半熟卵とメリーゴーランド

ぼくらの好きとか

  もう、いい年齢だ。好きと自分でいっても、人間的な好感の話で終わってしまうようになった。それはそうなのだけど、そのなかでも特に違う次元で好きなのよと、うまく通じないものである。みっともないとか、好かれて気持ち悪いんじゃないかとか、気遣いなのか気違いなのかわからない思考にかられる。

  ぼくは、君に会うためだけに頑張っているつもりだった。頑張っているという言葉が苦手なので、やるべきことをやれない人もいるなかで最善を尽くして来たといっておこう。いや、それほどすごいわけでもなく、ハードルが低くて、でも、でも。うん。がんばったのだ、つまりは、それでいい。

「ぼくは、つくづくきみのそういうところが好きです」

それまで続いていたチャットが止まる。お互い仕事をしながらだから、という事でしかたがないにせよ。

「そういえば、本を買いました」

時間の開きは話題の開き、君は話題の転換に黙っていたのだろうと、さみしくなる。その一方で、その気遣いの策に感心するところもあり、また話題を変えて会話を続けようとしてくれてることにありがたさを感じる。この仕方のない執着心が深まる。

  ひとつの敬意。興味。この仕方のない年の取り方をした馬鹿者が、規範とすべきものを身に付けている相手。そばにいて、よく見て、それこそ見習わなくてはならない相手。だからそばにいたいという、この感情はなんなのだろうかと。

そういう屁理屈を要約すれば、やっぱりぼくはきみが好きなのだ。