戦闘用の武器では、魔界の事件に対応する事が難しい。だから〝魔特課〟の〝武器庫〟には、科学の粋を集めた〝退魔系〟や〝対霊系〟等の武器が用意されているんだ。
「……疑似エーテル弾120発と、六極共振拳銃が2丁。プラズマロッド2本。赤外線外線兼紫外線外線スコープ、電離柵生成籠手とバッテリーのLLを6本……?」
そして、もちろんその武器庫には専門の〝管理者〟が居て、僕の前で不思議そうに首を傾げている。
「能勢君。あなた確か、小学校で〝先生役〟してるのよね?」
白八滝甘夏巡査部長。超絶美人。
ちなみに甘夏という名前は、実家が熊本の甘夏みかん農家だからだとか。
「この量の〝対霊武器〟をどうするの? もしかして、幽霊と戦争でもするのかしら?」
さすが白八滝さん。鋭いなあ。
「はい、お察しの通りです。少なくとも、七体は居る筈ですので……」
僕の言葉に、驚いた様子の白八滝さん。
腕を組んで、少し考えてから言った。
「書類に記入しながら、ちょっと待っててね」
白八滝さんはフワリと立ち上がると、武器庫の奥へと入って行く。
とても良い香りがした。これは……シャンプーかな?
って、おっと。駄目だ駄目だ! 書類に記入しなきゃ! 記入!
「持って行きなさい」
うっわ!
いつの間にか目の前に居た白八滝さんは、僕に紙袋を手渡してくれた。
「えっと、これは何ですか?」
小さな茶色の紙袋だ。
昔、近所の肉屋さんで買ったコロッケを入れてくれた袋によく似ている。
少し重いけど、持ち運ぶには問題ない。
何気なく傾けると、袋の中身がサラリと音を立てた。
……あれ? これってもしかして。
「ふふ。お塩よ。こういう古典的なのが意外と効くんだから」
「先生、ちょっといい?」
「……ん? 何だい、栗栖君」
この子は栗栖和也君。おとなしくて優しい生徒だ。
「えっとね。ちょっと〝良くない物〟が居るんだよ」
この子は何を言ってるんだ? そう思った方も居るんじゃないかな。うんうん。普通はそう思うだろう。
……だがしかし。実をいうと彼は、普通じゃない。
地球を守るために結成された〝救星戦隊プラネット・アース〟の一員なんだ。
「最近、その〝良くない物〟が、スゴく悪くて大きくなって来ているんだよ。恐いよね! だから、今夜ちょっと様子を見に行きたいんだけど……」
今夜って。そんなに急がなきゃマズいのか?
「ごめんね。明日には〝良くない物〟が出て来るよ。きっと手遅れになっちゃうから……」
ちょっとストップ。
……お気付きだろうか。さっきから、僕の〝思考〟に対して、ジャストミートな返事が返って来る。コレだよコレ。こういう所が普通じゃないんだ。
コホン。それで肝心な事なんだけど……〝良くない物〟って何なんだよ?!
「うーん。言葉とか絵では表現できない物だから……」
……って言うか、それ以前にどうして僕に言うんだ?
「えっと、それはね。旧校舎の中だからだよ? 先生が一緒じゃなきゃ、入っちゃダメなんでしょ?」
なるほど、そう言う事か……ん? おいおいおい! この学校の旧校舎って確かあの!
「さすが先生。やっぱり知ってたんだ! あの旧校舎は、夜になると〝良くない物〟が、ウロウロ動き回っているみたい。早くしないと、新校舎にまで来ちゃうかもしれないよ?」
この学校には、全国どこの学校でも聞く〝七不思議〟がある。
……ただ、ここの場合は少々、他とは毛色が違うんだよなあ。
「だよね! だって、七つの不思議がぜーんぶ、旧校舎の中だけの事だもん!」
そうそう。七つもある怪奇現象が、立入禁止になっている旧校舎での話なんだ。
どちらかと言うと、七不思議のせいで新校舎が建てられて、旧校舎が立入禁止になったって噂もある位だし。
「旧校舎は取り壊せないし、困っちゃうよね!」
取り壊せない? 旧校舎が? ……それで新校舎を不自然な感じに建ててあるのか。邪魔そうに旧校舎を避ける形で。
あらら? でも、何で壊せないんだ?
