妹注意報~妹はフラグブレイカー~

高崎司

文字の大きさ
上 下
8 / 8

最終話

しおりを挟む
 静乃先輩との一件以来、静乃先輩の機嫌はうなぎ上りだ。

「ねえお兄ちゃん。先輩と、何かあったの?」

 放課後の生徒会室で、妹に聞かれた何気ない一言。
 これが、波乱の幕開けの合図だった。

「な、何もないよ?」
「怪しいな~。白状しないと、キスするよ?」
「ごほっ、ごほっ! キ、キスって、何考えてるんだよ!」
「ちょっと過剰に反応しすぎじゃないかな。もしかしてお兄ちゃん……」
「な、何だよ?」
「先輩と、キスしたとかないよね?」
「そんな事、あるわけないだろ」
「本当に? 嘘だったら、お兄ちゃんのお兄ちゃんを切るからね?」

 ハサミで何かを切るジェスチャーをする莉夏。
 物騒な事、この上ない。

「嘘じゃないって! 先輩に聞いてみなよ」

 すると莉夏は、その矛先を静乃先輩へと変更する。

「静乃先輩。最近機嫌いいですけど、何かあったんですか?」
「ふふっ。それはね……ひ・み・つ」

 物凄く上機嫌に、笑顔を見せる静乃先輩。
 俺は内心ひやひやしていた。
 なぜなら、正直に話す可能性があったからだ。
 だが、それも杞憂に終わったみたいだ。
 と、安心したのも束の間。
 その時は、突然に訪れる。

「でも莉夏ちゃんには教えてあげようかな。実はね……拓海君と激しい夜を過ごしたの」
「嘘吐けーー! キスしただけでしょうが! あっ……」

 墓穴を掘るとは正にこの事。
 俺は聞かれてもいないのに、勝手に自滅していた。

「ふ~ん。お兄ちゃん、キス……したんだ?」
「い、いや、ちがっ」
「何が違うの? 自分で言ったんだよ?」
「ちょっと待て莉夏。一旦落ち着こう。なっ?」
「私は至って冷静だよ。冷静にお兄ちゃんを、殺そうとしてるんだから」
「それは冷静とは言わないよ!」
「大丈夫。一瞬で終わらせる様にするから」

 ゆっくりと近づいて来る莉夏が、これほど怖いと思ったのは初めてだ。
 俺は今日死ぬかもしれない。
 しかし、ここで救いの神が舞い降りた。

「拓海~! 遊びに来たよ~!」

 ドアを勢いよく開け、美夏が登場する。

「美夏! 助けてくれ!」
「えっ?」
「莉夏がやばいんだ! 俺を助けてくれるのは、お前しかいない!」
「え~。照れるよ~。しょうがないな~」

 美夏は俺を後ろに隠すと、莉夏と対峙する。

「莉夏ちゃん。何があったか知らないけど、拓海をいじめたらダメだよ?」
「部外者は引っ込んでてください!」
「その言い方はひどいんじゃないかな?」
「あなたは何も知らないから、お兄ちゃんの味方をしてるんです! お兄ちゃんは、静乃先輩とキスしたんですよ!」
「えっ?」

 それまで元気だった美夏の顔に影が差す。

「どういう事? 何で拓海と静乃先輩が……?」
「それは本人に聞いてみてください」

 二人の視線が、俺と静乃先輩を交互に往復する。

「そうね。私から話すわ。あれは私が勝手にした事なのよ」
「どういう事ですか? お兄ちゃんが自分からしたんじゃないんですか?」
「違うわ。私が不意を突いて、キスしたのよ」
「そうだったんだ~。それならよかった~」
「何安心してるんですか。お兄ちゃんがキスしたって事実は、消えないんですよ」
「そっか! でも、だったら私達もすれば、おあいこじゃない?」
「ちょ、お前何言ってるんだよ!」
「その手がありました!!!」

 莉夏は名案とばかりに、表情を明るくする。

「それはそれでしょうがないわね。私もしちゃったんだし、私に拒否する権利はないわ」
「俺にはありますよ、先輩!」
「お兄ちゃんに拒否権はないよ!」
「私も拓海とキスする~」

 その後話合いが行われ、美夏・莉夏の順番で行われる事が決定した。

「準備はいい?」
「ああ。もういつでもしてくれ」

 俺は自暴自棄になりながら、立ち尽くしていた。
 嬉しそうに美夏の唇が迫ってくる。
 俺は無感動な瞳で、その唇を見ていた。

「拓海。んっ、ちゅ、ちゅぅ……ん、……ぁっ」

 美夏は満足気に唇を離すと、その場を退いた。

「次は私だよお兄ちゃん」
「なあ莉夏。兄妹でキスは、おかしくないか?」
「私は平気だよ。お兄ちゃんは嫌なの?」

 悲しそうな瞳で見つめてくる莉夏。

「うっ。べ、別に莉夏がいいなら、いいんじゃないか」

 結局押し切られる形で、了承してしまった。

「じゃあいくよ。お兄ちゃん」

 莉夏のぷるっとした唇が、俺の唇に接触する。

「はむっ、んっ、ちゅ、ぁっ、んん」

 莉夏の小さな舌が、口内を蹂躙する。
 俺は結局全員とキスするはめになってしまった。

「ぷはぁ! お兄ちゃん、ごちそうさまでした」
「うぅ。もうお嫁にいけない」
「何言ってるのお兄ちゃん! 私がいるじゃん!」
「私だっているよ、拓海!」
「私が養ってあげるわよ。対価はあなたの身体でいいわよ。ふふっ」

 これからも毎日こんな日々が続いて行くのだろう。
 煩くもあり、でも無くてはならない。


 俺は嫌々ながら、こんな日々をこれからも楽しんで行くのだった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。 果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...