半熟卵とメリーゴーランド

ゲル純水

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性器の話

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同僚は女性。
夫はすぐ離婚したというが、娘が三人いる。
娘が三人いるなら、結婚生活は三年近くあったとおもうのだが、この夫は一度も子供の入浴をしたことがない。

長女は『保健体育の授業』の直前まで、男性器をみたことがなかった。プールの授業に遅刻しかけ、とびんこだ着替える教室は男子が着替える場所だった。

彼女は泣いて「すけべ、ちかん、」と囃し立てた男子児童達は叱られた。実は彼女がないたのは、騒がれたことや、間違えた恥ずかしさではなかった。もちろん性的なショックでもないのだ。性的なカルチャーショックだ、実は性器の特徴が男女で違うと知らず「どうしよう、私に」と焦ったのだ。

胸も周りの子のように発達をはじめたわけでもなくて、下のなにかも生えてない。男児達がブラブラといっていた意味がずっとわからなかったのだ、ブラブラしてるものなのだ。

…という話を同僚がしったのは、一ヶ月遅れてからだった。当初は、教室を間違えて痴漢痴漢とからかわれたことで泣いたと連絡を受け、同僚もそう思っていたからだ。せいぜい「同級生の裸に驚いたのかな」「好きな子の前で恥をかいたのかな」だ。

長女が突然ぽつぽつと話し出したのは、初潮を迎えたときだ。生えるべきものが生えてないのに血がでだした、失敗作なんだ、と長女は号泣した。それを聞いた同僚は「性同一性障害なのか?自分の性認識は男の子?」と思ったが、それはマイノリティへの偏見や焦りではなく、もしそうなら月経はそういう意味でもつらかろうと思っただけだ。

杞憂だった。

長女が単に、性器について誤解してるだけだった。

同僚は私に相談してきたのはこの事件の半月後。

「次女にはあらかじめ性教育すべきか」

うん、どうなんだろうか。
私は長女の話で、否定はしないが違和感というか不思議に思ったことがあった。

「漫画とかでさ、ギャグ用のもろだしをみたり、男児の落書きとかでみる機会なかったのかな?」

私の幼馴染みのひとりは、秀才というより天才だったが、着替えるときに隠しながらではなく堂々と脱ぐ。それでイタズラで下着をかくされようものなら、下半身を隠して探すか?いや、困った顔をしてもそのままスタスタと探した。

なんて環境はさすがになくても、幼稚園や低学年のプールの着替えなんて、いくら更衣場所を男女をわけても恥じらいがまだない男児や、みせたい男児が 走り回ってきてきたなと思い出す。現代は違う?

黒板いっぱいに「うんこちんこうんこちんこ」とイラスト入りで落書きがあることもよくあった、どちらがより多く描けるか。

時代も、育ちも違うのかな。
うん。

「長女には漫画をみせたことがない、どうせ下品なのばかりだから」
「ふーん…」
「ドラマも、日本語が正しくないとおかしいキャラでも間違ってたりするから見せない」

ファッション誌でも『本当に気持ちいいセックス特集』みたいな表紙をよく見かけるけど、無菌から、ドラマなんかの性描写もとばしてキレイなグラビアのセックス特集だけで知って、初めてのシーンは…苦労しそうだな。もしくは、親元を離れた瞬間に爆発するかもな。

というか、周りからだって色々入ってくるからな。

「教育方針はご家庭それぞれだから、私がいえることではないですが」と前置きをする「聞かれたからには感想を言いますね、意見するわけではないので」

同僚がなんとなくこわい。

「性教育以前に、カルチャーの接種に偏りがあると感性の発達にも影響があると思うんですよね」

思考回路や発想力が凝り固まるとか、もっとシンプルにいうと話題についていけなすぎて孤独感を感じたり。

必ずしも同調する必要はないってのは本人が選ぶことで、機会を奪いすぎると遺恨になる。それをアナタノタメと言えばより苦痛になる。

もちろん、接種しなくていいものもこの世にはたくさんある。影響をうけるから、悪い言葉が出るものはダメか?そうじゃない。同僚がいうように、正しくないとおかしいキャラの日本語も壊れてるのは論外だが、悪い人間が悪い言葉を使うのは当たり前なのでそういうものは多少は接種して「こういう言葉は悪い言葉だから、友達が使っても一緒に使ってはいけない」と知る機会になる。カッコいいからと友達がいっても、反対したり否定する必要はないけれど、のるかどうか判断をするときの材料が増える。その言葉はどういうものなのか。

