半熟卵とメリーゴーランド

ゲル純水

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ミントちゃん

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  テーブルに花を飾りましょう、そうすると数日間は豊かになる。手をかけなければすぐに終わる数日間のために、一手間かけるための意識が芽生える。

  と、信じていた。

  仮名で呼ぶならミス・ミントミント・エブリイちゃんは、テーブルにミントを飾った。花を買うことができずに公園で摘んできたものの、何が付着しているやら(具体的に言うと、どれだけ尿の飛沫を浴びて吸い上げてきたか)わかったものではないので少しだけとったそれを水に浸し、洗い、それでもミントは強いので花瓶のなかで伸びていった。花瓶は、薬局でもらったビタミンドリンクの空き瓶だった。
  それから、ミントは爆発的に延びたので、あきらかに自分の家で伸びた清潔な部分をみて、形を整えるように時には摘んだ。読書をしながら摘んでくちに運んだ。なるほど、なにかが豊かになったと笑いながら。

  ミス・ミントミント・エブリイは浄化された。
  その暮らしはまだしばらくは悲惨である。
  その暮らしの記憶は、いつまでも彼女の人生を縛り付けた。

  けれども。けれども。どんなに汚れても、どんな受難にみまわれても、彼女は自らを浄化できる人間だった。たとえ、誰のめにも明らかなバケモノだったとして。

  さて、ミスと呼んでよいのか悩ましいミズ・カモミールは広い家で飢えることがない、食べきれない食事を処分する暮らしをしていた。あれができないのは、花の水かえがあるから。誰かがおこなっても、自分でまたやる。意味がない。私でなければならない。やらされてつらい自分をつくりあげ、苦悶の表情で日々を呪う。
   どうして私だけ、こんな眼にあわされるんだろう?
  自分で濁らせて、濁らせて、腐敗した空気を撒き散らして、彼女はどこへいくのだろうか?

  ミセス・サンドは、娘からもらった花を飾った。その感情はわからないが、今日ものどこかのテーブルに誰かが花を飾っている。
  
  草を飾って食べながら、ミス・ミントミント・エブリイは思い出した。それまでの人生のなかで、花のあった家庭とその家族の性質を思い出しながら、そっと本をとじた。みないちように派手な暮らしをしていたが、何も我慢していないわけではないが、優先順位として花を切らさない。誰がいったかしらないが、貧しいときこそ豊かになるためにテーブルに花を飾れと。
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