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第1章 玖珂家
4 発情期のΩ
しおりを挟む悠真と澪が順調にお互いの気持ちを、不本意ながらも育んでいる時に限って、仲介屋はΩを連れて現れた。
その度澪は自分の立場と、悠真との将来に待ち受ける現実を思い出さずにはいられず、いつも悲しい想いをした。
悠真は澪の気持ちを完全に察しているわけではないだろうが、何か澪を悲しませる出来事だと気付いたらしく、追い返すわけにもいかないΩを引き取ると、すぐに賢木預けた。
「父さん、いつになったら俺にΩを与えるのやめるんだ?」
二人目のΩを賢木に預け、その後の報告を受けた後、悠真は大きな溜息と共に賢木に言った。
「俺にはもう澪がいるんだから、他にはいらない」
悠真の言葉に、澪は俯いた。
そうもいかないだろう、と。
賢木も溜息を零した。
「…それがどうも違うようなんですよ」
「どういうことだよ」
「確かに悠真さんと年齢が近いΩを見つけたら連れてくるように言ってあったようなんですが、連絡をしたのは澪さんの後、一度きり。後は断りを入れてなかっただけで、申請もしてないらしいんです」
「…え?」
澪も驚いて賢木を見た。
「じゃあ勝手に連れてきてるのか?」
「それに近い、ということです。でも今回、確実にお断りさせているので、もう連れてくることはないでしょう」
澪が知らずホッと息を吐いたのを悠真に見られてしまった。
柔らかい笑みを見せられて、澪は赤くなって俯く。
「完全なお断りを入れたことですし、私が前々から考えていたことを実行させて頂きました」
「へ?」
澪に気を取られていた悠真が、変な声を出した。
それに賢木が眉を寄せる。
「知り合いの刑事に告発させて頂きました」
「告発!?」
二人で声を揃え、それから顔を合わせる。
揃って向けた視線の先で、賢木の初めて見る憤慨した顔を見つけて、さらに驚いた。
「立派な人身売買ですよ?!時代遅れもいいとこ!」
「う、ん、そうだな」
悠真も驚いているらしく、躊躇しながら相槌を打っている。
「一つ一つ潰していくしか、手はないんですよ、こういうのは!」
「うん、そう、だな」
「そもそも澪さんの件だって玖珂は共犯同然です!ですが、告発する、協力する、ということで恩赦を頂きました!旦那様には二度とさせません」
「うん、そう、だな。その方が、俺も助かる」
まるで悠真を叱っているように、悠真の前で腰に手を当て力説する賢木を、澪はただ呆然と見つめた。
「賢木は前々からΩをやり取りするの、嫌いだったんだ」
寝室で二人してベットに横になると、悠真が話し始めた。
「賢木さんもΩだから」
「うん、だから澪の時も父さんにすっごく抗議したはずなんだよな」
「…そう…」
それを聞いて澪はちょっと複雑な思いがした。
仲介屋に玖珂家に連れてこられなければ、澪は悠真と出会うこともなく、もっとΩを奴隷として扱うαに売られていたかもしれず、こんな風に学校に通うことも、楽しく日常を過ごすこともできなかった。
きっと、考える事も苦しいぐらいの酷い日々を送っていたに違いない。
ある意味、仲介屋に助けられたのだから。
「父さん、滅多に賢木の機嫌を損ねるようなことしないんだけどな」
「………」
それは悠真と玖珂家の行く末を案じての苦肉の策だったのだろう。
「でも!もう大丈夫だな。澪も不機嫌にならなくて済む」
「なってないだろ?」
「なるじゃん、いっつも」
「なってない」
言い合いをしながら、最後には笑い合って、眠りについた。
それからしばらく。
澪と悠真が揃って学校から帰宅すると、玄関ホールに例の仲介屋の男が立っていた。
隣には色白のスラリとした青年を付き添えている。
思わず眉を寄せた悠真を、澪はちらりと見た。
「…断ったはずじゃないの…」
「どうなってる」
