205 / 301
君のこと
しおりを挟む
君が夢に出てきた。
もう、会えなくなってからどれだけたったかなんて忘れるぐらいなのに。
駅のターミナルとどこかの教会と大学が渾然とした施設にいた。仕事関係である部屋にいかなければならないはずなのに、方向感覚がつかめず地図の通りには行けない。
なぜか、入り口で、その仕事の仲間と床に突っ伏している。言い訳のように、床を雑巾がけする私。礼拝堂の入り口に背を向けるカタチで、近頃隣にいる奴と、だれだっから別の。向かい合って後退するカタチで動く私と、隣には実際の職場の気になる女の子と。
その女の子が後退すると、君がいた。
そういえば君達は同郷だ。
ピアノがおかれていて、椅子を避ける女の子と、椅子をどかして、ペダルの隙間までをふこうとする私。ふと、目が合う。ピアノの下に本来はない空間があって、君がいた。いくらスマートとはいえ長身の君が?蛸壺のタコのように、奥へ吸い込まれるように体を入れ込んでいる。
「きれいにしてよね」
あぁ、そうだね。
「べんぞうさんはね」
夢の中で、なぜか君は漫画に出てくる万年浪人生を自称する。夢の中の君は、しばらくそのキャラクターのファッションをしていたことになっている。服装のことを、その名前で呼んでるのだが、現実ではそのキャラクターは学ラン姿だ。そのズレは夢だから仕方ない。
「フェんぞうさんにして、ちょっと東京にいくから」
その後の幾つかの声が、出したそばから隣の女性の声でかききえる。そこにいなかったはずの、私の幼馴染み女性が、私の耳元で騒ぐのだ。夢の中の私は、君と会話は成立しているが、繋がったそばからひとつまえに何をいったか自信が持てない…
「そうかフェンディをまとうのか」
何回か繰り返して、どうやら学ランからフェンディの服に切り替えるそうだ。が、
「フェンディ?あんたフェといえばフェンディしか知らないの?たったフェンディを着ただけで、この人がこの人の願う姿になるとおもうの?フェラガモのスーツよ!」
正直、フェラガモのスーツの「格」も特徴もしらない。ただ、この幼馴染み女性は、夢の中の記憶では、比喩としてフェラガモのスーツという言い回しを使うのだ。それは本人にとっては肯定的な意味なのだけど、否定的な意味にとられそうなのでかなりオブラートにつつむと「卒業して、ちゃんとする」のような感じか。
と、よくわからないことを、口角から泡をとばすような顔で、幼馴染み女性が騒ぐ。私はまだ床をふいているし、君は奥へすいこまれていった。床にしろい粉やホコリがちらばっていて、静電気のせいかふいてもふいても漠然ときたないのだ。
「どこの何をきても君はかっこいいけれど、ドレスコードのある、ふさわしさを服装で表現しなくてはならないところへ行ってしまうのか」
と、私はひとりごとをいう。君はいってしまったはずだけど、幼馴染みのノイズの間の会話をおもいだす。チラッとかおをだす用事といってたはずだ。だから、ふだんと違うスケジュールで、私も会えたのだ。
ふと、友人の結婚式として出ていったらドッキリで、おたふくのような女性を紹介される君の姿が見えた。さもマトモな進路、さもマトモな会社、さもマトモな人生、さもマトモな女性…身内には見えないまわりの人を踏み台にして、踏み台にされた元友達(と思ってたらただの奴隷だった者達)は精神を患っているような。そんなマトモな女と、マトモに白い家と2台の車と子供、休みの日にはバイク。
あぁ、そんなのはやめてくれ、君には似合わない。やめてくれ、そんなつまらない幻想のメスにおさまった君はみたくない。
君に似合うのは、素敵なのに独身で、わけありかとおもいきやそうでもない、本当に結婚どころか交際自体に興味のないような、いまの様子がとても美しいんだ。
繁殖は必要かもしれないが、君の美しさは繁殖行為が似合わないタイプだ。
だから、どうか、君は人間を超越して、一人で子供を孕んで欲しい。
君が生まれもった君と、君が世界から受け取った感覚の、間に生まれる子供だ。それはもはやクローンではない。
あぁ、一度は君をすみずみまで観察してみたい。
そんなことを思いながら、君は見当たらないのに、礼拝堂の入り口を掃除している夢だった。
そのあと、色々なことがあった。
激しい雪が降り、避難も間に合わず気を失ったあとに晴れた空をみた。晴れているが、外は雪が積もっていた。
地下道をホースと水で作られた仕掛けで繋いで、先に進む場面があった。まるでゲームのようだ。先まで見えているのに、仕掛けを解きながらでないと後で困ることをなぜか知っている。
ゲームをやる人間と、ゲームプレイを録画したものをみる人間の気配を感じた。
自分の主観で動いてるつもりだが、誰か世界の外にゲームプレイヤーがいる。録画を観てる不特定多数のなかに君の気配がした。君はどこかでゲームをしり、私と同行者が出演しているプレイを探しあてて、閲覧している。
なぜかそれを感じた。
フェがつく謎の世界は、そういう、この世界の外と、繋がった別の場所?
