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第二章 ライバル出現!? おいしい魚料理!
その2
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一週間後
始業前の短い時間、結貴は息を切らせて教室へと入る。
すると珍しく修の方から彼女を探しているようだったらしく、入るなり一番に話しかけてきた。
「おはよう! 読んだよ」
「あ、見てくれた?……ふう、遅刻するところだった」
結貴はずっと走ってきたらしく、額には汗が滲んでいる。そんな彼女の様子を気にもせず、修は半ば興奮している。
「小山さんてすごいんだね! あんな記事が書けるんだもんね! 僕、感動したよ!」
「ありがと。でも学校新聞なんて一部の奴しか読んでないから……」
「そんなことないよ! みんな新聞読んでたよ。僕見てたから知ってる、ほら」
修が指差す先には、掲示板に張られた学校新聞を読む同級生の姿。修が言うには、入れ替わりで記事を読みに来る人が結構いるらしいのだ。
それを見て、結貴は照れ笑いをした。
「あは、ほんとだ……」
「実はさ、今朝これを読むなり城戸君と山田さんが僕に話しかけてくれたんだ。料理できるの、すごいって……」
修も照れ笑いをしている。
結貴は記事を書いてよかった、と心から思った。
いつものように時間は進み、いつも通りに過ぎるはずだった時間が豹変したのは、昼休みが始まってすぐだった。
「高崎修君はいるかい?」
教室の入り口から顔を出す一人の男に、ちょうどお弁当を持って出て行こうとしていた修と結貴は顔を見合わせた。
「なんですか?」
廊下は購買部へと急ぐ学生たちでとても騒がしい。
修はにこやかに男に話しかけた。一方、結貴はなんだかいやな予感がしてはらはらしていた。
「やぁお久しぶり。僕は今特別クラスにいるんだ」
彼も修の笑顔に応えるようににこやかに右手を差し出してきた。
彼は修のような柔和なタイプではなく、ストレートの長髪を後ろで尻尾のように結んだ少年だった。背は修より若干高く、自信ありげな表情が印象的だ。
「高崎君の名前を見つけてびっくりしたよ。まさか同じ学校に進学してたなんてね。学年トップおめでとう!」
「??? あ、ありがとう……」
修は半分困り顔になりながら笑顔をなんとか保っていた。
「修君、知り合い?」
状況の呑み込めない結貴は修を見る。すると修は更に困ったように頭を掻いた。
「ご、ごめん……その、君のこと覚えてないみたいなんだけど……ほんとにごめんっ! どちら様でした……?」
修の言葉に結貴と彼は硬直した。修は困ったように頭を掻いている。
「……こ、こっちが下手に出れば……」
彼は拳を握りしめて何かを我慢しているように口をぎゅっと結んでいる。
「お、落ち着いて……」
結貴はなんとか彼を落ち着ける為になだめようとするが、何者なのかわからない上に彼が何をしに来たのかがわからないので、どうなだめていいのかわからず、一人で焦っていると……。
「ほんとにごめん……」
「……勝負だ!!」
「えっ……!?」
彼の口から出たのは、《勝負》の一言だった。その声は大きく廊下に響き渡る。
何が起こったのかと廊下を歩く生徒たちは修ら三人を見ている。数秒間廊下は静寂に包まれた。
「放課後俺が来るまで勝手に帰るんじゃねぇぞ!!」
「……」
少年は修を一睨みすると、踵を返して勢いよく去って行った。
二人が呆然としていると、結貴がぼそりと言った。
「……そういえば、あの顔どこかで見たことあるかも……」
「小林龍之介。うちの学校に首席で入学して新入生の挨拶した子だよ。今も特別クラスの中では成績トップじゃない?」
そう言いながら二人の後ろから現れたのは、クラスメイトの竹本だ。
「ふーん……」
修は竹本の話を聞いて手の平を拳で軽く叩いた。
「小林……? もしかしてあの小林君かな……?」
「思い出した?」
「中学のとき同じ学校だったんだよね。三か月しかその中学にいなかったんだけど、同じクラスでさ、親切でいい人だなって思ってたんだけど……中学一年のときだし、ちょっとしかいなかったからあんまり覚えてないんだ」
「なるほどね……それにしても小林君、やけに修君を敵視している感じしたけど、身に覚えないの?」
「う~ん……それが、全然……」
修は苦笑いをして頭を掻く。すると竹本が再び口を開いた。
「僕には単なる僻みに思えたなー。だってさ、あいつ首席で入学したのに、テストの成績ではずっと高崎にトップ奪われ続けてるだろ。勝負ってのはよくわかんないけど、高崎、お前を目の上のタンコブだと思っているのは確かなんじゃないかな?」
「……そうなの!?」
結貴と修が揃って声を上げるのを見た竹本は、呆れたようにテスト結果の順位が載ったプリントを差し出した。
三人で頭を並べてプリントを見る。
「……ほんとだ」
プリントの順位一位には高崎修の名前があるが、すぐ下の二位には小林龍之介、とある。
それだけではない。
学期末テストだけではなく、中間テストも実力テストも、まるですべて同じ順位で固定されているかのようだ。
これを見れば、何も知らない人でもそう勘ぐるのは当然かもしれない。
結貴と修は呆れたように溜息をついてお互いに苦笑いをした。
「それにしても、高崎」
「ん?」
「お前テスト結果の順位見てないの? この順位が気になってる奴いっぱいいるぜ?」