小声で交わしてから、悠真は男に近付いた。
「また連れてきたのか?」
しれっと話しかけて、Ωの青年を値踏みするように見る。
もちろん悠真にそのつもりはなく、男を探るためだ。
賢木から通達がいってるはずだったから。
「え、ええ。いい子が手に入ったんで、悠真様にお勧めに参りました」
「賢木には?」
「まだです」
悠真は少し考える振りをして、顎に手をかけた。
「…わかった。とりあえず預かる」
「それは困ります!買い取る以外で引き渡すわけには…」
男が即座に言い出し、悠真は眉を寄せた。
「高額な買い物だ。賢木を通さず俺が決めるわけにはいかない」
「またまた~。坊ちゃんなら、お小遣いで買えるでしょう?」
諂って、若干引きつった男に悠真が不審の目を向けた。
慌てたように青年を悠真に突き出す。
「今までの子よりも幾分年上ですが、慣れてますよ?扱いやすいはずです」
そう言いながら澪に視線をむけたので、悠真はそれを追い、それからぎっと男を睨みつけた。
「澪はあれでいい」
「…で、ですが、系統も違いますからお楽しみになれるかと…」
売り込み方が今までよりも必死に感じる。
悠真はちらりと男を見てから、ポケットからスマホを取り出すと賢木へ連絡をする。
少し男が青ざめたのが目に入った。
『はい』
数回の呼び出しののち、賢木が出ると悠真は男に背を向けた。
「仲介屋がまたΩを連れてきてるぞ」
『断ったはずですが。おかしいですね』
「引き取るか?」
『…高額なんですよ。簡単に言わないでください』
さらに小さい声で悠真はいう。
「どうする?」
『知り合いの刑事に連絡します。仕方ないので、引き取ってください。放置するわけにはいかなかったと説明してみます。どちらにしろ支払いは後からになりますから、なんとかその前に押さえてみますよ』
「わかった」
電話を下ろすと、一度澪に視線を投げてから男に向き直った。
「許可が下りた。引き取る」
悠真の返答にほっと息を吐くのが見えた。
Ωの青年の腕を悠真が取ると、逆の手を男が引いた。
「支払いはキャッシュで」
思わず悠真も澪も顔を顰めた。
「いつもは違うだろう?…だいたいキャッシュでそんな額持ち歩いてるわけないだろう」
「………」
男に焦りの色が見え始めた。
「…なら、この話は破談だな」
悠真が澪に視線を向け、二人で歩き出すと男が追いかけてきて行く手を阻んだ。
「で、では、振込先を変更してください」
思わず足を止めた悠真の横で、澪が溜息を吐いた。
悠真が振り向くと、澪は言った。
「僕は先に行ってるよ」
そしてちらりと悠真からこっそり受け取った手の中のスマホを見せる。
「澪」
悠真の声にも振り向かず階段を登り始めた。
「僕には関係ないから」
ちっ、と悠真がわざとらしく舌打ちして男に向き直る。
「振込先を教えろ」
ちらりと澪が振り向いた先で、男の安堵したような嬉々とした顔があった。
階段を登りきって廊下に出ると、澪は足早に歩き部屋へ飛び込んだ。
それからスマホを耳に当てる。
「すいません、賢木さん」
『いえ、いいんですよ。しかし、キャッシュと言い出したり振込先の変更といい、どうも単独で売りつけに来たようですね』
「あのまま会話を聞かせた方が良かったですか?」
『いえ。どちらにしろ、その場に踏み込むには時間がかかるので現行犯は無理ですから。一旦、帰すよりありませんね』
会話を続けていると悠真が部屋へ入ってきたのでスマホを渡した。
「なんだ、あいつ!いつもよりしつこいぞ!他にも売りつけたいみたいに言ってる」
電話を変わるなり、悠真が不機嫌そうに話し始めた。
澪はΩの青年をソファーへ案内した。
腰掛けさせ、にっこりと微笑む。
「もう大丈夫ですから。リラックスしててください」
「…なんのこと?」
「え?」
ちらりと悠真を振り向いて、声を潜めて青年は言う。
「俺、自分の意思で売られてきたんだから邪魔すんなよ」
