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5年生 3学期 2月

精算 オランダ 達也

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 キンデルダイク、クリスティネ通りに、Stefanステファン Brinkmanブリンクマンの家はあった。

「ブルー、この家で間違いないよな?」

『ここだよ。絶対に間違いない』

 僕と彩歌あやかは、二人で、郵便受けに手紙を入れる。

『ありがとうタツヤ、アヤカ。今まさに、地球は破壊から遠ざかった。分岐の選択肢も大きく広がったよ』

「良かった! 一時はどうなることかと思ったけど……あ、あれ?」

 急に、体の奥底から不思議な感覚が湧き起こる。
 力が満ちて行く感じだ。これは……?

『これから始まるのは〝精算〟だ。タツヤ、キミは私との融合が進むと、それに伴って身体能力や新たな特殊能力を得ていくのだが』

 それは知っている。僕は日々、強く、素早く、賢くなっていく。自動的に。

『さらに救星特異点きゅうせいとくいてんであるキミは、この星の運命の分岐から分岐までの間に得た、経験や知識、それ以外の特殊な要素などを使って、能力を飛躍的に向上させることが出来るんだ』

「おお! それってレベルアップってこと? 凄いじゃんか!」

『そうだね。しかも今回は分岐を成功させているから、ボーナスも付くはずだ』

「すごい! 良かったわね、達也さん!」

「ありがとう! 彩歌さんのおかげだよ」

『タツヤ、ここから少し離れよう。さすがに怪しまれる』

「おっと。確かにそうだな」

 僕たちは、近くの公園に移動し、ベンチに腰掛ける。

『では、今回の分岐で得た成長の要素を発表しよう。初めて起きた事や、使った能力に対して〝ポイント〟が入る。わかりやすいよう数値にするから、今後の参考にして欲しい』




 岩登り 3pt
 空間断層の修正 5pt
 悪魔と戦闘 106pt
 心臓移植 118pt
 発掘 12pt
 譲渡 13pt
 換金 18pt
 補導 36pt
 救世主と同盟 187pt
 贈答 13pt
 施米 13pt
 強制解錠 5pt
 機械人形と戦闘 31pt
 解毒 11pt
 怪人Aと戦闘 51pt
 友人救出 38pt
 演技 3pt
 演技下手見学 5pt
 返却 4pt
 名工神と同盟 187pt
 違法運転 25pt
 変装 3pt
 電撃無効 25pt
 悪党成敗 38pt
 外来種と戦闘 237pt
 土人形作成 20pt
 土人形習得 500pt
 時券使用 250pt
 心霊体験 58pt
 人命救助 120pt
 飛行 24pt
 墜落 85pt
 修羅場 40pt
 魔道士と同盟 187pt
 怪人Bと戦闘 88pt
 旅 30pt
 外国語会話 15pt
 透過寝装 250pt
 戦闘補助 23pt
 祝福 77pt
 尾行 5pt
 犬と戦闘 8pt
 油断 64pt
 負傷 879pt
 自己修復 200pt
 救星の成功 1000pt

 合計 5110pt





「なぜポイントが付いてるのか解らないのもあるんだけど……」

 なんだよ〝透過寝装とうかしんそう〟って。
 気付いた彩歌が真っ赤になってるじゃないか。

『無意味に思えるものや、一見マイナスの事柄も、意外と経験になったりするんだ』

 ……なるほど。確かにそうかもしれないな。

「で、ブルー、このポイントって、何に使えるんだ?」

『まず、純粋にキミの身体能力を上げることが出来る。例えば、今のキミの素早さは、少し融合が進んだので43になっている。これに全て割り振れば、キミの素早さは5153になる』

「おお! そのまま数値を増やせるのか!」

『ただ、HPや守備力に割り振るのはお勧めしない。海にコップの水をそそいで水位を上げようとするようなものだ』

 確かに、それは水の無駄使いだな。

『そして次に、特殊能力の開放にも使える。自動で融合とともに身につける能力以外に、キミには特別に用意された能力がある。ちょっとややこしいので、よく聞いて欲しい。まず、3つの基本特殊能力だ』

