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あやしい女と、小虎。
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非公開のバイセクシャル女。
非公開のゲイ男。
お互いそれを明かしていて、職場では『バカきょうだい』と言われるぐらいには仲が良い。
とある企業、オフィスのシリィズ。
このバイセクシャル女。
前にも話したが、女としてみれば「論外」と言われた経験もあるぐらいには、ちんちくりんである。やぼったい。ネタになるほど不細工ではなく、普通と呼ぶには『残念』である。エロ親父どもは、執拗にからむが。
ところが、公言していなくても、バイセクシャルだからこそもつ、ただの女ではない何かのオーラがあるのだろう。
平素、読者モデルのような整った若い女子を好む普通の男性が、ほかで感じたことのないぞわっと興奮を沸き上がらせる『なにか』を放っているのだ。
ふとした瞬間。
魔が差すように。
それがこの、バイセクシャル女の『あやしい』ところだ。
そんな、あやしい彼女の先輩に、健康が溢れているような男子がいる。
まさに男子。
「可愛い子だいすき!」と笑いだしても違和感のない、ごくストレートの健全性をはなっている。むっちりとした筋肉のかたまりの体で、精力的かつ嫌みがない。
ある日の大掃除。ミーティング。あるいは、やはり別の飲み会。
溢れマッチョ氏は、ふとしたときに彼女に接触することがしばしばある。座る距離が近くて、太もも同士の一部が密着するのだ。
「こんなちんちくりんがぶつかってしまって、イケメンさんに対してのセクハラになりませんかね」
と、彼女は思うけども言えない。
それとは別に、この、溢れマッチョ氏。
声のかけ方がうまく、それこそ好かれていると勘違いしかねないところがある。
計算ではなく健康的な魅力の結果であるし、ちんちくりんだろうが「直接関わった後輩のことは、なんだかんだ特別カワイイ」とのことだ。
溢れマッチョ氏。
バイセクシャル女は、もちろん自分は彼の範囲に入るとは微塵も思っていないが、その勘違いしそうな勢いの、後輩への愛情表現を、むしろカワイイと思っている。
ただ、密着に関しては「よし、偶然を装って触るぞ」という心の声が聞こえており、女は戸惑っている。
これまで、襲うタイミングを計る真面目男子(襲う時点で真面目かは不明だが)を複数見てきた、襲われの女王でもあるバイ女史だ。そういう前向きなたくらみには、鼻が利くようになってしまった。
おバカさんなので、興味が邪魔をして抵抗できないのが難点。
ただ、「ない」と思ってる相手からは早い段階で逃げるので、逃げられない場面まで一緒にいた時点で「ない、とはハッキリ言えない」のだ。
溢れマッチョ氏の行動の謎。
性以外の理由があるなら、なんだろうか。
脂肪のつき具合チェック?
してどうする、ジム友達を増やしたいのか。
しかし性?
守備範囲が広いというか、彼の好む性的対象は、『街で見つけた可愛い子』派手で分かりやすく可愛い子。
ある飲み会。
つめようか、と言って、つめすぎてまた太もものふれる、溢れマッチョ氏とバイ女史。
「どんなひとがすきなの?」
「女性が好きなんですよ、女がいるから世界が鮮やかなのですわ」
酔うと、幼くたどたどしく、それでいて昔の令嬢のような古めかしさもある。
考えてるとは思えないふわふわで、非公開のバイセクシャルを明かしている自分に気がつく。
「うん、服とか小物が、女性向けに虹みたいな何色もあるのきれいだよね!」
むしろ、溢れマッチョ氏のほうがふわふわである。
バイ女史を清廉潔白なイメージでみていて、少しでも下品な言葉が出るととても驚いた顔をするぐらいなので、同性愛という発想がない。
「男の好みは?想像つかない」
と踏み込む。嫉妬したことのある別の後輩が、溢れマッチョ氏の脳裏をよぎる。もう言うまでもないが、バイ女史の目線でいけば謎でしかない接触だが、好みと関係なく彼も『あやしい』を感じてしまった一人なのだ。
「男性?ちゃんと好きなですよ、たぶん男性がいるから世界は楽しいの」
「女の世界は怖いって話?」
「んー、悪いほうはよくわからなくて、でも、いてくれるから楽しくすごせてるなって思うマス。かいしゃで、うん」
女はヘラリと笑った。
「なんかドキドキするかも、ありがとう。俺もおかげで楽しいよ」
