半熟卵とメリーゴーランド

ゲル純水

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回想の階層(2016.07.xx)

夢の中へ

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    作りかけのケーキが、別の誰かが作ったものにすりかわっていた。チョコレート生地をロールにしてから、クリームを注入してイチゴがのせられている…いやいや、塗って巻いてカットするでしょうよと「無くなったあとに思い出して作ったような、見よう見まねケーキ」を見つめる。素材も違う。犯人はわかっているが、だから何だというわけでもなく、ただ「なるほどな」と見つめていた。通りかかった兄がのぞきこみ、出来上がりが楽しみだと笑っていたがじっとケーキを見て「なるほど別物になってる」と笑いだした。兄と話しているところに、下の兄が早足でやってきてヒソッと声をかけてくる。

「あいつに聞こえないように、まだ気づいてないことにしておこう」

弟が名乗り出るのをまとうということだった。これが上の兄のしわざなら、つまみ食いをごまかすために慌てて作ったのだ。下の兄のしわざなら、自分の方がうまいというアピールなのだ。近所のおさななじみなら、トウガラシ入りなどイタズラレシピにかわっているだろう。弟がどんなつもりで何をやるのか、人格自体がまだ兄弟のなかではっきりしていないというのも、おかしな話である。離れて育ったというオチなのだけれど。

    これは夢だ、長兄の影が揺らぐ。下の兄が腕を組んで、二人で廊下をはさんだ反対側の部屋にふみこむ。私は何人兄弟だったろうか、ごろりと横になる。どこか女じみた部屋だ、男しかいないのに。

「お前らが転生してきて、なんだかんだで部屋が女っぽくなったな」
「色使いかな」

ごろりとしている背中に誰かの気配があるが、一緒にいた兄達は左右に立っている。乗っているのは誰だろうか?

「当ててごらん?」
「わかるよな?」

わかっている…おそ松兄さん(仮)だ。世界の色がかわる。ぼくらが離ればなれの兄弟なのは、繰り返し転生しているからだった。姿や名前がかわるのではない…それは繰り返し演じられる演劇のキャラクターと同じで、決められた人間の中身の魂が何代も入れ替わってここに暮らしている。兄達はなぜか、何度でていっても即座に戻されずっとこの家に兄達のまま生きていた。というよりも、いくつかの世界を同時に生きていた。その魂がどうなっているのかはわからない。
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