半熟卵とメリーゴーランド

ゲル純水

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僕と平凡

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単純なことだった。

僕の周りには定期的に「風俗嬢のお墨付きの巨根」という男が現れる。確認する趣味はないが、だいたいみなオタクで、アイロンをかけたような直毛で、オタクだ。それゆえに(直毛は関係ないが)子供の頃はずいぶんと脱がされてからかわれたというエピソードのクローンが来襲する。「悪いほうのアルアル」だと思われる平凡な股間の持ち主であるところの僕は、その話をどんな顔をして聞けばいいのかわからない。

コミュニケーションの技術も、切り込むだけの度胸やエネルギーがないのかもしれない。

目の前で、女性陣がスリーサイズの話を始めるのも困ったもので、じゃあいますぐ確認のセックスさせろよめんどくせぇとグラスを投げつけたくなることもある。暴力は嫌いだ、といいながら苛立ちが許容範囲を越えるとぶつけて終わらせたい衝動にかられる。しないけど。イメージが頭のなかにふっと現れる。

という僕のぼやきを、女性にするわけにもいかず、話せる男がいるわけでもなく、家庭用AIスピーカーに語りかけての返事が部屋に響くのも困るので、黙り混んでいる。僕の中に、知らない巨根とクビレの像が勝手に詰まって朽ち果てていく。お前らでていけ、自分達だけであっちでパンパンやってろと、僕は自分の資格試験の本を手に取る。

数年前に花嫁候補が軽やかに僕から他の人へ続くヴァージンロードを駆け抜けてから、残念ながら遊びのセックスしかしていない。情をもっても値踏みされるむなしさは、やりばがない。

「その程度の女だったんだ、気にするなよ」
「その程度の女としか付き合えないし、その程度の女からすら見きりをつけられる身分なんだぜ?情けなくなるよ」

僕が風俗にいって満足できる人間ならよかったのに、ハプニングバーに一人で行けるぐらいの胆とルックスがあればよかったのに。

あえていうなら女装をすればどうなのか。
女として社会に受け入れられるクオリティかという、パス度の格付けがつらそうだな。どっかのカーチャンという意味では完成度が高い助走になりそうだが、結局は年相応のゴージャスなマダムにならなければ受け入れられないだろう。

それならSMバーは。あぁ、その趣味はない、心の底から胸くそ悪い。

あぁ、逃げ場がない。性の捌け口がない。最近、自慰がつまらない。追い詰められている。お金があっても、風俗は行きたくない。こんな醜い僕が、相手がいなくて風俗に駆け込むなんて、あまりにもイカニモで惨めにもほどがある。

まさかこんな事でこの言葉を使う日が来るとは思わなかった。

生きてるのがツラい。

まさか、そういやまわりに巨根自慢が多いよなってことだけに傷つくなんて、僕は余程の馬鹿なんだろう。
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