半熟卵とメリーゴーランド

ゲル純水

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帰るの歌

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  女子が来たぞーーー!!逃げろー!

  と、叫ぶ。

  脳内の誰か。

  原稿のために煙草を買った。仕事中に気づいてしまった彼女のメールのせいで、仕事帰りのコンビニで自分の視力では見えないものを必死に読み取る。銘柄をいって番号を聞き返されて必死になっている中年みたいで、いっそ勤続三十年を感じさせるぐらいにネクタイが似合うようになりたい人生だったな、などと思ったり。

「12番と、52番と、それからその…一番下の下段、濃いピンクのお願いします」
「これですか?」
「その隣の、色が濃いもの」

こだわる以前にタバコのことに詳しくない私は、ただここに来るまでにすれ違った車のナンバーから適当に。ただ、ピンクは、あまりにもピンクすぎる箱に視線を奪われ思わず頼んだ。

  しっくりこない。

  ショッキングピンクでもないのか、なんと呼べばいいのか。いっそ、十二単のどこかにありそうな、発色の強い濃いピンク。

「フリスク」

誰にともなくつぶやきたくなるパッケージ。

  普通のパッケージをは性別を選ばないけれど、さも女性向けのパッケージは客をしぼるよなと思いながら…けれどその疑問は即座に消えた。

  これは吸うタバコじゃない。

  その、あまりの軽さ。
  こどもの頃に見た、レストランの入り口の宙に浮くフォークとミートソーススパゲッティ。

  所持して、火をつけて、指にはさんで自分の造形をかためるアクセサリーだ。吸うためのアイテムではなかった。

  飲み薬を肌に塗る行為だった。

「なにそれ?たばこ?」
「そだよー。吸う?」
「……軽!」
「やだー、そっちのが重いんだよー」

などという会話をしていた、逆さまにしてもこぼれないしたたかな甘いクリームソーダ娘が、過去のどこかに、いた。いちいちなにか思い出す、今回のゴーストは走馬灯になって私はもうだめなんだろうか?

  君、君、はやく僕のとなりに。
  なんだかとっても疲れたんだ。

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