薄雲の先に君を見つけた

西湖 鳴

文字の大きさ
上 下
1 / 6

Ep1 高校デビュー

しおりを挟む
 俺は生まれながらにして性格が悪い。
 性格が悪い父親と性格が悪い母親の間に生まれた性格の悪さにおけるサラブレッドと言ってもいい。
 性格の悪さが先天性なんて、そんな馬鹿な話があるもんかって思うだろ?
 俺も中学の頃はそう思ってた。
 でも、人に嫌われないよう努力すればするほど、自分の身に染みた性格の悪さが露見する。 
 そのときは『これぐらい』って思ったことも、後になってやっぱりやり過ぎだって気づいたりする。
 しかし、俺は中学3年までそれに気づかなかった。
 小学校では無意識の悪口で敵を作りすぎてしまい、いじめのターゲットになった。
 中学では友達と呼べる人間がなく、ひたすらぼっちだった。
 なぜこんなに不幸なのか、どうして俺はみんなみたいに毎日が楽しくないんだ?
 中学を卒業する頃になってようやく俺は、自分が人を平気で傷つけていたからだと気づいたのだった。




 Ep1 高校デビュー



 性格が悪いと一口に言っても、その種類はいろいろだ。
 人によって態度をコロコロ変えて強い者になびく奴、簡単に嘘をついて平気で裏切る奴、自分の思い通りにコトが進まないとキレる奴、仲良くしている人間の陰口を平気で言える二面性の激しい奴とか。
 俺は、人を傷つける言葉を平気で放てる人間だった。
 思ったことをズバズバ言えると言えば聞こえはいいが、要するに無神経な奴だったんだ。
 どんだけクズかこれじゃ想像つかないか?
 じゃあ実践してやろう。
 
 「おまえってさぁーアニメオタクだよな! 俺、アニメって嫌いなんだよなぁ。キモいしな!」
 「おまえってすっげぇ鼻の穴でかいな? それに出っ歯だし。背も低いしいいとこないな!」
 
 俺は今までこういうことを平気で言える人間だった。思いやりがなく、サラッと人を傷つける天才。
 言えるってだけじゃなくて、人の悪い部分ばかりに目が行く時点でもう……。
 どうだ? クズだろ? だからみんな俺の前からいなくなった。
 それに気づいた俺はそんな自分を卒業した。
 と、言えればいいんだが……。
 中学も後半にさしかかって俺は、自分の悪い部分を修正すべく努力した。
 だけど……。
 テレビに向かって常に悪態をついている親父。
 友達なんていらない、なんて平気で俺にぬかす母さん。
 人の欠点を笑いながら指摘する姉貴(俺と一緒)。
 俺が自分自身の無神経に気づいたある日、家族全員のそういう醜さがはっきりと見えた。
 一緒に暮らしているからこそ見えなかったもの。
 それが急に目につき始めた。
 彼らと生まれてからずっと一緒に暮らしている俺が、ちょっと努力しただけでなんとかなるものなのか?
 おそらく家族だってみんな、自分が性格悪いなんて気づいていないのかもしれない。
 なかなか簡単には治せないだろうな……。

 でも、俺は俺たち家族が無神経な家族だって気づけた。
 だからこそ、注意をすれば、無神経な発言をして友達をなくす事態を避けることができるかもしれない!
 中学までの同級生たちは俺の正体を知ってるから今更無理だけど、進学先なら……。

 ということで俺は、県外の誰も知り合いのいない高校に単身で進学し、高校デビューを企てることにした。
 
 まずは、笑顔だ。
 笑顔は人に好感や親しみやすい印象を与える。人畜無害を装うこともできるからな。
 それと、制服はできるだけ着崩さないようにする。
 髪を染めたりも、憧れてたけどやめる。清潔感が大事だ。
 目立たないようにもしないとな。どこでボロが出るかわからんから。
 本性がばれるようなシチュエーションを自分から作り出さないことがポイントだ。
 教室でもできるだけ自分からはアクションを起こさない。
 ただし、人に好感を与える行動は(選ぶが)やる。


 ……俺のストレスMAXな生活は、そうやってスタートを切ったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

一宿一飯の恩義

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 妹のアイミが、一人暮らしの兄の家に泊まりに来た。コンサートで近くを訪れたため、ホテル代わりに利用しようということだった。 兄は条件を付けて、アイミを泊めることにした。 その夜、条件であることを理由に、兄はアイミを抱く。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

処理中です...