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湯船
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いつも言ってることだけれど、ぼくはわたしは君に会いたいのです。とか。
実家に帰ると、親戚の子がうちでお風呂に入っていったのがわかった。その子の親、血が繋がっていない側の体臭がした。汗くさいとか加齢臭とかではなく、たぶん相性の問題でわけもなく臭く感じる相手が要るという話をなにかで読んだ。免疫タイプが違うもの同士で繁殖した方が、より幅広い免疫を持った子孫を残せるので、免疫タイプが近い一緒になるのはもったいない個体のことをわけもなく臭く感じるとかなんとか。本当かどうかは知らない。ただ、におってはいけないと本人が清潔を心がけても感じる体臭について、文句をいうような人間になりたくなかった。とはいえ、苦手なものは苦手だ。その子ども、においが近づいてきたなと成長をかんじるのはいいとして、周りはどう感じてるのか。女の子なので気の毒な気もする。
それからもうひとつ。おなじく親戚の女が直前にはいっていた。一時間換気扇を回しても、まだすさまじい香料でむせている。夕飯がのどにたまっている。彼女もまた、狙ったように苦手な香料だなといつもおもっていたが、脳内でサンプルの濃度までうすめると特別嫌いではない「一般的にいいにおい」なのだと気づく。度合いが危険なのだ。けれど、メンタルヘルスに問題がある女性で通ったあとの廊下に小一時間ハンドクリームの香りが残るような人や、香水を鎧レベルにまとわないとそとに出られない人たちというのは学校なり職場なり一定数いるので、これも持病の鎮静剤なのだろうと見守るしかないのだ。呼吸はくるしいし、吐きそうだが。吐いたが。
そうやって、諦めて受け入れるこの身を許して癒してくれる人間。わざわざなぐさめてくれるような相手はいないが、存在を感じるだけで精神が落ち着く相手が、きみだ。脳内で名をなぞるだけでいい、存在を思い描けばいい、あえなくなってずいぶんとたつが何度も夢に見た。生きていてはいけないような追い詰められた気持ちも、なんらかの悟りのような光が包んでくれるのだ、君のことを考えている間だけは。
そうだ。
顔を会わせることはないが、こちらは君の姿を見つけることができなかったが、あのとき同じフロアにいたことを知り飛び出したかった。君に!君に!やっと会えると思ったのに!!
実家に帰ると、親戚の子がうちでお風呂に入っていったのがわかった。その子の親、血が繋がっていない側の体臭がした。汗くさいとか加齢臭とかではなく、たぶん相性の問題でわけもなく臭く感じる相手が要るという話をなにかで読んだ。免疫タイプが違うもの同士で繁殖した方が、より幅広い免疫を持った子孫を残せるので、免疫タイプが近い一緒になるのはもったいない個体のことをわけもなく臭く感じるとかなんとか。本当かどうかは知らない。ただ、におってはいけないと本人が清潔を心がけても感じる体臭について、文句をいうような人間になりたくなかった。とはいえ、苦手なものは苦手だ。その子ども、においが近づいてきたなと成長をかんじるのはいいとして、周りはどう感じてるのか。女の子なので気の毒な気もする。
それからもうひとつ。おなじく親戚の女が直前にはいっていた。一時間換気扇を回しても、まだすさまじい香料でむせている。夕飯がのどにたまっている。彼女もまた、狙ったように苦手な香料だなといつもおもっていたが、脳内でサンプルの濃度までうすめると特別嫌いではない「一般的にいいにおい」なのだと気づく。度合いが危険なのだ。けれど、メンタルヘルスに問題がある女性で通ったあとの廊下に小一時間ハンドクリームの香りが残るような人や、香水を鎧レベルにまとわないとそとに出られない人たちというのは学校なり職場なり一定数いるので、これも持病の鎮静剤なのだろうと見守るしかないのだ。呼吸はくるしいし、吐きそうだが。吐いたが。
そうやって、諦めて受け入れるこの身を許して癒してくれる人間。わざわざなぐさめてくれるような相手はいないが、存在を感じるだけで精神が落ち着く相手が、きみだ。脳内で名をなぞるだけでいい、存在を思い描けばいい、あえなくなってずいぶんとたつが何度も夢に見た。生きていてはいけないような追い詰められた気持ちも、なんらかの悟りのような光が包んでくれるのだ、君のことを考えている間だけは。
そうだ。
顔を会わせることはないが、こちらは君の姿を見つけることができなかったが、あのとき同じフロアにいたことを知り飛び出したかった。君に!君に!やっと会えると思ったのに!!
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