「え」
「見た所、お前もあの坊ちゃんに飼われてるみたいだけど、何て名前?」
「僕は澪です」
「あ、っそ。俺は啓太。俺、戻されんの?」
「いえ。解放されます」
そう澪が答えると、小さく舌打ちする。
「追い出されるんだな。せっかく大金持ちのαに出会ったってのに。いつだよ」
「多分、2~3日中には」
するとニヤリと笑った。
「ギリだな。俺、多分もうすぐ発情期なんだ。ここにいる間に発情期に入って、あの坊ちゃんと既成事実作っちまったら、追い出されねーよな。しかも妊娠したら愛人確定じゃん?」
澪は呆然と青年、啓太を見下ろした。
彼は初めから悠真の愛人になるつもりでいる。
自分とは真逆だった。
Ωとしての宿命を割り切って、利用しようとしている。
たくましいし、羨ましくもある。
自分も割り切れたら、どんなにか楽だろうと思う。
けれど悠真をαとしてしか見ておらず、他にはなんの感情も抱いていない青年と違って、澪には別の感情がある。無視できない、いつの間にか膨れ上がってしまった感情が…。
「発情期までなんとか居座ってやる。…邪魔すんなよ」
「…明日、お昼頃…」
「は?」
啓太が澪を見上げた。
澪は静かにそれを見下ろして続けた。
「あなたの発情期が訪れる時間です。…その頃、ちょうど僕たちは勉強が終わって書斎から出てきますから…」
「なにそれ、予言?」
啓太は馬鹿にしたように笑った。。
「違います。僕はオメガバースの匂いとか気配に敏感で、自分の発情期も他人の発情期も大体の時間までわかるんです」
そう言って澪は悠真に視線を向ける。
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啓太に澪は苦笑いした。
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「…お前のもか?…」
澪は髪をかきあげ、耳を見せた。
キラキラと光るピアスが二つ付いている。
「言ったでしょう?僕は自分の発情期がわかります。薬とこの抑制器で完璧に抑えてます」
「…お前、あの坊ちゃんのΩじゃねーのかよ…」
「僕は…ただの居候です」
そして電話を終えた悠真に近寄った。
悠真には2人の会話は全く聞かれていなかったようだ。
「賢木がなんとかするってさ」
澪を見るなりそう言った。
「そう。良かった」
澪が柔らかい笑みを見せると、悠真はにっこりと笑う。
それから啓太に近付いた。
「悪いな。すぐなんとかしてやるから、それまでここで我慢しててくれ」
「はい。ありがとうございます。あの、僕は啓太と言います」
澪に対峙した時と別人のようにしおらしく悠真に向かう。
「俺は悠真。こっちは澪」
「お世話になります。悠真さん、澪さん」
そして小さくお辞儀をして見せた。
悠真が好印象を啓太に持ったことが、澪にもわかる。
思わず感心してしまうほどの化け方だ。
悠真は啓太に書斎奥の寝室を使うよう勧め、屋敷からはセキュリティー上、勝手に出ると捕まってしまう事などを説明した。
それから3人で敷地内のゲーム場やTVを見たりして過ごした。
啓太は悠真に取り入るように、積極的に話しかけたり微笑みかけたりしていたが、時々、澪に冷たい視線を投げ、悠真が澪に構う度、睨みつけてきた。
わかりやすい、といえばわかりやすいし、理解できた。
澪が邪魔なのだ。
澪が悠真と過ごしてきた時間はまだそれほど長くはない。だが来たばかりの啓太に比べれば、悠真のことを知っているし、行動をお互いに予測できたりもした。
それが気に入らないらしい事もわかった。
澪は啓太にわかりやすい妨害を受けながらも、黙ってそれを甘んじる。
啓太との会話を悠真にも賢木にも話さなかった。
正直、自分がどうしたいのかわかっていなかったから。
翌日、予定通り朝から家庭教師の倉石が現れ、二人で授業を受けた。
