270 / 301
回想の階層(2016.07.xx)
夢の中へ
しおりを挟む
作りかけのケーキが、別の誰かが作ったものにすりかわっていた。チョコレート生地をロールにしてから、クリームを注入してイチゴがのせられている…いやいや、塗って巻いてカットするでしょうよと「無くなったあとに思い出して作ったような、見よう見まねケーキ」を見つめる。素材も違う。犯人はわかっているが、だから何だというわけでもなく、ただ「なるほどな」と見つめていた。通りかかった兄がのぞきこみ、出来上がりが楽しみだと笑っていたがじっとケーキを見て「なるほど別物になってる」と笑いだした。兄と話しているところに、下の兄が早足でやってきてヒソッと声をかけてくる。
「あいつに聞こえないように、まだ気づいてないことにしておこう」
弟が名乗り出るのをまとうということだった。これが上の兄のしわざなら、つまみ食いをごまかすために慌てて作ったのだ。下の兄のしわざなら、自分の方がうまいというアピールなのだ。近所のおさななじみなら、トウガラシ入りなどイタズラレシピにかわっているだろう。弟がどんなつもりで何をやるのか、人格自体がまだ兄弟のなかではっきりしていないというのも、おかしな話である。離れて育ったというオチなのだけれど。
これは夢だ、長兄の影が揺らぐ。下の兄が腕を組んで、二人で廊下をはさんだ反対側の部屋にふみこむ。私は何人兄弟だったろうか、ごろりと横になる。どこか女じみた部屋だ、男しかいないのに。
「お前らが転生してきて、なんだかんだで部屋が女っぽくなったな」
「色使いかな」
ごろりとしている背中に誰かの気配があるが、一緒にいた兄達は左右に立っている。乗っているのは誰だろうか?
「当ててごらん?」
「わかるよな?」
わかっている…おそ松兄さん(仮)だ。世界の色がかわる。ぼくらが離ればなれの兄弟なのは、繰り返し転生しているからだった。姿や名前がかわるのではない…それは繰り返し演じられる演劇のキャラクターと同じで、決められた人間の中身の魂が何代も入れ替わってここに暮らしている。兄達はなぜか、何度でていっても即座に戻されずっとこの家に兄達のまま生きていた。というよりも、いくつかの世界を同時に生きていた。その魂がどうなっているのかはわからない。
「あいつに聞こえないように、まだ気づいてないことにしておこう」
弟が名乗り出るのをまとうということだった。これが上の兄のしわざなら、つまみ食いをごまかすために慌てて作ったのだ。下の兄のしわざなら、自分の方がうまいというアピールなのだ。近所のおさななじみなら、トウガラシ入りなどイタズラレシピにかわっているだろう。弟がどんなつもりで何をやるのか、人格自体がまだ兄弟のなかではっきりしていないというのも、おかしな話である。離れて育ったというオチなのだけれど。
これは夢だ、長兄の影が揺らぐ。下の兄が腕を組んで、二人で廊下をはさんだ反対側の部屋にふみこむ。私は何人兄弟だったろうか、ごろりと横になる。どこか女じみた部屋だ、男しかいないのに。
「お前らが転生してきて、なんだかんだで部屋が女っぽくなったな」
「色使いかな」
ごろりとしている背中に誰かの気配があるが、一緒にいた兄達は左右に立っている。乗っているのは誰だろうか?
「当ててごらん?」
「わかるよな?」
わかっている…おそ松兄さん(仮)だ。世界の色がかわる。ぼくらが離ればなれの兄弟なのは、繰り返し転生しているからだった。姿や名前がかわるのではない…それは繰り返し演じられる演劇のキャラクターと同じで、決められた人間の中身の魂が何代も入れ替わってここに暮らしている。兄達はなぜか、何度でていっても即座に戻されずっとこの家に兄達のまま生きていた。というよりも、いくつかの世界を同時に生きていた。その魂がどうなっているのかはわからない。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。


ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる