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大御所症候群

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  友人のお店やさんごっこ。
  失礼、お店。
  で、知り合ったご老体の、セクハラがつらい。ご本人はユーモアのおつもり、それを受け流すのが良い女なのでしょうけれども、どっと疲れがでる。SNSでのたまのコメントも、あまりの的はずれに驚かされてしまう。この人は根っこから、我々の世界とは違うところの人なのだろう。

  つまるところ。

  我慢する疲れと、平気でいられない自分への悔しさと、友人への疑問とで、疲れてしまう。貴重な休みに何をしてるんだ自分は、という疑問もわく。

  さておき。

  新しい材料を買った。創作のインスピレーション、手の中の取材、やったぞやったぞかなり理想に近い。
  
  私の作品によく出る、今の煙草原稿にも求められていたらしい、石の話。私は地球ロマンとして鉱石が好きで、彼女はパワーストーンという意味合いで好きなのだそうだ。

  完全な理想通りのものではないという点までも、イメージしていたとおりのものだった。手にはいるものが完全であってはならない、理想の極みは手にはいらず追い続けたい、ならば外で出会って買える品は8割から9割程度の満足度をキッチリと満たすものが最高なのだ。自分にとって。かなしいかな、私は、画家としてひねくれている。

「てことはさー」
「はい」
「て、ことは、なのよ」
「どうされたんです?」
「好きなのに、プレゼントされてもうれしくない品ってことになる?」
「それはそれです、ちゃんと嬉しいですよ」
「そこは普通なのね」
「創作に役立つだろうと恩着せがましく押し付けられたら、すごくすごく不愉快ですけどね。お花やお菓子みたいに、好きものをあげようって感覚なら、嬉しいです」
「めんどくさいひと、だからひとりぼっちなのよね」
「と、二人でいるところで言われると複雑だなぁ。でも、まぁ、ぼっちなんでしょうね」

友達関係が希薄というか、踏み込めない壁があるというか、友達がいない。友達らしき人を、こちらから友達という勇気がない。そういう人に育ってしまった。堆積した地層に重みがなく、スカスカだが軽やかでもなく、ただ古い。古き善きなどという言葉もあてはまらない、老朽化した壊れていい場所。罵る言葉が思い付かない。

「欲しい石が、そこに居るのはわかってたのに」

ある日の売り場を思い出した。

「この中に居るから、みつけてねって、気配を感じたんだ」

それはまるで、花畑のなかのたった一輪が前世の恋人であったかのように。

「あの子がとなりにきて、これいいよ、こっちはどうオススメだよ、面白いねって。煩くて声がかきけされて、すすめる石はどれも真逆のものばかりでさ」

それでね

「合わないんだなって話だけならいいんだけど、たぶんぼくの興味に合わせようと無理に踏み込んできたんだろうね。それでもともと宝飾だのスピリチュアルだのが好きな人だから、その場で見る気はなくて無理矢理なのに、興味がゼロでもないから、すごく変な磁場を出してるんだ。あの人はよく、へんな電波を出してる。ぼくの持ち物もよく故障するんだ、あの人のそばにいると。なんなんだろうね、とことん無理なんかなぁ」

一応、友達だと思ってるのに。お互いなんとなく、人にはそういってるのに、変な気のつかいかたをしあっているから、二人の間には二枚の城壁がある。

むこうは姫君なのだろう、私は土地を任される将なのだ。どこまでいっても、接してるようで別物で交わることはない。心のなかでカラコロと石が音をたてる、私の中の「ぼく」に響いて買った石たちはならずに静かに眠りに沈んでいく。あんなに煩くない、あの煩い石達は誰を呼んであんなに騒いでいたのだろう。

望まぬ主達の物色の手をまぬがれることがいいことなのか、いつか本当の主にたどり着くための一時的な宿主として望まない相手にも求められることが正しいのか。そもそも、声は掘り出されたことへの不満だったのだろうか。石達の本懐はわからない。
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