啓太は一人、隣のリビングで悠真から渡されたDVDを見ている。
いつもは開きっぱなしの書斎とリビングを隔てるスライド式の扉は、今日は完全に閉じられていた。
だから澪にもリビングの啓太の様子は分からなかった。
正午を告げる時計の音に倉石が席を立つと、二人で見送る為扉を開けた。
そしてすぐに澪は気付いた。
だからそうっと後ろに下がって、倉石と悠真から離れた。
「それではまた来週伺いますね」
「ああ。ありがとう」
βである倉石もαの悠真もまだ気付いておらず、倉石がドアから出て行くと悠真は小さく背伸びをしながら、啓太がいるはずのソファーに近付いていった。
それを見ながら澪はそっと後ずさった。音も立てず、ゆっくりと。
TVはついていて、DVDをながしていた。
「待たせて悪かったな。昼飯にしよう」
悠真が啓太に話しかけるのを見て、澪はぎゅっと目を閉じ身を翻し、音も立てずに書斎奥の部屋へ入り込んだ。
「お、おい、どうした、!?っ」
最後まで見ることが出来ず、澪はドアを閉めた。
ドアを閉めると悠真の声もTVの音も聞こえなくなる。
ぎゅっと閉じた目から、一筋涙が落ちた。
それからベッドに倒れこむと、枕を抱きしめ、顔を押し付けた。
自分にはなんの権利も資格もない。
けれど、別の誰かに欲情する悠真など見たくない。
悠真と一線を越える勇気もないくせに。
一線を越えてしまえば、自分のこの気持ちが加速するだけなのがわかっている。
そしていつか来る悲しく辛い現実に耐えられなくなる。
それが怖かった。
ずっと。
だから頑なに悠真と距離を置きたがった。
でも、こんなにも辛い。
壁を隔てた向こう側で起きていることを思うと、胸が苦しくて痛い。
きっと悠真はどんな時でも優しい。
想像が頭を過ってしまって、打ち消すように頭を枕に擦り付けた。
がちゃ、と音がして驚いて振り向くと、真っ赤な顔をして息を喘がせた悠真が寄りかかるようにしてドアを閉めていた。
途端、部屋の中にαの匂いが充満した。
強い、興奮したαの…。
澪は咄嗟に鼻を覆った。
じんわりと涙が浮かぶ。
喜びと恐怖と。
かち、っという音をさせて鍵をかけながら荒い息をして澪を睨みつける。
「知って、たんだろっ!?」
どんなに手を押し付けても、αの匂いがする。
澪は必死に首を振った。
「あいつが、発情期に、はい、ること」
ベッドを這い上がるようにして近付いて来る悠真から、尻でずり上がるようにベッド端へ逃げた。
「い、やぁ、はる、ま、こないで」
もうすでに悠真の匂いに囚われてしまって、全身にゾクゾクとした違和感を感じていた。
「なんでだよっ」
見たこともない悠真の表情に、くらくらする。
欲情して興奮する悠真に、興奮し欲情する自分を止められない。
「だ、め、はるま」
足を掴んで引っ張られると、ずるっと体が滑り落ち、簡単に這い上がってきた悠真の下に敷かれた。
熱を持ち始めた下肢をぎゅっと閉じ、悠真を見上げ懇願する。
「はる、ま、だめ、おねが、い」
「何がだめなんだよっ」
澪の手を掴んでシーツに縫いとめる。両手を悠真に抑えられると、澪にはもうαの匂いから逃げる術がなくなった。
見上げた悠真の顔にはじんわりと汗が滲み、上気した頬、情炎を宿した瞳、少し耐えるように寄せられた眉が雄を匂わせた。
「こわい、はるま」
必死にそれだけを訴えた。
もうすでに身体は流されてしまっている。
悠真の醸し出すαの欲情と興奮に。
しかしこのまま流されて、後悔したくない、と澪は必死に抵抗した。
望んでないわけじゃない。
ただその後が怖いのだ。
悠真の幸せを見ているだけでいい、なんて綺麗事、自分には言えないし耐えられない。
今ですらそう感じてしまうのに、身体を重ねてしまったら、深みに落ちてもう戻れなくなる。
「はるま、ぁ」
「澪、俺を、信じろよ」
唇を重ねられると、じん、と頭の奥が痺れた。