と、溢れマッチョ氏はTシャツの裾の真ん中をきゅっと下にひいた。
少女マンガなら胸がトクントクンいうべきところを、股間が切なく軋んでいる。
ぷるぷるとふるえながら立ち尽くしている。
女の言っているのは、言われた通り「女社会」は歪みやすく、バランスよく両性いるほうがいいということなのだが。
そこは、アルコールに弱い二人がふわふわしているので、かみあわずにドキドキしても仕方ない。
「ねぇ、好みのタイプは?」
「ちょっとセンパーイ、なにさっきから聞き出そうとしてるんですか、必死すぎ、狙いすぎ」
そりゃ、バイセクシャル女は鈍感主人公だが、まわりはツッコミをいれるのを我慢できなかった。おのおの話し込んでいるので聞いてないつもりだったが、聞かれていた。
「ウルセー、全員聞くからな」
溢れマッチョ氏は冗談でごまかす。
脳裏には、とある後輩ではないと祈る。
でも、変なやつに捕まってほしくないので、その後輩のようなひとがタイプとも言われたい。
でも本音を言えば、自分をあげてもらい、照れながらありがとうと微笑みたい。
イメージトレーニングは何回もした。
いままでにないタイプの、バイ女史への気持ちに気がついてから、いままで今どきのオリーブ達をだっこして満足していた自分の筋肉を、見た目通り逞しく、バイ女史をかかえられそうなぐらいに鍛えてきた。
あぁ、どうなる。
「皆さん素敵で、いままでの人生にないくらい多種多様な良い男をみるでしょ、わからなくなってきました。みんな好きですもん」
女は女で、このやりとりにときめいてないわけもなく。
ただ自分に自信がないので「聞いてどうするんだろう、売れ残り女むけの、お見合い情報でもあるのかな? 」といったネガティブな現実味も半分。
さて、どうなるのさ。と。
【あやしい女シリーズ】
非公開のゲイ男。
お互いそれを明かしていて、職場では『バカきょうだい』と言われるぐらいには仲が良い。
とある企業、オフィスのシリィズ。
このバイセクシャル女。
前にも話したが、女としてみれば「論外」と言われた経験もあるぐらいには、ちんちくりんである。やぼったい。ネタになるほど不細工ではなく、普通と呼ぶには『残念』である。エロ親父どもは、執拗にからむが。
ところが、公言していなくても、バイセクシャルだからこそもつ、ただの女ではない何かのオーラがあるのだろう。
平素、読者モデルのような整った若い女子を好む普通の男性が、ほかで感じたことのないぞわっと興奮を沸き上がらせる『なにか』を放っているのだ。
ふとした瞬間。
魔が差すように。
それがこの、バイセクシャル女の『あやしい』ところだ。
そんな、あやしい彼女の先輩に、健康が溢れているような男子がいる。
まさに男子。
「可愛い子だいすき!」と笑いだしても違和感のない、ごくストレートの健全性をはなっている。むっちりとした筋肉のかたまりの体で、精力的かつ嫌みがない。
ある日の大掃除。ミーティング。あるいは、やはり別の飲み会。
溢れマッチョ氏は、ふとしたときに彼女に接触することがしばしばある。座る距離が近くて、太もも同士の一部が密着するのだ。
「こんなちんちくりんがぶつかってしまって、イケメンさんに対してのセクハラになりませんかね」
と、彼女は思うけども言えない。
それとは別に、この、溢れマッチョ氏。
声のかけ方がうまく、それこそ好かれていると勘違いしかねないところがある。
計算ではなく健康的な魅力の結果であるし、ちんちくりんだろうが「直接関わった後輩のことは、なんだかんだ特別カワイイ」とのことだ。
溢れマッチョ氏。
バイセクシャル女は、もちろん自分は彼の範囲に入るとは微塵も思っていないが、その勘違いしそうな勢いの、後輩への愛情表現を、むしろカワイイと思っている。
ただ、密着に関しては「よし、偶然を装って触るぞ」という心の声が聞こえており、女は戸惑っている。
これまで、襲うタイミングを計る真面目男子(襲う時点で真面目かは不明だが)を複数見てきた、襲われの女王でもあるバイ女史だ。そういう前向きなたくらみには、鼻が利くようになってしまった。
おバカさんなので、興味が邪魔をして抵抗できないのが難点。
ただ、「ない」と思ってる相手からは早い段階で逃げるので、逃げられない場面まで一緒にいた時点で「ない、とはハッキリ言えない」のだ。
溢れマッチョ氏の行動の謎。
性以外の理由があるなら、なんだろうか。
脂肪のつき具合チェック?
してどうする、ジム友達を増やしたいのか。
しかし性?
守備範囲が広いというか、彼の好む性的対象は、『街で見つけた可愛い子』派手で分かりやすく可愛い子。
ある飲み会。
つめようか、と言って、つめすぎてまた太もものふれる、溢れマッチョ氏とバイ女史。
「どんなひとがすきなの?」
「女性が好きなんですよ、女がいるから世界が鮮やかなのですわ」
酔うと、幼くたどたどしく、それでいて昔の令嬢のような古めかしさもある。
考えてるとは思えないふわふわで、非公開のバイセクシャルを明かしている自分に気がつく。
「うん、服とか小物が、女性向けに虹みたいな何色もあるのきれいだよね!」
むしろ、溢れマッチョ氏のほうがふわふわである。
バイ女史を清廉潔白なイメージでみていて、少しでも下品な言葉が出るととても驚いた顔をするぐらいなので、同性愛という発想がない。
「男の好みは?想像つかない」
と踏み込む。嫉妬したことのある別の後輩が、溢れマッチョ氏の脳裏をよぎる。もう言うまでもないが、バイ女史の目線でいけば謎でしかない接触だが、好みと関係なく彼も『あやしい』を感じてしまった一人なのだ。
「男性?ちゃんと好きなですよ、たぶん男性がいるから世界は楽しいの」
「女の世界は怖いって話?」
「んー、悪いほうはよくわからなくて、でも、いてくれるから楽しくすごせてるなって思うマス。かいしゃで、うん」
女はヘラリと笑った。
「なんかドキドキするかも、ありがとう。俺もおかげで楽しいよ」
と、溢れマッチョ氏はTシャツの裾の真ん中をきゅっと下にひいた。
少女マンガなら胸がトクントクンいうべきところを、股間が切なく軋んでいる。
ぷるぷるとふるえながら立ち尽くしている。
女の言っているのは、言われた通り「女社会」は歪みやすく、バランスよく両性いるほうがいいということなのだが。
そこは、アルコールに弱い二人がふわふわしているので、かみあわずにドキドキしても仕方ない。
「ねぇ、好みのタイプは?」
「ちょっとセンパーイ、なにさっきから聞き出そうとしてるんですか、必死すぎ、狙いすぎ」
そりゃ、バイセクシャル女は鈍感主人公だが、まわりはツッコミをいれるのを我慢できなかった。おのおの話し込んでいるので聞いてないつもりだったが、聞かれていた。
「ウルセー、全員聞くからな」
溢れマッチョ氏は冗談でごまかす。
脳裏には、とある後輩ではないと祈る。
でも、変なやつに捕まってほしくないので、その後輩のようなひとがタイプとも言われたい。
でも本音を言えば、自分をあげてもらい、照れながらありがとうと微笑みたい。
イメージトレーニングは何回もした。
いままでにないタイプの、バイ女史への気持ちに気がついてから、いままで今どきのオリーブ達をだっこして満足していた自分の筋肉を、見た目通り逞しく、バイ女史をかかえられそうなぐらいに鍛えてきた。
あぁ、どうなる。
「皆さん素敵で、いままでの人生にないくらい多種多様な良い男をみるでしょ、わからなくなってきました。みんな好きですもん」
女は女で、このやりとりにときめいてないわけもなく。
ただ自分に自信がないので「聞いてどうするんだろう、売れ残り女むけの、お見合い情報でもあるのかな? 」といったネガティブな現実味も半分。
さて、どうなるのさ。と。
【あやしい女シリーズ】
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