竹本に言われ、修は困ったように笑う。
能天気な修に、横にいる結貴は呆れ顔で肩をすくめた。
始業前の短い時間、結貴は息を切らせて教室へと入る。
すると珍しく修の方から彼女を探しているようだったらしく、入るなり一番に話しかけてきた。
「おはよう! 読んだよ」
「あ、見てくれた?……ふう、遅刻するところだった」
結貴はずっと走ってきたらしく、額には汗が滲んでいる。そんな彼女の様子を気にもせず、修は半ば興奮している。
「小山さんてすごいんだね! あんな記事が書けるんだもんね! 僕、感動したよ!」
「ありがと。でも学校新聞なんて一部の奴しか読んでないから……」
「そんなことないよ! みんな新聞読んでたよ。僕見てたから知ってる、ほら」
修が指差す先には、掲示板に張られた学校新聞を読む同級生の姿。修が言うには、入れ替わりで記事を読みに来る人が結構いるらしいのだ。
それを見て、結貴は照れ笑いをした。
「あは、ほんとだ……」
「実はさ、今朝これを読むなり城戸君と山田さんが僕に話しかけてくれたんだ。料理できるの、すごいって……」
修も照れ笑いをしている。
結貴は記事を書いてよかった、と心から思った。
いつものように時間は進み、いつも通りに過ぎるはずだった時間が豹変したのは、昼休みが始まってすぐだった。
「高崎修君はいるかい?」
教室の入り口から顔を出す一人の男に、ちょうどお弁当を持って出て行こうとしていた修と結貴は顔を見合わせた。
「なんですか?」
廊下は購買部へと急ぐ学生たちでとても騒がしい。
修はにこやかに男に話しかけた。一方、結貴はなんだかいやな予感がしてはらはらしていた。
「やぁお久しぶり。僕は今特別クラスにいるんだ」
彼も修の笑顔に応えるようににこやかに右手を差し出してきた。
彼は修のような柔和なタイプではなく、ストレートの長髪を後ろで尻尾のように結んだ少年だった。背は修より若干高く、自信ありげな表情が印象的だ。
「高崎君の名前を見つけてびっくりしたよ。まさか同じ学校に進学してたなんてね。学年トップおめでとう!」
「??? あ、ありがとう……」
修は半分困り顔になりながら笑顔をなんとか保っていた。
「修君、知り合い?」
状況の呑み込めない結貴は修を見る。すると修は更に困ったように頭を掻いた。
「ご、ごめん……その、君のこと覚えてないみたいなんだけど……ほんとにごめんっ! どちら様でした……?」
修の言葉に結貴と彼は硬直した。修は困ったように頭を掻いている。
「……こ、こっちが下手に出れば……」
彼は拳を握りしめて何かを我慢しているように口をぎゅっと結んでいる。
「お、落ち着いて……」
結貴はなんとか彼を落ち着ける為になだめようとするが、何者なのかわからない上に彼が何をしに来たのかがわからないので、どうなだめていいのかわからず、一人で焦っていると……。
「ほんとにごめん……」
「……勝負だ!!」
「えっ……!?」
彼の口から出たのは、《勝負》の一言だった。その声は大きく廊下に響き渡る。
何が起こったのかと廊下を歩く生徒たちは修ら三人を見ている。数秒間廊下は静寂に包まれた。
「放課後俺が来るまで勝手に帰るんじゃねぇぞ!!」
「……」
少年は修を一睨みすると、踵を返して勢いよく去って行った。
二人が呆然としていると、結貴がぼそりと言った。
「……そういえば、あの顔どこかで見たことあるかも……」
「小林龍之介。うちの学校に首席で入学して新入生の挨拶した子だよ。今も特別クラスの中では成績トップじゃない?」
そう言いながら二人の後ろから現れたのは、クラスメイトの竹本だ。
「ふーん……」
修は竹本の話を聞いて手の平を拳で軽く叩いた。
「小林……? もしかしてあの小林君かな……?」
「思い出した?」
「中学のとき同じ学校だったんだよね。三か月しかその中学にいなかったんだけど、同じクラスでさ、親切でいい人だなって思ってたんだけど……中学一年のときだし、ちょっとしかいなかったからあんまり覚えてないんだ」
「なるほどね……それにしても小林君、やけに修君を敵視している感じしたけど、身に覚えないの?」
「う~ん……それが、全然……」
修は苦笑いをして頭を掻く。すると竹本が再び口を開いた。
「僕には単なる僻みに思えたなー。だってさ、あいつ首席で入学したのに、テストの成績ではずっと高崎にトップ奪われ続けてるだろ。勝負ってのはよくわかんないけど、高崎、お前を目の上のタンコブだと思っているのは確かなんじゃないかな?」
「……そうなの!?」
結貴と修が揃って声を上げるのを見た竹本は、呆れたようにテスト結果の順位が載ったプリントを差し出した。
三人で頭を並べてプリントを見る。
「……ほんとだ」
プリントの順位一位には高崎修の名前があるが、すぐ下の二位には小林龍之介、とある。
それだけではない。
学期末テストだけではなく、中間テストも実力テストも、まるですべて同じ順位で固定されているかのようだ。
これを見れば、何も知らない人でもそう勘ぐるのは当然かもしれない。
結貴と修は呆れたように溜息をついてお互いに苦笑いをした。
「それにしても、高崎」
「ん?」
「お前テスト結果の順位見てないの? この順位が気になってる奴いっぱいいるぜ?」
竹本に言われ、修は困ったように笑う。
能天気な修に、横にいる結貴は呆れ顔で肩をすくめた。
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