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オカルトホームズ
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骨董市というなの、古道具屋の市だった。レトロなハンドメイドショップもあれば、懐メロ程度の昔や、祖父の家で処分されているのを見たような心打つものもあるにはある。
目的地に行く前に覗く。行くつもりの道を挟んだ左右に延びているので、片方だけを見る。面白そうなものもあれば、仕方のないものもある。どれを買うかというよりは、みっしりとこういうものが溜まっている様が良いのだなとも思う。
そのせいか、何を見ても「いいんだけど、なんかちがう」と半分を見てから目的地へいこうとした。お土産物であって何かの謂れがあるわけでもないレプリカであろう神獣の像がある。
やけにきになる。
粗雑な作り、裏返してもない値段表記、やたらと誇張された男性器はこれが雌雄一対であったことを示す。狛犬やシーサーのような、門を挟む存在。それが片方であることに意味を求めるなら、この単体がよほど気に入るほかない。もしくは、気づかなければよかったのだろうが、気づかないのは無理だった。
「(これがもし物語なら、コレは自分の願いを叶えるために、私の役に立ちそう)」
馬鹿馬鹿しい妄想、気にはなるが何かが違う気がして、買わない。でも、対をなすなにかが私の部屋に現れそうな気がしている。自分で買うのかプレゼントなのかはわからない。それはなんとなくであり、妄想であり、私はなにかおかしいのだ。
用事のある処へ歩いていく。いつも、帰りはあっという間なのに、行きはやけに長く感じるのは、ゆるやかなカーブの方向のせいなのだろうか?
それから。
帰りにはまた、あの骨董市を横切らなくてはならない。ふいに「あの子がいる」というあの錯覚にとらわれ足を運ぶ。物を見ても、良いものだが違う。
「呼んだのはあなた?」
「そうだよ、だから連れて帰って」
「じゃあ違う。あの子はたぶん、そう言えない」
見つからないまま、気がつけばこの門前市のようなものの門にあたる神社につく。そういうことか、と、拝んでから出てくる。やけにひっかかるものだけを拾い上げ、気になっても違和感のあるものは拾い上げない。
帰路、片付けられていく市のなかを通る。
あの子はいない、あの子ってだあれ?ちがう、あの子は別のものと私を引き合わせるために、私を呼ばないそれにかわって声をあげるのだ。誰が待ってる、何が待ってる、私の角は預けたままでそれを拾い上げることができなかった。
なにか、なにかだ。
目的地に行く前に覗く。行くつもりの道を挟んだ左右に延びているので、片方だけを見る。面白そうなものもあれば、仕方のないものもある。どれを買うかというよりは、みっしりとこういうものが溜まっている様が良いのだなとも思う。
そのせいか、何を見ても「いいんだけど、なんかちがう」と半分を見てから目的地へいこうとした。お土産物であって何かの謂れがあるわけでもないレプリカであろう神獣の像がある。
やけにきになる。
粗雑な作り、裏返してもない値段表記、やたらと誇張された男性器はこれが雌雄一対であったことを示す。狛犬やシーサーのような、門を挟む存在。それが片方であることに意味を求めるなら、この単体がよほど気に入るほかない。もしくは、気づかなければよかったのだろうが、気づかないのは無理だった。
「(これがもし物語なら、コレは自分の願いを叶えるために、私の役に立ちそう)」
馬鹿馬鹿しい妄想、気にはなるが何かが違う気がして、買わない。でも、対をなすなにかが私の部屋に現れそうな気がしている。自分で買うのかプレゼントなのかはわからない。それはなんとなくであり、妄想であり、私はなにかおかしいのだ。
用事のある処へ歩いていく。いつも、帰りはあっという間なのに、行きはやけに長く感じるのは、ゆるやかなカーブの方向のせいなのだろうか?
それから。
帰りにはまた、あの骨董市を横切らなくてはならない。ふいに「あの子がいる」というあの錯覚にとらわれ足を運ぶ。物を見ても、良いものだが違う。
「呼んだのはあなた?」
「そうだよ、だから連れて帰って」
「じゃあ違う。あの子はたぶん、そう言えない」
見つからないまま、気がつけばこの門前市のようなものの門にあたる神社につく。そういうことか、と、拝んでから出てくる。やけにひっかかるものだけを拾い上げ、気になっても違和感のあるものは拾い上げない。
帰路、片付けられていく市のなかを通る。
あの子はいない、あの子ってだあれ?ちがう、あの子は別のものと私を引き合わせるために、私を呼ばないそれにかわって声をあげるのだ。誰が待ってる、何が待ってる、私の角は預けたままでそれを拾い上げることができなかった。
なにか、なにかだ。
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