半熟卵とメリーゴーランド

回想の階層（2016.06.ｘｘ）

仮面フウフ

    別々にすんで、会えば仲良し。彼氏と彼女に戻った夫婦の話をすると、あの人は「仮面夫婦」…といった。仲良さそうにしていてじつはお互い覚めきって興味がないものを、仮面夫婦と言う…考えてみれば、仲のよい別居(単身赴任ではい選択別居)をさす言葉を私は知らない。選択的夫婦別姓という言葉はよく耳にするけれど。
    また、別の夫婦の話。こちらは早くから単身赴任のため、これが夫婦である意味はあるのかという疑問がピークになると彼らは離婚する。そして、紙一枚の契約だと笑い飛ばしていた夫婦という呼び方を失ってしばらくすると、違いを感じて再婚する。そんなことを何年も何回も繰り返している。きっと、彼らにとっては必要な儀式なのだ。愛情確認は契約更新によって執り行われるのだろう。あの人はそれをなんというか、と思い出そうとする。興味なさげに「へぇ」といって寝転んでいた気がした。
    ○○夫婦になろうよ！と、あの人は笑う。
    その言葉の意味は私はわかってはいないけれど、友人のなかの特別の地位なのだろうか。友人という言葉では言い表せないなにか。その認識で良いのだと思う。言葉はいつでも難しく、なにかを的確な言葉で言い表すのも、その言葉から中身を確定することも難しい。けれどぼくは、あの人とその不思議な紙一枚の契約を交わすとどうなるのか見てみたい気がする。なにかどうかわるのか、ぼくのあの人へのこだわりは、今まで持ったことのない特別な感情と関係である。