半熟卵とメリーゴーランド

ホログラム、ホログラフィー、トマトジュース。

  愛という概念があったとして、現代の愛とは意味が違う。現代の愛を当時の言葉で訳すると、執着や我欲となり、あるいは自己顕示欲がもたらす下品な施しをさしていたとかなんとか。

  焼き魚をほぐしながら、半分の眼でみる。彼女もまた、僕の悪夢の連鎖に連なる、半隻眼だった。僕の幼い頃からのふしぎな夢に隻眼の男が出てきて、それからおおよそ人に好かれるわけもないぼくを好きになる女性たちは、なぜか隻眼または片目に持病を持っていて定期的に見えなくなる。きまって左目が失われる。
    運命という言い方を拒むなら、右利きの人間の動きの癖がつくる、共通の死角があるのだろう。そして僕は、右利きにしては右手が不器用で、左利きと言えない程度に左手じゃないとうまくいかないこと後たくさんある。それは不器用なノロマということだろう、よく左瞼が腫れて、目が見えなくなる。

  よく、片目になる。

  見えない、疲れた。