4 / 4
最終話
しおりを挟む もうダメだ! そう思った瞬間、頭の中に声が響いた。
『鷹華? やっと繋がった』
……え、母さんなの?!
「おい、ヨーカ! どうしたんだ?」
私の独り言に、ギョッとするシャウさん。
『ずっと検索してたけど見当たらなくて……あなたアッサム・ヨーカって名乗ったの? 見つからないはずよ』
いやいや。勝手にシャウさんがそう思ったっていうか……
とにかくギリギリセーフ! 助けて! ゆっくりしてられないの!
『それはこの会話も同じよ。魔法で無理に時間を合わせながらだし』
そっか。3年対1時間って比率だっけ。大変ね。
って感心してる場合じゃないわ。竜が目の前に居るの!
『竜? だめよ竜は。美味しいけど似た味のお肉がないから、カレーに入れるぐらいしか誤魔化しようがないわ』
ちーがーうー! 狩ってるんじゃなくて、襲われてるの! 殺されちゃうわ!
『殺される? ……誰が?』
私よ私! 助けて! 死んじゃう!
『ふふ。鷹華、それは無理よ』
そんなぁ! 私、この若さで死にたくない!
『違うの。竜ごときがあなたを殺すなんて無理なの。あなた、私と父さんの子どもなのよ?』
え? まさか私に、何か秘められた異世界人特有の力が?
『……そんなの無い。あなたはごく普通の人間よ。どちらかと言うと、お父さんの血の方が圧倒的に濃い、典型的な大和撫子ね』
だめじゃん! 期待した私がバカだったー! 死ぬ! 私このまま死んじゃう!
竜は一声いななくと、前足で攻撃して来た。ひぃぃぃ!
『だから、死なないの』
ガキン! という音と共に、軽い衝撃が走る。私、死んじゃ……
……ってない。なんで?! 竜の爪が私の頬に命中しているのに、痛くも痒くもない。
「ヨーカ! 何が起きたんだ?!」
信じられないといった表情のシャウさん。
『鷹華。母さん、そっちの世界では竜どころか、世界を滅ぼすほどの力を持った魔王を倒した勇者なのよ? でも、こっちの世界では、お父さんに、腕相撲で勝てたこと無いの。知ってるでしょ?』
あ、そういえば、昔よくやってたね、腕相撲。って、あれ? それ手加減とかじゃなく?
『イシュタルドーズ最強の勇者である私が、普通の日本人女性と、ほとんど同じぐらいの力なのよ。つまり……』
……こっちの世界、とにかくみんな超弱いのか!
『その言い方は失礼よ。地球人が強すぎるの!』
「ヨーカ! 危ない!」
竜はもう一度、同じように腕を振り下ろしてきた。私は咄嗟に、それを片手で軽く払い除ける。竜は悲鳴のような声を上げて、30メートルほど飛び退いた。
……あれ? 違った、すっ飛んだのか。いやいや、本当に軽く払い除けただけなのに。
「す……すごい……」
竜は猛り狂い、突進してきた。ちょっとー。これのどこが温厚な生き物なのよ。
突き出された角を、両手で受け止める。ド迫力なのに、掴んだ感じは発泡スチロールみたい。軽い軽い。
『ねえ鷹華。あなた、竜を怒らせるような事、した?』
しないわよ。初対面だしさ。まあ、さっき食べたステーキが、竜だったっていうなら話は別だけど。
……違いますよね、シャウさん?
「さっきの肉? あれはベイアルだと思うぞ?」
わわ、まさかスプリンターのお肉だったとは。
……あ、そっか。私の足が早かったのも、あっちの世界の人間だからか。
『竜が何の意味もなく、人を襲う事は無いわ。他に思い当たる節はない? 竜の子どもをさらったとか』
するわけ無いじゃないそんな事!
あ、いけない。子どもといえば、さっきの女の子、大丈夫かな。
……良かった。ボールを大事そうに抱えて、少し離れた所に立っている。
ボールを抱えて?
……ボールじゃないよそれ! シャウさん、その子の持っているの、もしかして!
「……タマゴか?!」
お嬢ちゃん、それ、どこにあったの?
「お散歩してたらね、お空から落ちてきたの」
うん。きっと竜の卵だ!
ごめんね、それ、竜さんの大事なものなんだ。返してあげても良いかな?
「うーん……いいよ!」
良い子だね。竜さんもきっと喜ぶよ!
シャウさん、手が離せないから、ここまで持ってきて下さい。
「よしきた! ……しかし、大丈夫なのか?」
大丈夫。両手で角を掴んでいるので、竜はピクリとも動けない。
シャウさんが持ってきたタマゴを、竜の目の前……私の足元に置いてもらうと、竜は急に大人しくなった。やっぱりこれを探していたんだね。
>>>
……本当に有難うございました、シャウさん!