だってそうだろう、トイレットペーパーのかわりに肛門につかうヘラでデザイン性が高いものを友人が拾い、なにかしらないけどカッコいいからと首からさげてたらどうだろう。知った上でやるのもファッション表現だが、知らずにやっていたら恥ずかしい。自分は知らなくても、知ってるひとには本人が放ってもないメッセージが伝わることもある。

思い出を語ると、小学生の深い意味なくそのままに「てめーぶっころすぞばーか」と言いながらみんなハンドサイン使ってはいたが、一応確認はした。

殺すという言葉ひとつとってもそう。
身近に死がなく育った子、悪意にさらされずシンプルな敵意しか知らない子、簡単に言う子供の言葉を受けて平気そうに笑ってる子がもしかしたら、家で心の底から殺意をいだきながら、暴力にたえてる可能性もあるんだよなぁ…

話はそれた。

巨乳のキャラクターがセクハラかどうかとか。
創作だから意図があって、天然のボディを差別してるわけでは…と思いきや、同じ理由で女子アナウンサーがクレームをつけられていたりする時代だ。

性でもなんでも。
完全に要素を排除して、なにも考えられない無菌室で流動食をながしこまれる個体に育てるなら、その個体が死ぬまで自分が管理できるか。

いや、人間相手だから、できるできないではなくて、するのはおかしい気がするんだが…監禁するか?

外の世界の刺激があるぞ、家の中のルールだけでは生きていけないぞ、ルールをもって生きてても雑音や邪魔はあるぞ、外部からの刺激が。

なんてことが、通じるタイプではないと思った、この同僚には。

「寿命がつきるまで避けて生き抜けるわけでもないし、周りと摩擦が起きない程度に取り入れるのもいいかもしれませんよ?

テレビ番組やタレントでもそう、有名とか話題だと認識してるものについて「○○知ってる?」と振ったときに、「知らない」とバッサリいわれると、さみしくないか?
先に知ってる優越感や、教えたい欲にすぐに切り替えられる強い人もたくさんいるだろうけれど「みんな知ってる話題のアレ」ぐらいの気持ちで話しかけるとどうだろう?もつれの元になりがちな「え、知らないの?」がでそうだ。

「名前は知ってるけど、観たことないんだよね」
「え?なんで??」

▽お母さんが観るなっていうから
▽ちょうどお風呂なんだよね
▽妹が別の観てるから
▽べつに、面白いの?

「えー、なにそれ、長女ちゃんちめんどくさいよね」
▽うちは、いろいろあるのよ

「録画しないの?」
▽どうせみるなら直接みたいし
※録画させてもらえるわけない

「録画すりゃいいじゃん、てか妹が譲れ」
▽あはは、私も一緒にみるから

「面白いよ!録画かそうか?」
▽えー、いいよ
▽ていうか○○ちゃんち行きたい
※うちに持ち込んだら捨てられる
※友達の家にいく許可でるかなぁ
※興味ない

うーん。

この話のオチは、次女は私と同様に周りの男児が「チンチンブーーーストーーー!」と全裸ダッシュするタイプで、黒板の「うんこちんちん陣取り」に関してはうんこチームのトップだった。当たり前のように、周りの女子が金的をやるのをみて「あれは洒落にならなそうだから、自分はしない。止めるのは女子を敵にまわすから何か白けさせずにやめさせる方法はないか」を悩んでたことがわかった。

この悩んでいるところに、男児の股の造形を知ってるかと母親たる同僚に声をかけられて驚いたそうだ。

そんなもんだ。
世に溢れる教育をしたって入ってくる。
入ってこないなら、偶然ない環境でない限りは、周りへの興味や配慮をさておいてずっと無視してるのかなとも思うことがある。

なんともいえない。
正しいか間違えてるかではなくて、不思議だなと思ったのだ。本当にそれだけ。




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