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山盛りクローバーサラダ
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とある物語。
サツキは、電車に揺られていた。
いつもなら、鞄に“ゲーム実況者”とよばれる、インターネットタレントのマスコットがついている。
今日はソレをつけてないので、不安でしかたがない。その実況者がどうというより、いつもつけているものをつけないというのは、もうそれが食パンを留める水色の四角いクローサーでもダルダルにのびた汗臭いヘアゴムでも、同じことなのだ。
なぜといえば簡単で、偶然仕事で来たのが九州だった。福岡県を、中心部に当たる福岡市内から熊本県との県境までつなぐ大牟田線という電車に揺られている。
彼女が好きな実況者は佐賀県に住んでいて福岡市内に勤務、その実況者は九州エリアの実況者同士でグループでインターネット上のタレント活動で人気だ。だから話題にもよく、この大牟田線が出てくる。
福岡市側の始発駅に乗り込むときも、どこかで彼にあうのではないかとソワソワした。
彼のようにマスクをつけている人をめでおい、あるいはマスクをつけていない男性の顔にマスクのイメージを重ねてまさかこの人ではないかなどと想像してしまう。
たとえば信号待ちで油断した顔、エスカレーターで周りに誰もいないからと先刻の不愉快な出来事を思い出して歪めた表情をふいにすれ違う上りと下り…どこに自分の好きな人がいるかわからないのに、気を付けなくてはならない。
サツキは今日だけは、めずらしく、自分に集中して生きている。
なにか始まるだろうか。
誰かにとっては当たり前だが、サツキにとって珍しいこの日は、なにかをうむだろうか。
次の駅は。
サツキは、電車に揺られていた。
いつもなら、鞄に“ゲーム実況者”とよばれる、インターネットタレントのマスコットがついている。
今日はソレをつけてないので、不安でしかたがない。その実況者がどうというより、いつもつけているものをつけないというのは、もうそれが食パンを留める水色の四角いクローサーでもダルダルにのびた汗臭いヘアゴムでも、同じことなのだ。
なぜといえば簡単で、偶然仕事で来たのが九州だった。福岡県を、中心部に当たる福岡市内から熊本県との県境までつなぐ大牟田線という電車に揺られている。
彼女が好きな実況者は佐賀県に住んでいて福岡市内に勤務、その実況者は九州エリアの実況者同士でグループでインターネット上のタレント活動で人気だ。だから話題にもよく、この大牟田線が出てくる。
福岡市側の始発駅に乗り込むときも、どこかで彼にあうのではないかとソワソワした。
彼のようにマスクをつけている人をめでおい、あるいはマスクをつけていない男性の顔にマスクのイメージを重ねてまさかこの人ではないかなどと想像してしまう。
たとえば信号待ちで油断した顔、エスカレーターで周りに誰もいないからと先刻の不愉快な出来事を思い出して歪めた表情をふいにすれ違う上りと下り…どこに自分の好きな人がいるかわからないのに、気を付けなくてはならない。
サツキは今日だけは、めずらしく、自分に集中して生きている。
なにか始まるだろうか。
誰かにとっては当たり前だが、サツキにとって珍しいこの日は、なにかをうむだろうか。
次の駅は。
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