「たぶん、あの校舎をどうにかしようとすると、関わった人はみんな、とても恐い目に遭っちゃうから……」
ガチじゃないか! よくあるガチなパターンのヤツ!
え? え? もしかしてこの学校の〝七不思議〟って、結構ヤバいんじゃ……
「ちょっと恐いよね。本当は僕だけじゃなくて、たっちゃんと彩歌さんも一緒に行って欲しかったんだけど、急な用事が出来ちゃったみたいだから仕方ないよね」
まさか本物の〝学校の七不思議〟に関わることになるとは……
あ。さて置き、ここまで僕がほとんど喋っていないのも、この学校の不思議に追加していいかな?
「えへへ。ダ~メ!」
……だよね。
>>>
「……という事で田所さん。〝武器庫〟を開けて下さい」
「おいおい能勢。ここじゃ校長と呼べ、校長と!」
おっと、またやってしまった。気を付けないと。
生徒はもちろん他の先生方にも、僕と田所さんが刑事なのは秘密だからね。
「すみません……」
まあ念のため秘密裏に、この校長室と、僕の担任している6年3組は完全防音に改装して貰ったから、ある程度は平気だと思うんだけど。
「しっかし、七不思議なあ。そりゃお前、俺たちゃ管轄外じゃねえか?」
まあ実際〝魔界関連の何か〟が〝心霊スポット〟扱いされる事は多いけど、今回のは本当に〝心霊〟っぽい。そして〝魔界〟が関わらなければ、僕たち〝魔特課〟は動けない。そういう組織なんだ。だけど……
「今回の任務は〝魔界〟に深く関わってしまった河西千夏さんの警護です」
僕の言葉に、田所さんが少し考えてから頭をボリボリと掻く。
「なるほどなぁ。この学校に影響が出る事象には対処しなきゃあならんって事か……で? いつ行くんだ?」
「今夜です」
田所さんは、やれやれと首を横に振った後、ニッと笑った。
「……ったく、急な話だな」
そう言って、田所さんは懐から鍵を取り出す。
「ほらよ。上には言っといてやる」
「有難うございます! それではちょっと行ってきます!」
僕は、田所さんが放り投げた鍵を受け取り、ポケットに仕舞うと、敬礼してから校長室を出た。
「コラあ! 敬礼もダメだって言っただろ!」
背後から怒声が聞こえてきた。
あーあー。校長先生。廊下で大声もダメなんですよ。
>>>
通常の銃火器や近接戦闘用の武器では、魔界の事件に対応する事が難しい。だから〝魔特課〟の〝武器庫〟には、科学の粋を集めた〝退魔系〟や〝対霊系〟等の武器が用意されているんだ。
「……疑似エーテル弾120発と、六極共振拳銃が2丁。プラズマロッド2本。赤外線外線兼紫外線外線スコープ、電離柵生成籠手とバッテリーのLLを6本……?」
そして、もちろんその武器庫には専門の〝管理者〟が居て、僕の前で不思議そうに首を傾げている。
「能勢君。あなた確か、小学校で〝先生役〟してるのよね?」
白八滝甘夏巡査部長。超絶美人。
ちなみに甘夏という名前は、実家が熊本の甘夏みかん農家だからだとか。
「この量の〝対霊武器〟をどうするの? もしかして、幽霊と戦争でもするのかしら?」
さすが白八滝さん。鋭いなあ。
「はい、お察しの通りです。少なくとも、七体は居る筈ですので……」
僕の言葉に、驚いた様子の白八滝さん。
腕を組んで、少し考えてから言った。
「書類に記入しながら、ちょっと待っててね」
白八滝さんはフワリと立ち上がると、武器庫の奥へと入って行く。
とても良い香りがした。これは……シャンプーかな?
って、おっと。駄目だ駄目だ! 書類に記入しなきゃ! 記入!
「持って行きなさい」
うっわ!
いつの間にか目の前に居た白八滝さんは、僕に紙袋を手渡してくれた。
「えっと、これは何ですか?」
小さな茶色の紙袋だ。
昔、近所の肉屋さんで買ったコロッケを入れてくれた袋によく似ている。
少し重いけど、持ち運ぶには問題ない。
何気なく傾けると、袋の中身がサラリと音を立てた。
……あれ? これってもしかして。
「ふふ。お塩よ。こういう古典的なのが意外と効くんだから」
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる