半熟卵とメリーゴーランド

ゲル純水

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純然たる愛情

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ぼくは、私は。

今日も日がな君のことばかり考えていた。
仕事中のこと。
君とのことは大切なので、ぼくは具体的になにがあったかは書かない。ささいなこと。いつか忘れてしまったら、思い出せなくなってしまうね。書いていれば、懐かしめるのにもったいない。

思いっぱなしで、思い出にならない。
思い出にならないと、忘れることもできない。
忘れることもできなければ、どこか忘れているところに気づかない。
脳が捨て去った、出来事の余白は消えていく。

君のことを思っていれば、そうしてぼくは解放される。
そこの喫茶店がサンドイッチのためにかさねた食パンの、耳を切り落とした音がする。
それは背景の音として景色に溶け込み、拾い上げられることはない。

ぼくの君への気持ちは、世間でいうところの変態なのだそうだ。
あまりに愛情を持ちすぎて手が出せず、かといって誰のものでもない君でいてくれと勝手に信仰している。愛情のはずなのだ、これは親心などではなく…性欲のみ、または繁殖のためのツガイになりたい欲望を、ぼくは染色体から君に恋い焦がれているはずなのだ、が、そういう気持ちのそぶりを見せる気もない。『あしながおじさん』がしばらくは名乗りでなかったように、伏せていたいものがある。彼はたしか、名乗り出た上で嫁にしたのだったか、まるで『源氏物語』の光源氏のようだ。

とかいって。
これは会ってないからだ。
顔を会わせれば、足の指の一本一本をなめぬぐいたいぐらいに、椅子の背もたれになってしまいたいぐらいに、ぼくの心は満ちに満ちて毛穴から精液が垂れ落ちてないか不安ににるぐらいに脳内が清き我が君への欲望に焦がれていく。
わかっている。

と。

先日、ついにバタリとあった。
崩れ落ちそうになった。
泣きそうになった。
それまでの日々の憂鬱と体の痛みが消えた。
こんなにも美しい、君はぼくにとって本当に美しい光なのだ。
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