それまで必死に抑えていたのか悠真に荒々しさが宿り、噛みつかれるようなキスを受けながら服を乱暴に剥ぎ取られていく。
押さえつけられてもいないのに両手はシーツの上から動かせない。
肌を悠真の手がなぞり始めると、やっと動き出し、きゅっと悠真の肩を掴んだ。
「ふぁ、んっ」
放された唇が首筋を降り、胸に辿り着く。
時々痛みを感じるほどに強く吸われ、澪の身体は自然に跳ねた。
胸を撫でながら、反対の突起に吸いつかれると、悠真の頭を掻き抱く。
「や、ぁ、悠真」
そんなところが感じるなど初めて知って、羞恥に全身を赤く染めた。
悠真の手が下肢の膨らみを捉えると、ぎゅっと目を閉じる。
「ひ、あ」
悠真は無言で、澪の身体を貪る。
肌にかかる悠真の吐息は熱く、それすらも澪を熱くさせた。
胸を舐め突起を弄ぶ一方で、悠真の手は澪の入口を探して、双丘を割り入った。
思わず身を捩って逃れようとすると、別の手が急所をぎゅっと掴んだ。
「い、やんっあ」
一本ずつ、慎重に差し込まれては中をこじ開ける。
中で指が蠢く度、内部から受け入れようと体液が分泌される。
悠真の手が動く度に、淫猥な濡れた音を立て始め、澪の羞恥を煽った。
強引に押し広げようとする動きに痛みを感じながらも、別の場所で起こる快感に溶け込んでしまう。
ふいに差し込まれた指に内壁の一部を触れられて、知らず腰が跳ねた。
「ひ、ゃぁん」
ガクガクと体が震え始めると、悠真がそこを集中的に責め始める。
「やあ、あ、んん」
知らない快感に身体はビクつき、一気に射精感が高まった。
「だ、め、はる、まぁ、でる」
前を刺激している悠真の手がさらに激しさを増すと、澪は耐えきれず身体を反らし、白濁を零した。
「あ、あ、あ」
余韻に震える澪の膝を抱え上げ、悠真が見下ろして来る。
高まり過ぎた感覚に知らず潤む瞳で澪も見上げると、膝を大きく開かれ、秘部に悠真の熱を感じた。
「澪」
熱っぽく悠真に呼ばれるとぞくぞくした。
悠真によって荒々しくも高められた快感や興奮が、澪から抵抗の意思を消し去っていた。
身体も心も、悠真が欲しくて堪らない。
「悠真」
腕を悠真の首に回すと、ゆっくりと侵入してくる。
悠真によって懸命に解されたとはいえ、質量の違うものに澪は悲鳴を上げた。
「ああああ、い、た、ああ」
それでも分泌液に助けられ悠真が入りきってしまうと、埋め込まれた熱にじんと痺れを覚えた。
「れい、れい」
繰り返し悠真に呼ばれ、澪は答えるように悠真の背に腕を回した。
開始された抽送にまたも痛みを感じながら、目の前で揺れる悠真の顔を見つめた。
「あ、あ、あ、あ」
一緒に揺れながらじっと悠真を見つめていると、ふわっと笑われ、それから唇が重ねられる。
悠真の舌を追いかけることに夢中になって痛みを忘れかけた頃、探るような動きに変わり、すぐに先ほど澪が感じた場所を突き止められた。
「あああっ」
唇から逃れて澪が喉を反らす。
その喉元に悠真は吸い付いてくる。
「や、ああ、あ、ん、あ、はる、ま、あん」
一点を集中的に先端で擦りあげられ、喘ぎ声を止めることもできなくなる。
首を振って快感を逃そうとしても、悠真がその首筋を舐め上げ吸い付き刺激してくる。
「ああ、ん、ああ、はる、ま、い、く」
「れい、俺も」
悠真がさらに加速して動き出すと、澪は嬌声を上げ続けるばかりになった。
「ああああああ、ああ、あ、ああっ!」
一気に駆け上がって澪が果てると、内部の収縮に耐えきれず悠真が吐精した。
「あ、れい」
「はる、ま、ああ、あつ、い」
内部に放たれた熱に澪が震えていると、悠真はぎゅっと抱きしめてくる。
違和感を感じ澪が悠真を覗き込むと、苦笑いが返ってきた。
「ごめん、澪」
返事をする間も無く再び抽送が始まり、澪はさらなる快感の波に飲まれていった。
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