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第4話
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「……君……志熊君……。もう……ふー」
「うわひゃぁ!」
俺は奇声を発すると、座った椅子から転げ落ちた。
何が起こったのか確認すると、静乃先輩が攻める様な視線で、俺を睨んでいた。
「人が話しかけてるのに、いい度胸ね」
「す、すいません。ちょっと過去を振り返ってまして」
「はぁ~。しょうがないわね。ちょっと溜まってるのかしら」
そう言った静乃先輩は、妖艶な瞳で俺を魅了しようとしてくる。
俺はそのまま後ずさりすると、コツっと壁にぶつかる。
「ふふ。どうやら逃げ場はないみたいね」
「そのようですね。さて、先輩。先輩は何をしようとしてるんですか?」
「それは……わかるでしょ?」
とびきりの笑顔と共に近づいて来る顔。
俺と先輩の唇が触れ合う寸前。
「ちょっと待ったー!」
勢いよく侵入してきた、莉夏が割って入る。
「ちょっと、ちょっと! 先輩何してるんですか!?」
「何って……キスだけど?」
「当たり前の様に言わないでください! お兄ちゃんは、そんなの望んでません!」
「あら。どうしてあなたに、そんな事がわかるのかしら?」
「わかるんです! 私はお兄ちゃんの妹なんですから!」
「へぇ~。妹“ごとき”が私の邪魔をするつもり?」
莉夏の額に青筋がピクっと浮かび上がった。
俺は内心でマズイ事になったと思う。
「先輩“ごとき”が、お兄ちゃんに近づかないでくれます?」
どうやら、莉夏も引く気はないらしい。
2人の間に、見えない火花が散っている様な気がした。
「ちょっと、2人共。落ち着こうよ」
「志熊君は黙ってて」
「お兄ちゃんは黙って」
俺の言葉も、あえなく空中分解する。
「はぁ~。こうなったら、ほっとくしかないか」
俺は仲裁を諦め、一人呑気にお茶を飲む。
しばらくして喧嘩も収まると、2人は荒い呼吸を繰り返しながら、物言いたげな顔でこちらを見てきた。
「ちょっと志熊君。妹と私。どっちを選ぶの?」
「お兄ちゃん! お兄ちゃんは、私を選ぶよね!?」
2人から向けられる鋭い視線に、俺はついと視線を逸らす。
「い、いや。どっちを選ぶのって言われてもね~」
「はっきりした方がいいわよ。妹より静乃の方が好きだって、言ってやりなさい」
「ちょっと待ってくださいよ先輩! 何でいきなり呼び捨てなんですか!?」
「え? だってそれは……ぽっ」
「ぽっ……じゃないし! 余計な事するの止めてくれます!?」
「え~。志熊君のいけず~」
はぁ~と長い溜息を吐いた俺の前に、妹がだんと足音高く立ちはだかる。
「お兄ちゃん? お兄ちゃんは、静乃先輩と、そういう関係だったの?」
今にも泣きそうな目で見つめてくる妹の手は、怒りで戦慄いていた。
「ち、違うぞ! 俺と先輩は、何でもないんだ!」
「本当に? 信じてもいいんだよね?」
「もちろん! 俺がお前に、一度でも嘘吐いた事があったか? ないだろ?」
「うん……。じゃあ、信じるよ。ぐすっ」
最後に鼻を啜ると、莉夏はとりあえず怒りを収めてくれた。
生徒会長と妹。
2人に挟まれた俺の日常は、今日も平常運転だった。
「うわひゃぁ!」
俺は奇声を発すると、座った椅子から転げ落ちた。
何が起こったのか確認すると、静乃先輩が攻める様な視線で、俺を睨んでいた。
「人が話しかけてるのに、いい度胸ね」
「す、すいません。ちょっと過去を振り返ってまして」
「はぁ~。しょうがないわね。ちょっと溜まってるのかしら」
そう言った静乃先輩は、妖艶な瞳で俺を魅了しようとしてくる。
俺はそのまま後ずさりすると、コツっと壁にぶつかる。
「ふふ。どうやら逃げ場はないみたいね」
「そのようですね。さて、先輩。先輩は何をしようとしてるんですか?」
「それは……わかるでしょ?」
とびきりの笑顔と共に近づいて来る顔。
俺と先輩の唇が触れ合う寸前。
「ちょっと待ったー!」
勢いよく侵入してきた、莉夏が割って入る。
「ちょっと、ちょっと! 先輩何してるんですか!?」
「何って……キスだけど?」
「当たり前の様に言わないでください! お兄ちゃんは、そんなの望んでません!」
「あら。どうしてあなたに、そんな事がわかるのかしら?」
「わかるんです! 私はお兄ちゃんの妹なんですから!」
「へぇ~。妹“ごとき”が私の邪魔をするつもり?」
莉夏の額に青筋がピクっと浮かび上がった。
俺は内心でマズイ事になったと思う。
「先輩“ごとき”が、お兄ちゃんに近づかないでくれます?」
どうやら、莉夏も引く気はないらしい。
2人の間に、見えない火花が散っている様な気がした。
「ちょっと、2人共。落ち着こうよ」
「志熊君は黙ってて」
「お兄ちゃんは黙って」
俺の言葉も、あえなく空中分解する。
「はぁ~。こうなったら、ほっとくしかないか」
俺は仲裁を諦め、一人呑気にお茶を飲む。
しばらくして喧嘩も収まると、2人は荒い呼吸を繰り返しながら、物言いたげな顔でこちらを見てきた。
「ちょっと志熊君。妹と私。どっちを選ぶの?」
「お兄ちゃん! お兄ちゃんは、私を選ぶよね!?」
2人から向けられる鋭い視線に、俺はついと視線を逸らす。
「い、いや。どっちを選ぶのって言われてもね~」
「はっきりした方がいいわよ。妹より静乃の方が好きだって、言ってやりなさい」
「ちょっと待ってくださいよ先輩! 何でいきなり呼び捨てなんですか!?」
「え? だってそれは……ぽっ」
「ぽっ……じゃないし! 余計な事するの止めてくれます!?」
「え~。志熊君のいけず~」
はぁ~と長い溜息を吐いた俺の前に、妹がだんと足音高く立ちはだかる。
「お兄ちゃん? お兄ちゃんは、静乃先輩と、そういう関係だったの?」
今にも泣きそうな目で見つめてくる妹の手は、怒りで戦慄いていた。
「ち、違うぞ! 俺と先輩は、何でもないんだ!」
「本当に? 信じてもいいんだよね?」
「もちろん! 俺がお前に、一度でも嘘吐いた事があったか? ないだろ?」
「うん……。じゃあ、信じるよ。ぐすっ」
最後に鼻を啜ると、莉夏はとりあえず怒りを収めてくれた。
生徒会長と妹。
2人に挟まれた俺の日常は、今日も平常運転だった。
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