「こちらこそ。異世界人と出会えたなんて、光栄の極みだ。しかも、伝説の勇者の娘だったなんてな!」
町の人達の好意で、食材をいっぱいもらうことが出来た。え、こんなにいいの?
「竜を追い払ってくれたんだ。足りないぐらいだと思うぞ?」
えへへ。やったね! でも次回はちゃんと狩りをします。あのーもし良かったら……
「ああ。いつでもご一緒させてもらおう」
わーい! ありがとう! シャウさん大好き!!
『鷹華、準備はいい? 合言葉は分かるわね?』
あ、お母さん。言われた通り、荷物は全部、ロープで自分に括り付けたよ?
『それじゃ、戻りたい場所をイメージして、合言葉を唱えて』
……それじゃ、シャウさん、また来るね!
「待ってるよ! あと、勘違いしているようだが、私は男だぞ?」
ええ?! ちょっと! このタイミングで?!
>>>
私はこうして、無事帰ってきた。
それにしても、シャウさんが男だったなんて! 綺麗すぎて、女性だと思ってたよ。
「おかえり、鷹華。お疲れ様」
……お母さん。言いたい事も聞きたい事も一杯あるんだけど、そもそも何で異世界に、食材を狩りに行くの?
「あなた、イシュタルドーズで何か食べた?」
うん、すっごく美味しかった!
「ふふ。あっちの食材は、どれもこれも信じられないくらい美味しいの」
……え?
「実はお父さん、お料理がすっごく下手なのよ。異世界の食材で作らなきゃ、食べれたものじゃないわ」
衝撃の真実だ! ……そういえば、その料理下手、私も受け継いじゃってるなあ。
『鷹華? やっと繋がった』
……え、母さんなの?!
「おい、ヨーカ! どうしたんだ?」
私の独り言に、ギョッとするシャウさん。
『ずっと検索してたけど見当たらなくて……あなたアッサム・ヨーカって名乗ったの? 見つからないはずよ』
いやいや。勝手にシャウさんがそう思ったっていうか……
とにかくギリギリセーフ! 助けて! ゆっくりしてられないの!
『それはこの会話も同じよ。魔法で無理に時間を合わせながらだし』
そっか。3年対1時間って比率だっけ。大変ね。
って感心してる場合じゃないわ。竜が目の前に居るの!
『竜? だめよ竜は。美味しいけど似た味のお肉がないから、カレーに入れるぐらいしか誤魔化しようがないわ』
ちーがーうー! 狩ってるんじゃなくて、襲われてるの! 殺されちゃうわ!
『殺される? ……誰が?』
私よ私! 助けて! 死んじゃう!
『ふふ。鷹華、それは無理よ』
そんなぁ! 私、この若さで死にたくない!
『違うの。竜ごときがあなたを殺すなんて無理なの。あなた、私と父さんの子どもなのよ?』
え? まさか私に、何か秘められた異世界人特有の力が?
『……そんなの無い。あなたはごく普通の人間よ。どちらかと言うと、お父さんの血の方が圧倒的に濃い、典型的な大和撫子ね』
だめじゃん! 期待した私がバカだったー! 死ぬ! 私このまま死んじゃう!
竜は一声いななくと、前足で攻撃して来た。ひぃぃぃ!
『だから、死なないの』
ガキン! という音と共に、軽い衝撃が走る。私、死んじゃ……
……ってない。なんで?! 竜の爪が私の頬に命中しているのに、痛くも痒くもない。
「ヨーカ! 何が起きたんだ?!」
信じられないといった表情のシャウさん。
『鷹華。母さん、そっちの世界では竜どころか、世界を滅ぼすほどの力を持った魔王を倒した勇者なのよ? でも、こっちの世界では、お父さんに、腕相撲で勝てたこと無いの。知ってるでしょ?』
あ、そういえば、昔よくやってたね、腕相撲。って、あれ? それ手加減とかじゃなく?
『イシュタルドーズ最強の勇者である私が、普通の日本人女性と、ほとんど同じぐらいの力なのよ。つまり……』
……こっちの世界、とにかくみんな超弱いのか!
『その言い方は失礼よ。地球人が強すぎるの!』
「ヨーカ! 危ない!」
竜はもう一度、同じように腕を振り下ろしてきた。私は咄嗟に、それを片手で軽く払い除ける。竜は悲鳴のような声を上げて、30メートルほど飛び退いた。
……あれ? 違った、すっ飛んだのか。いやいや、本当に軽く払い除けただけなのに。
「す……すごい……」
竜は猛り狂い、突進してきた。ちょっとー。これのどこが温厚な生き物なのよ。
突き出された角を、両手で受け止める。ド迫力なのに、掴んだ感じは発泡スチロールみたい。軽い軽い。
『ねえ鷹華。あなた、竜を怒らせるような事、した?』
しないわよ。初対面だしさ。まあ、さっき食べたステーキが、竜だったっていうなら話は別だけど。
……違いますよね、シャウさん?
