半熟卵とメリーゴーランド

そのひのこと

  メモを繰り返せば、同じ言葉が何度も出てきたりするわけで。違うルートを考えているはずなのに、同じ思考回路を使えば何度でも同じ言葉が繰り返され、気がつけば漢字の書き取りのように堂々巡りになっていたりなど。

  仕事の進捗をスケ-sanへ報告する。私は彼女の思考回路に詳しくはないが、いわく作風が似ておりゴーストとはばれないだろうとか、信頼を得ているから相手は可能性を微塵だにも感じないだろうだとか。

  もちろん、仕上げを自ら行うことでテイストを調節しているのだ。それならばつまり

「アニメーターと作画監督、データマンとライター」

と、彼女は二人の関係性をたとえたあと「でも、違うわね、それはちょっと違う」と訂正してから昭和の漫画のように舌を出して笑った。今日も高画質のカラーコピーだった。

「それはいいんだけどさ、お礼にっていってるのになんで遠慮したの？」
「遠慮じゃなくて用事だよ、やだなぁ」

それはディナーのこと。それに誘われていたのを、御茶でいいじゃないかとカフェにいったわけで。私といえばボッティチェルリの絵の登場人物から西洋人の小顔をとりはらい兵馬俑から持ち出した顔をのせたような肥満である。食べることが好きなのだ。そして、古代ギリシア貴族のように、なにもしないでいる時間の存在に贅沢を見いだし寝そべるぐらいには怠惰だ。

  彼女とはとりとめもない話をし、何度きりだしても用事というものもわからず終わった。それも私の努力やコミュニケーション能力が足りないからなのか、彼女がなにかを伏せておく能力にたけているのか、なんだかそのあたりはよくわからなくて。

煙に巻かれたという話。