前を見ていないといけないと頭でわかっていたのに、後ろ斜め上を見上げる。
彼らをみることはでき…
そこで目が覚めた。
もう、会えなくなってからどれだけたったかなんて忘れるぐらいなのに。
駅のターミナルとどこかの教会と大学が渾然とした施設にいた。仕事関係である部屋にいかなければならないはずなのに、方向感覚がつかめず地図の通りには行けない。
なぜか、入り口で、その仕事の仲間と床に突っ伏している。言い訳のように、床を雑巾がけする私。礼拝堂の入り口に背を向けるカタチで、近頃隣にいる奴と、だれだっから別の。向かい合って後退するカタチで動く私と、隣には実際の職場の気になる女の子と。
その女の子が後退すると、君がいた。
そういえば君達は同郷だ。
ピアノがおかれていて、椅子を避ける女の子と、椅子をどかして、ペダルの隙間までをふこうとする私。ふと、目が合う。ピアノの下に本来はない空間があって、君がいた。いくらスマートとはいえ長身の君が?蛸壺のタコのように、奥へ吸い込まれるように体を入れ込んでいる。
「きれいにしてよね」
あぁ、そうだね。
「べんぞうさんはね」
夢の中で、なぜか君は漫画に出てくる万年浪人生を自称する。夢の中の君は、しばらくそのキャラクターのファッションをしていたことになっている。服装のことを、その名前で呼んでるのだが、現実ではそのキャラクターは学ラン姿だ。そのズレは夢だから仕方ない。
「フェんぞうさんにして、ちょっと東京にいくから」
その後の幾つかの声が、出したそばから隣の女性の声でかききえる。そこにいなかったはずの、私の幼馴染み女性が、私の耳元で騒ぐのだ。夢の中の私は、君と会話は成立しているが、繋がったそばからひとつまえに何をいったか自信が持てない…
「そうかフェンディをまとうのか」
何回か繰り返して、どうやら学ランからフェンディの服に切り替えるそうだ。が、
「フェンディ?あんたフェといえばフェンディしか知らないの?たったフェンディを着ただけで、この人がこの人の願う姿になるとおもうの?フェラガモのスーツよ!」
正直、フェラガモのスーツの「格」も特徴もしらない。ただ、この幼馴染み女性は、夢の中の記憶では、比喩としてフェラガモのスーツという言い回しを使うのだ。それは本人にとっては肯定的な意味なのだけど、否定的な意味にとられそうなのでかなりオブラートにつつむと「卒業して、ちゃんとする」のような感じか。
と、よくわからないことを、口角から泡をとばすような顔で、幼馴染み女性が騒ぐ。私はまだ床をふいているし、君は奥へすいこまれていった。床にしろい粉やホコリがちらばっていて、静電気のせいかふいてもふいても漠然ときたないのだ。
「どこの何をきても君はかっこいいけれど、ドレスコードのある、ふさわしさを服装で表現しなくてはならないところへ行ってしまうのか」
と、私はひとりごとをいう。君はいってしまったはずだけど、幼馴染みのノイズの間の会話をおもいだす。チラッとかおをだす用事といってたはずだ。だから、ふだんと違うスケジュールで、私も会えたのだ。
ふと、友人の結婚式として出ていったらドッキリで、おたふくのような女性を紹介される君の姿が見えた。さもマトモな進路、さもマトモな会社、さもマトモな人生、さもマトモな女性…身内には見えないまわりの人を踏み台にして、踏み台にされた元友達(と思ってたらただの奴隷だった者達)は精神を患っているような。そんなマトモな女と、マトモに白い家と2台の車と子供、休みの日にはバイク。
あぁ、そんなのはやめてくれ、君には似合わない。やめてくれ、そんなつまらない幻想のメスにおさまった君はみたくない。
君に似合うのは、素敵なのに独身で、わけありかとおもいきやそうでもない、本当に結婚どころか交際自体に興味のないような、いまの様子がとても美しいんだ。
繁殖は必要かもしれないが、君の美しさは繁殖行為が似合わないタイプだ。
だから、どうか、君は人間を超越して、一人で子供を孕んで欲しい。
君が生まれもった君と、君が世界から受け取った感覚の、間に生まれる子供だ。それはもはやクローンではない。
あぁ、一度は君をすみずみまで観察してみたい。
そんなことを思いながら、君は見当たらないのに、礼拝堂の入り口を掃除している夢だった。
そのあと、色々なことがあった。
激しい雪が降り、避難も間に合わず気を失ったあとに晴れた空をみた。晴れているが、外は雪が積もっていた。
地下道をホースと水で作られた仕掛けで繋いで、先に進む場面があった。まるでゲームのようだ。先まで見えているのに、仕掛けを解きながらでないと後で困ることをなぜか知っている。
ゲームをやる人間と、ゲームプレイを録画したものをみる人間の気配を感じた。
自分の主観で動いてるつもりだが、誰か世界の外にゲームプレイヤーがいる。録画を観てる不特定多数のなかに君の気配がした。君はどこかでゲームをしり、私と同行者が出演しているプレイを探しあてて、閲覧している。
なぜかそれを感じた。
フェがつく謎の世界は、そういう、この世界の外と、繋がった別の場所?
前を見ていないといけないと頭でわかっていたのに、後ろ斜め上を見上げる。
彼らをみることはでき…
そこで目が覚めた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる