半熟卵とメリーゴーランド

回想の階層（2016.07.ｘｘ）

課金制エルゴグリ

    彼女との共通の友人に、仕事の休憩時間にばったりと会った。というよりも、時間を見計らった。向かいの店舗で働く友人の退勤時間に休憩時間が合うようにしていたし、オフィスの私の席からは友人の姿がよくみえていた。ストーカーまがいで気持ち悪いと自分で自分を笑うしかないが、彼女のことに耐えられなくなってきていた私には共通の友人の前で彼女のパートナーとしての顔を作り直さなければ、彼女と正気で話せる自信がなかったのだ。もはや、何のための交際なのかはわからない。生活費の何割かをだし、そのため自分の貯金はもちろん趣味にさくこともできず、私服勤務のために服を買うことを贅沢だと彼女になじられる。…貢いでもらって生きている彼女と違って、安物を何枚か買って必死にローテーションしているのに。彼女は、生活費を私に払わせて浮かせたお金で遊びに行くのに、なぜ口激されるのか意味がわからない。彼女には私を口激する権利はないのだが、どういうわけか今後楽しく付き合うための前向きなディスカッションをしているのだと理不尽を突きつけてくる。

「似た者同士で対極の、まったく逆の存在」

共通の知り合いのほとんどがそう笑うが、その笑みをポジティブな意味だけ受け取っていいものかと迷うことが増えた。命を吸いあげられ、低所得者にありがちな肉体の緩み、次第に変わっていく鏡の中の姿にどれだけ耐えきれるかという段階に来てはじめて、なぜ自分は無理をしているのかという言葉が頭に浮かんだのである。なんとも、愚かな話だ。片足を食われてようやく逃げなくてはならないことに気づいたところで何になるのか。匍匐前進で、逃げるのだろうか？課金はゲームのようにダンジョンからの逃げ道を作ってくれるのだろうか？