「さっきの肉? あれはベイアルだと思うぞ?」
わわ、まさかスプリンターのお肉だったとは。
……あ、そっか。私の足が早かったのも、あっちの世界の人間だからか。
『竜が何の意味もなく、人を襲う事は無いわ。他に思い当たる節はない? 竜の子どもをさらったとか』
するわけ無いじゃないそんな事!
あ、いけない。子どもといえば、さっきの女の子、大丈夫かな。
……良かった。ボールを大事そうに抱えて、少し離れた所に立っている。
ボールを抱えて?
……ボールじゃないよそれ! シャウさん、その子の持っているの、もしかして!
「……タマゴか?!」
お嬢ちゃん、それ、どこにあったの?
「お散歩してたらね、お空から落ちてきたの」
うん。きっと竜の卵だ!
ごめんね、それ、竜さんの大事なものなんだ。返してあげても良いかな?
「うーん……いいよ!」
良い子だね。竜さんもきっと喜ぶよ!
シャウさん、手が離せないから、ここまで持ってきて下さい。
「よしきた! ……しかし、大丈夫なのか?」
大丈夫。両手で角を掴んでいるので、竜はピクリとも動けない。
シャウさんが持ってきたタマゴを、竜の目の前……私の足元に置いてもらうと、竜は急に大人しくなった。やっぱりこれを探していたんだね。
>>>
……本当に有難うございました、シャウさん!
「こちらこそ。異世界人と出会えたなんて、光栄の極みだ。しかも、伝説の勇者の娘だったなんてな!」
町の人達の好意で、食材をいっぱいもらうことが出来た。え、こんなにいいの?
「竜を追い払ってくれたんだ。足りないぐらいだと思うぞ?」
えへへ。やったね! でも次回はちゃんと狩りをします。あのーもし良かったら……
「ああ。いつでもご一緒させてもらおう」
わーい! ありがとう! シャウさん大好き!!
『鷹華、準備はいい? 合言葉は分かるわね?』
あ、お母さん。言われた通り、荷物は全部、ロープで自分に括り付けたよ?
『それじゃ、戻りたい場所をイメージして、合言葉を唱えて』
……それじゃ、シャウさん、また来るね!
「待ってるよ! あと、勘違いしているようだが、私は男だぞ?」
ええ?! ちょっと! このタイミングで?!
>>>
私はこうして、無事帰ってきた。
それにしても、シャウさんが男だったなんて! 綺麗すぎて、女性だと思ってたよ。
「おかえり、鷹華。お疲れ様」
……お母さん。言いたい事も聞きたい事も一杯あるんだけど、そもそも何で異世界に、食材を狩りに行くの?
「あなた、イシュタルドーズで何か食べた?」
うん、すっごく美味しかった!
「ふふ。あっちの食材は、どれもこれも信じられないくらい美味しいの」
……え?
「実はお父さん、お料理がすっごく下手なのよ。異世界の食材で作らなきゃ、食べれたものじゃないわ」
衝撃の真実だ! ……そういえば、その料理下手、私も受け継いじゃってるなあ。
0
お気に入りに追加
39
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
もふもふ好きの異世界召喚士
海月 結城
ファンタジー
猫や犬。もふもふの獣が好きな17歳の少年。そんな彼が猫が轢かれそうになった所を身を呈して助けたが、助けた彼が轢かれて死んでしまった。そして、目が醒めるとそこは何もない真っ白な空間だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
…( ̄▽ ̄;)
要するに最高級の食材を無意に使って普通の
料理に?
勿体無いお化けを呼んで下さい
ご感想ありがとうございます〜!
しかも父ちゃん、自覚なしです……
。・゚・(ノД`)・゚・。オバケ キテー!
面白くて、一気に読んでしまいました(*´ω`*)
ト書きが一人称になってるのは初めて読んだので、新鮮でした。こういう書き方もあるんですね、勉強になりますφ(..)
ありがとうございます!
(人´∀`).☆.。.:*・゚
はじめて文字制限付きで書きましたので、色々とおかしな所や、書き足したいところも多々ありますが、そうおっしゃって頂けて安心しました! 本当に嬉しいです!
ヾ(*´∀`*)ノアリガトウゴサイマス
うおおおぉお!!
有難う御座います〜!
(人´∀`).☆.。.:*・゚
ここぞとばかりに、思いついたネタを片っ端からぶっ込んでみました!
(≧∀≦)
でも、父さんの料理ベタは、気付かれないと思ったのですが、そうですか……バレバレでしたか
。゚(゚´Д`゚)゚。
ご感想有難うございました!
今回の受賞は、一重に応援して頂いた皆様のおかげです。どうか今後とも、ご指導のほど宜しくお願い致しますm(_ _)m