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月の仕業

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  煙がスッと空に滲む。

  日用品の紛失だとか、壊れないタイミングで壊れるだとかのダメージ。とっさに「わ、やってしまった」と思うときと、何故か「対価」と頭によぎるときがある。それは、何かを得るために失う相当のものか、なにかを避けるために支払われたもの。何故かわからないけれど、そう言い聞かせて割りきっていたり、自分のうっかりを誤魔化して逃避しているわけでもなさそうで(うっかりのときは、正直に「やっちまったぁぁぁぁ」で頭が一杯になるので)

  それから、過去に分かりやすく犯罪に遭った折りの共通点は、いわゆる月の便りである。いきなりなんのたなしだ汚ならしい、と思われるかもしれない。なにより、大っぴらに話すことでもない。
  汚ならしい恥知らずかもしれないが、書いてしまったので話を進める。

  別に血のシミがあるだとかそういう露骨な目印はないし、汚れた血の臭いをさせていると思いたくはない。しかし、その期間の特有の体臭は間違いなく誰にでもあり(なので相手が誰でも確実に言い当てることができる知人もいた)おそらくその特有の臭いに引き付けられるタイプの変質者がいて、うっかりテリトリーに弱者が踏み込むと、こうなるのだな、と解釈していた。

  そのようなわけで、今晩は数日前に買ったばかりの、リボンのついたハンドタオルをダメにしてしまった。このときもとっさに「対価か」と私の中の私でないような落ち着いた何かが、そう教えてくれた。

  総合すると、私はおそらく事故や病気ではない人間からの被害が予定されていて、タオルはそれを回避するコストとして、手放されたのか。

  などという、言い訳、妄想。
 
  ぽつぽつと歩く隣は喫煙中、自分の記憶の中の誰かがずっと、ふわふわと漂って出番を待っている。まるでそこにいるかのように気配を感じるその存在と、こちらに匂わないように配慮された結果あるのかないのかもわからない煙と、どちらが実在するのかもうわからない。

  人と食事をして終電を見過ごせば、タクシーで帰宅する。いつも通りの時間にいつも通りのバスにとっていたら、何かよくない目に遭ったのだろうか?それとも、このいつもと違う行動でおきえたことを回避したのか。それはわからない。

  わからないぐらい平和なことはよいことであろうし、物が駄目になる出来事にたいし自分はなにかに守られたと思っていれば精神衛生上もよろしかろう。

  それだけ。
  なんで恥知らずなエピソードをいれたかって、創作メモだから仕方がない。いずれかくことや取材したことの備忘録。
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