 火、水、風を操作する能力だそうだ。
 最初は〝すこし揺らす〟程度だが、訓練することによって自由自在に操ることが出来るようになるらしい。

『ちなみに、土を操る能力は私が持っている。融合が進めばキミの意志で使えるようになるよ』

 そういえばブルーは土を色々と好き勝手に操っているよな。
 ……それ、僕も出来る様になるのか。

『そして、その3つから派生する能力がある。基本特殊能力のレベルが上がれば、ポイントと引き換えに使えるようになるよ。とにかく最初の3つを手に入れて、練習するんだ』

「で、その基本特殊能力を開放するには、何ポイント必要なんだ?」

『火と水が1000ポイント、風は1200ポイントだ』

 ん? なぜ風だけお高いのかしら?

『私とキミは土属性だ。風属性とは相性が悪いので、少しコストが掛かる。でも開放してしまえば何の問題もなく使えるよ』

「なるほどね。じゃあ、火、水、風、全部開放しよう」

『面白いね、タツヤ。本当にいいかい?』

 訓練でレベルが上がるなら、先に開放して損はないだろう。
 長い夜には絶好の暇つぶしだ。

「ああ。頼む」

『了解した。開放するよ?』

 頭の中で、重い扉が開くような音が響く。別の方向から、3回。
 そして、そこから溢れてくる何かで、体中が満たされていくのが分かる。

『よし、完了した。これで残り1910ポイントだ。どうする?』

「それじゃ、攻撃力と素早さに800ずつ割り振っておこうかな」

 特に素早さは、大ちゃんの戦いを見て絶対に必要だと思った。
 あのスピードには、このままでは付いていけそうにない。

『了解した。あと、310ポイントだね』

「体力に200と、賢さに100だな。あと、MPを10上げてくれ」

 体力は、常に回復し続けるから、少なくても大丈夫だろう。賢さ関係は、大ちゃんに丸投げするつもりだ。餅は餅屋というからな。

『タツヤ、最終確認だ。攻撃+800 素早さ+800 体力+200 賢さ+100 MP+10でいい?』

「オッケー、やってくれ」

 と言った瞬間、体中に何か形容しがたい物がみなぎる!! 嘘だろ? うわうわうわ!! 何だこれ!!

「ブルー! ちょっとこれ! あわわわわわわ!?」

 耐えられずに転げ回る。全身が痛い。いや、痒い? いや、違う、と、とにかくスゴイ!

「た、達也さん! 大丈夫?!」

『タツヤ、もう少しで終わるよ』

「いや、これうわ! やめてとめて、あわわわわわわっ!!」

 これって、もしかして快感なのか?! 100周回って超不快だ! 駄目だこれ、イヤだこれ!

『急激なパワーアップのせいだ。攻撃力は10倍、素早さは一気に20倍だからね。もう少しの我慢だ、タツヤ』

「達也さん、頑張って!」

 心配そうな彩歌。駄目だ、カッコ悪いけどもだえずにはいられない!
 周囲に誰もいなかったのが幸いだった。ジタバタと暴れ狂う様は、即通報レベルだろう。

『あと、3、2、1……終わったよ。おめでとうタツヤ』

 急に、体中の不快感が消えた。
 すごい……体が軽い! それに、なんか変だ。
 鳥ってあんなにゆっくり飛んだっけ?

『キミは自分の変化にまだ慣れていない。慎重に行動して欲しい』

「凄いな! 生まれ変わったみたいだ!」

『喜んでもらえて嬉しい。さあ、行こうか』

「あ、あの、ちょっと待って?」

 彩歌が急にソワソワし始めた。

「どうしたの? 彩歌さん」

「わかんない……なにか変な感じよ?」

『そうか……!』

「どうしたんだ? 彩歌さんに何か……?」

『アヤカも救星特異点きゅうせいとくいてんだ。分岐を終えれば〝精算〟がある』

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