半熟卵とメリーゴーランド

ゲル純水

文字の大きさ
上 下
58 / 301

オカルトホームズ

しおりを挟む
  骨董市というなの、古道具屋の市だった。レトロなハンドメイドショップもあれば、懐メロ程度の昔や、祖父の家で処分されているのを見たような心打つものもあるにはある。

  目的地に行く前に覗く。行くつもりの道を挟んだ左右に延びているので、片方だけを見る。面白そうなものもあれば、仕方のないものもある。どれを買うかというよりは、みっしりとこういうものが溜まっている様が良いのだなとも思う。

  そのせいか、何を見ても「いいんだけど、なんかちがう」と半分を見てから目的地へいこうとした。お土産物であって何かの謂れがあるわけでもないレプリカであろう神獣の像がある。

  やけにきになる。

  粗雑な作り、裏返してもない値段表記、やたらと誇張された男性器はこれが雌雄一対であったことを示す。狛犬やシーサーのような、門を挟む存在。それが片方であることに意味を求めるなら、この単体がよほど気に入るほかない。もしくは、気づかなければよかったのだろうが、気づかないのは無理だった。

「(これがもし物語なら、コレは自分の願いを叶えるために、私の役に立ちそう)」

馬鹿馬鹿しい妄想、気にはなるが何かが違う気がして、買わない。でも、対をなすなにかが私の部屋に現れそうな気がしている。自分で買うのかプレゼントなのかはわからない。それはなんとなくであり、妄想であり、私はなにかおかしいのだ。

  用事のある処へ歩いていく。いつも、帰りはあっという間なのに、行きはやけに長く感じるのは、ゆるやかなカーブの方向のせいなのだろうか?
  
  それから。
  帰りにはまた、あの骨董市を横切らなくてはならない。ふいに「あの子がいる」というあの錯覚にとらわれ足を運ぶ。物を見ても、良いものだが違う。

「呼んだのはあなた?」
「そうだよ、だから連れて帰って」
「じゃあ違う。あの子はたぶん、そう言えない」

見つからないまま、気がつけばこの門前市のようなものの門にあたる神社につく。そういうことか、と、拝んでから出てくる。やけにひっかかるものだけを拾い上げ、気になっても違和感のあるものは拾い上げない。

  帰路、片付けられていく市のなかを通る。
  あの子はいない、あの子ってだあれ?ちがう、あの子は別のものと私を引き合わせるために、私を呼ばないそれにかわって声をあげるのだ。誰が待ってる、何が待ってる、私の角は預けたままでそれを拾い上げることができなかった。

  なにか、なにかだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...