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5年生 冬休み明け

公園の美少女

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「ユーリ、ちょっと落ち着け! 話せば分かる!」

「やー! たっちゃんはだまってて!」

「達也さん、心配しないで、私は大丈夫だから」

 給食の後、ユーリは彩歌あやかを強引に屋上へ連れて行った。
 念のため、彩歌にはユーリの異常な身体能力と、幾つかの特記事項の事は伝えた。
 彩歌は、いざとなれば魔法も使えるし、高耐久と超回復がある。大丈夫だとは思うんだけど。

「ここから先は、誰も行っちゃダメです」

「大声出すわよ! 近づかないで!」

 屋上へ向かう階段には、町田鏡華まちだきょうか橋月日奈美はしづきひなみ歩哨ほしょうとして立っている。この2人に逆らえば、ユーリも敵に回すことになるので、5年生はおろか、6年生ですら誰も屋上には上がれない。ユーリが怒ると怖いのは、学校中の誰もが知っているのだ。

「おいおい、ユーリのヤツ、なんで急に転校生に絡んでるんだ?」

 大ちゃん、ごめん。それは言えない。

「たっちゃん、藤島さん、大丈夫かな」

 栗っちも心配そうにしている。あ、そうだ!

「栗っち、ちょっと〝千里眼〟で2人を見てくれない?」

 何かあれば、無理にでも止めに行かなくては。

「うん、わかった! ちょっと待ってね」

 人集ひとだかりから少し離れて、栗っちが千里眼の構えをとる。

「え? ええ?! ああっ?! そんな!!」

 栗っちがガクガクと震えだした。口を開けたまま、顔色が真っ青になっていく。

「どうした! 何が見えたの、栗っち?!」

 ポロポロと涙を流し始める栗っち。

「まさか……あ……ああ……あう……あう……」

 首を横に振りながら、泣き続ける。語尾が言葉になっていない。

「何が見えてるんだ?! 2人はどうなってる!!」

 栗っちは口をパクパクとするだけで、喋れなくなっていた。何が起きているかはわからないけど、これはマズい!

「ちょっと行ってくる!!」

 助けに行こうとすると、栗っちが僕の服を掴んで止めた。

「だめ、たっちゃん、行っちゃだめ……だめ……」

 僕の目を真っ直ぐ見ながら、涙を流し、首を横に振り続ける栗っち。一体何を見たんだ?!

「2人は無事なのか?!」

 声も出せずに、僕を行かせまいと服を掴んだまま、ただ泣き続ける栗っち。

「何が起こってるんだ?! ちゃんと説明してくれよ!」

 その直後、屋上の扉が開き、彩歌とユーリが降りてきた。

「やー! アヤちゃん、なかなかやるね!」

「友里さんこそ!」

 ガッチリと握手をする2人と、湧き上がる拍手喝采。何だコレ。

「なんか、仲良くなったみたいだな! 良かったぜー!」

 うん。本当に。でも、やっと泣き止んで震えが止まった栗っちを見てると、素直に喜べないんですけど。

「たっちゃん、怖いね。女の子って怖いね」

「何を見たんだよ、栗っち?」

「ああう……怖いよ! 怖いよ!」

 ガクガク震え出し、泣き出す栗っち。

「ああっ! ごめん! もう聞かないから!」

 何か、よっぽど恐ろしい物を見てしまったのだろう。彩歌に直接聞いてみるか。

『彩歌さん、大丈夫?』

『うん、大丈夫! ありがとう』

『上で、何があったの?』

『許して達也さん……それは友里さんのためにも、誰にも言えないし、聞かない方がいいと思う』

 うっわ、気になる! 本当に何があったんだ?!
 ……でもまあ、そこまで言うなら、もう何も聞くまい。

『わかったよ。とにかく無事で何よりだ』

『ごめんなさい。ありがとう!』

 こうして、彩歌とユーリのファーストコンタクトは無事終了した。

「なんで皆、廊下に居るんだ? 授業始めるぞ! 早く教室に戻れー!」

 うわっ! 谷口先生が現れた。
 そういえばこの間、職員室へ呼ばれた時も、突然背後に現れたな。教卓の前だけじゃなく、学校内ならどこでもワープできるのだろうか。





 >>>





『……というわけで、ユーリには敵が居るみたいなんだ』

『友里さんも、普通のヒトじゃないのね……』

 午後の授業中。例によって、ずーっと彩歌と話し込んでいる。もちろん誰にも気付かれないし、超楽しい。

『分かっているとは思うが、私は聞いているぞ、タツヤ。あまりいつもの様な破廉恥はれんちな発言はお勧めしない』

『僕がいつ破廉恥な発言をしたよブルー?!』

 隣の席でクスクスと笑う彩歌。

『そういえば、彩歌さんは何処に住むの?』

『この学校の少し北に、公園があるでしょ?』

『うん、あるある。昔からよく遊びに行ったよ』

『あの公園で野営かな』

 噴き出す僕と、一斉にこちらを見るクラスメート達。咄嗟とっさに咳き込んだフリをして誤魔化し、事なきを得た。

『や……野営って?!』

『こっちでは魔物に襲われる事も無いし、結界無しでテントが張れるから楽よね』

『じゃなくて、どこかで部屋を借りたりとか、しないの?』

 さっき、質問攻めにあってた時に、「公園に」って聞こえた気がしたけど、聞き間違いじゃなかったんだ。

『え……っと、もしかしてテント、駄目?』

『駄目っていうか、ちょっと普通じゃないっていうか……』

『本当に?! 魔界では、テントで生活してる人が多いから、やっちゃう所だった!』

『さすがにこっちの世界では、小学生が公園でテント生活してたら大問題になるよ』

『どうしよう……住む所を探さなきゃ!』

『でも、学校の手続きはどうなってるの? 住所不定では無理なんじゃ……』

『あ、それは大丈夫。城塞都市からの伝手つてで、やってもらったから』

 どうやら、魔界と日本の政府は繋がりがあるらしい。それなら、魔界の人がこっちに来る時には、住宅事情とかは、しっかり説明しろよって話だが……

『あ、じゃあさ彩歌さん、ウチに来ない?』

 噴き出す彩歌と一斉に彩歌を見るクラスメート達。咄嗟に以下略。

『た……たつ、たたた、たつ、たたたった!?』

 モールス信号みたいになっている彩歌。

『達也さん! た、確かにわ、わ、私たち、元はに、に、26だけど、い、今はまだ、その子供だし、まだそれに、こ、こ、心のじゅじゅじゅ準備とか、で、でも、た、た、達也さんが良いのなら、わ、私いつでもその、い、い一緒に……』

『ごめん彩歌さん、言い方が悪かった! ウチの物置の下に、ブルーが作った広い地下室があるんだ。栗っちと大ちゃんの部屋もあるし、広い練習場もある。もし良かったら、そこで暮らさない?』

『あ……ああ! そ、そっか、ごめんなさい。私てっきり……』

 ホッとした風でもあり、残念そうでもある彩歌の声。

『いや、うん、まあ僕も二人っきりの方が嬉しいんだけどね』

 噴き出す彩歌と以下略。

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